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男性のメタボ抑制には肥満解消に加えて心肺機能向上が必要 保健指導積極的支援者の横断研究

メタボリックシンドローム(MetS)のリスクに対する心肺機能とBMIの関係を、特定保健指導の積極的支援対象者のデータを用いて解析した結果が報告された。男性では、心肺機能が高くBMIが低い場合にのみ、MetSに該当するオッズ比の有意な低下が認められ、女性ではいずれも有意な関連がみられないという。早稲田大学スポーツ科学学術院スポーツ疫学研究室の澤田亨氏らの研究によるもので、「BMC Public Health」に論文が掲載された。

男性のメタボ抑制には肥満解消に加えて心肺機能向上が必要 保健指導積極的支援者の横断研究

心肺機能(CRF)の高さはMetSリスクを抑制する?

心肺機能(cardiorespiratory fitness;CRF)などで評価される体力が高いことが、健康の維持・増進に有利に働くことは広く知られている。たとえ肥満であっても体力が高ければ健康リスクは低いとする研究報告もある。ただしそれを否定する報告もあり、結論は得られていない。また、肥満に伴う疾患リスクは顕著な人種差が存在するが、CRFやBMIとメタボリックシンドローム(metabolic syndrome;MetS)との関連に関する日本人での知見は限られている。これらを背景として澤田氏らは、日本人におけるCRFとBMIのMetSとの関係について、全国各地の健康増進施設を対象とした大規模ランダム化比較試験(健康増進施設研究)のデータを横断的に解析して検討した。

CRFをVO2peakで評価したうえでMetSとの関連を検討

この研究の参加者は、国内18地点の健康増進施設で登録され、特定保健指導の積極的支援の対象となった40~64歳の成人421人。CRFは自転車エルゴメーターによりVO2peakを推定した。

男性は268人(63.7%)で50.5±6.7歳であり、BMIは27.1±3.1、VO2peakは28.1±8.0mL/kg/分で、MetS有病率は57.5%だった(腹囲長は国内基準)。女性は153人(36.3%)で50.0±5.8歳であり、BMIは28.7±3.4、VO2peakは25.6±5.7mL/kg/分で、MetS有病率は45.8%だった。

CRF(VO2peak)とBMIそれぞれの三分位で3群に分け、交絡因子(年齢、現在の喫煙習慣、飲酒頻度、睡眠時間、身体活動〈600MET-分/週以上か否か〉、座位行動〈7時間/日以上か否か〉、教育歴、およびCRFの解析ではBMI、BMIの解析ではCRF)の影響を調整後、MetSのオッズ比は以下のように、男性のみ有意な関連が認められた。

男性では、CRF(VO2peak)とBMIの双方が有意に関連

男性のCRFの第1三分位群(VO2peakが最も低い3分の1)を基準とすると、第3三分位群(VO2peakが最も高い3分の1)は、MetSに該当するオッズ比が有意に低かった(OR0.33〈95%CI;0.17~0.65〉)。第2三分位群はわずかに有意水準未満だった(OR0.52〈0.26~1.00〉)。

男性のBMIの第3三分位群(BMIが最も高い3分の1)を基準とすると、第1三分位群(BMIが最も低い3分の1)は、MetSに該当するオッズ比が有意に低かった(OR0.42〈0.21~0.82〉)。第2三分位群は非有意だった(OR0.63〈0.32~1.21〉)。

女性では同様の解析で、CRFの第3三分位群がOR0.90(0.34~2.35)、BMIの第1三分位群はOR0.45(0.18~1.14)であり、CRF、BMIともにMetSとの有意な関連がみられなかった。

男性では、低BMI高CRFの群でのみ、MetSリスクが低い可能性

次に、BMIが第3三分位群でVO2peakは第1三分位群の場合を「高BMI低CRF」、BMIが第3三分位群でVO2peakは第2~3三分位群の場合を「高BMI高CRF」、BMIが第1~2三分位群でVO2peakは第1三分位群の場合を「低BMI低CRF」、BMIが第1~2三分位群でVO2peakは第3三分位群の場合を「低BMI高CRF」と、BMIとCRFの組み合わせにより全体を性別に4群に分けたうえで、前記の交絡因子を調整し解析を行った。

その結果、男性では高BMI低CRF群に比較して低BMI高CRF群でのみ、MetSに該当するオッズ比の有意な低下が認められた(OR0.25〈0.11~0.61〉)。高BMI高CRF群はOR0.64(0.24~1.68)であり、低BMI低CRF群のOR0.77(0.29~2.06)と同程度のオッズ比が示された。

一方、女性では低BMI高CRF群であってもオッズ比の有意な低下は認められなかった(OR0.49〈0.18~1.34〉)。

男性のMetS撲滅には減量だけでなく、心肺機能を高める介入が必要

著者らによると、国内の先行研究ではCRFを自己申告や簡易テストで判定しているものが大半で、自転車エルゴメーターで正確に評価した研究は1件のみであり、その研究も1地域の男性住民を対象としたものであって、全国各地の男性と女性を対象にCRFを正確に評価してMetSリスクとの関連を検討した研究は、本報告が初めてだとしている。

横断研究のため因果関係の検証には前向き研究が必要との限界点を挙げたうえで、結論は「CRFが低いこととBMIが高いことは、それぞれの影響を互いに調整した後でも、中年日本人男性のMetS有病率と有意に関連している。また、CRFの高さとBMIの低さは、男性のMetS有病率低下に対してそれぞれ単独では寄与の程度が限られる。よって男性のMetSの有病率を下げるには、BMI低下とともにCRF向上を意図した介入が必要ではないか」とまとめられている。

なお、女性ではCRF、BMIともにMetS有病率との関連が非有意であることの理由としては、女性は全般的に男性よりも健康状態がよいことが影響を及ぼしているのではないかと考察されている。

文献情報

原題のタイトルは、「Cardiorespiratory fitness and body mass index on metabolic syndrome in middle-aged Japanese adults under national health guidance: a cross-sectional study」。〔BMC Public Health. 2024 Jul 30;24(1):2050〕
原文はこちら(Springer Nature)

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