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トップレベルのサッカー審判員が摂取するサプリメントの実態 スペインのプロリーグで調査

スペインのプロサッカー審判員のサプリメント摂取状況が明らかになった。1部・2部リーグの主審または副審を務める審判員の84%が回答するという悉皆性の高い調査結果であり、一部のサプリの摂取率が1部と2部、および主審と副審とで異なることなどが示されている。

エリートレベルのサッカー審判員のサプリメント摂取の実態 スペインのプロリーグで調査

サッカーの審判はアスリートに近い栄養管理が必要

サッカーの審判は通常、主審1名、副審2名、第4審判1名で構成され、このうち主審は1試合で10~12km走り、そのうち約20%は高速走行(18~25km/時)となる。副審の走行距離もその約半分(6km)にのぼる。主審や副審には高い負荷がかかることから、日々のトレーニングと適切な栄養管理が求められ、サプリメントの摂取が必要なこともある。

アスリートのサプリ摂取については多くの調査研究が行われているのに対して、アスリートに近い運動負荷や栄養管理が必要なサッカー審判員のサプリ摂取の実態は、ほとんど知られていない。今回紹介する論文の研究はこのような背景から行われた。

スペインのプロサッカー審判員の84%が回答し、摂取率は84%

この研究の対象は、スペインのプロサッカー審判員106人。内訳は、1部リーグ審判員が46.2%、2部リーグが53.8%、主審が35.8%、副審が64.2%。なお、合計106人という人数は、同国のプロ1・2部の審判員総数の84.13%を占めており、論文の著者らはその高さを強調している。調査内容は、ふだんのトレーニングやサプリの摂取状況と摂取の理由や購入方法、情報源などで、研究者がすべての審判員に個別に対面し調査された。

回答者の主な特徴は、年齢は35.35±5.84歳で、1部の審判は2部より高齢であり(p=0.028)、主審は副審よりも高齢だった(p=0.001)。BMIは22.7±1.52であり、カテゴリー(リーグや主審・副審の違い)による有意差はなかった。トレーニング時間は6.02±1.28時間/週で、カテゴリーによる有意差はなかった。

エビデンスのあるメディカルサプリの摂取率は、副審より主審、2部より1部で高い

サプリを摂取しているのは全体の84.0%であり、摂取理由については49.6%がスポーツパフォーマンスの向上を挙げ、38.2%が健康状態の改善、9.2%が美容上の理由を挙げた。これらの回答について、カテゴリー間の有意差はなかった。

摂取するサプリの種類に関しては、平均3.37±3.29種類であり、カテゴリー間の有意差はなかった。最も多く摂取されていたサプリはホエイプロテイン(45.3%)で、次いでクレアチン(33.0%)、スポーツバー・ドリンク(28.3%)、カフェイン(19.8%)であった。

オーストラリアスポーツ研究所によるサプリメントの分類(ABCDシステム)に基づいて、摂取されているサプリを分類したうえで、1部・2部、主審・副審で摂取率を比較すると、グループA(スポーツサプリとして有効性を示すエビデンスのあるもの)のうち、メディカルサプリ(マルチビタミンなど)の摂取率に差が認められ、2部よりも1部の審判、副審よりも主審で摂取率が高かった。

より具体的には、1部の主審は副審よりメディカルサプリ摂取率が高かった(OR3.02〈95%CI;1.20~7.60〉、p=0.016)。また1部の主審は2部の主審よりもメディカルサプリ摂取率が高かった(OR2.59〈95%CI;1.02~6.55〉、p=0.041)。摂取量(種類の数)についても、1部・2部をあわせた解析で、主審は副審よりもメディカルサプリの平均摂取量が多かった(p=0.023)。

メディカルサプリ以外のグループA(エルゴジェニックエイド〈クレアチンやカフェイン、β-アラニンなど〉、スポーツ食品)、およびグループB(一定の条件下では有効の可能性のあるもの)、グループC(エビデンスが不十分なもの)の摂取率には有意差はなかった。ただし、個々のサプリで比較した場合は、グルタミンの摂取率が、主審において副審より高いという有意差が認められた。

審判のサプリ利用のアドバイザーは、栄養士が最多で3割以上

サプリ利用に関するアドバイザーとして最も多く挙げられたのは栄養士(31.7%)であり、次いでフィジカルトレーナー(25.4%)、他の審判(15.9%)の順であった。この傾向にカテゴリー間の有意差はなかった。

サプリを購入する場所は、41.0%がオンライン、19.7%が薬局、17.2%が専門店だった。サプリを摂取する日、41.1%がトレーニング日と試合日の両方、30.0%はトレーニング日のみ、16.7%は毎日(休息日を含む)、12.2%は試合日のみだった。これらの結果にカテゴリー間の有意差はなかった。

一方、摂取のタイミングに関しては、42.2%が運動後、32.2%が運動前・中・後、13.3%が運動前であり、主審は副審よりも、運動前・中・後に摂取するとの回答が有意に多かった(OR1.63〈1.20~2.20〉、p=0.014)。

著者らは本調査を「プロのサッカー審判員のサプリ摂取量に関する初の調査である」としている。限界点として、女性審判員のデータが含まれなかったこと、世界でトップレベルにあるスペインサッカーの審判員を対象にしているため、他の地域やレベルの実態とは異なる可能性のあることなどを挙げ、また、審判員の運動パフォーマンスとサプリ摂取の関連などの検討も必要と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Analysis of Sports Supplement Consumption of Elite Referees of the Spanish Professional Fotball League」。〔Nutrients. 2024 Jul 31;16(15):2486〕
原文はこちら(MDPI)

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