スタイルや容姿の自己評価が高いと摂食障害リスクも高い? ボディイメージと摂食障害の関連を調査
自分自身の体格に対する評価が将来の摂食障害のリスクを予測し得るかという関連性を、競技アスリート、非競技的スポーツを行っている人、およびスポーツを行っていない人という3群で比較した、縦断研究の結果が報告された。
自分のボディイメージはどのように決まる?
ボディイメージの評価は人それぞれで、中肉中背を高評価する人もいれば、痩せていれば痩せているほど高く評価する人もいる。その評価の基準は、しばしば周囲の環境によって左右される。例えば、メディアの論評、指導者や保護者の言動、同僚との会話などだ。
加えてスポーツアスリートの場合、競技パフォーマンスとの感染性もボディイメージを大きく左右する。軽量であることが有利と考えられやすい長距離走などでは、痩せていることがプラスに捉えられがちだ。パフォーマンスのほかにも、性別、ユニホームの露出度、コーチの指導方針などもボディイメージを規定する因子として想定される。
一方、アスリートのボディイメージの偏りが、将来の摂食障害のリスクにつながるのではないかとの懸念が示されている。とはいえ、ボディイメージと摂食障害リスクとの関連の研究の多くは横断的なデザインで行われてきており、経時的な関連性の検討はなされていない。また、その関連性が、参加しているスポーツの種類によってことなるのか、あるいはスポーツを行っていない人との違いはあるのかと言った点も明らかにされていない。
スポーツへの参加の有無、参加している場合はスポーツの種類を考慮して比較解析
以上を背景として、今回取り上げる論文の研究では、競技アスリート、非競技的スポーツの実践者、スポーツの非実践者という三つのカテゴリーの集団のボディイメージと、6カ月後の摂食障害リスクとの関連を比較するという、縦断研究を行っている。
研究参加者はソーシャルメディアやスポーツクラブを通じて募集された。先行研究に基づき、有意性の検証に必要なサンプル数は各群97人と計算され、脱落率を35%と仮定して、合計448人の参加を目指してリクルートし、510人が参加した。内訳は、競技スポーツ群117人、非競技スポーツ群276人、非スポーツ群117人。ただし、6カ月後の追跡調査にも参加したのは230人で、脱落率は54.9%と予測を超過した。追跡調査参加者の内訳は、競技スポーツ群48人、非競技スポーツ群130人、非スポーツ群52人。
510人の平均年齢は34.05±10.65歳(範囲18~71)、BMIは24.28±5.03であり、スポーツに参加している2群における最も人気のスポーツはランニング(n=344)であり、ハイキング(n=210)、ジム通い(n=192)が続いた。
ボディイメージと摂食障害リスクの評価手法
アスリートのためのボディイメージ質問票(Contextual Body Image Questionnaire for Athletes;CBIQA)
アスリートのスポーツ中およびスポーツ外(日常生活)におけるボディイメージの違いを評価する質問票。本研究では日常生活ではなく、スポーツ中の評価尺度のみに焦点を当て、筋肉質であること、痩せていること、外見(見栄え)などの評価に用いた。質問に対する回答を1~7点のリッカートスコアで評価し、合計スコアを質問項目数で除して算出する。スコアの高さは、自身のボディイメージをプラスに捉えていると判断する。
身体評価スケール-2(Body Appreciation Scale 2;BAS-2)
スポーツという状況ではなく、一般的なボディイメージを評価する指標。1~5点のリッカートスコアで評価し、スコアの高さは、自身のボディイメージをプラスに捉えていると判断する。
摂食障害診断質問票(Eating Disorder Examination-Questionnaire;EDEQ)
摂食障害の精神病理を評価する28項目の質問票。7段階のリッカートスコアで評価し、スコアが高いほど、摂食障害のリスクが高いと判定する。
とくに見栄えのボディイメージを重視するアスリートは摂食障害ハイリスクの可能性
ベースライン時の横断的解析
ベースライン時点において、ボディイメージの評価に用いた2種類の指標のスコアは、いずれも競技スポーツ群が最も高く、続いて非競技スポーツ群であり、非スポーツ群の評価が最も低かった。例えばBAS-2のスコアをみると、前記と同順に3.40±0.83点、3.17±0.74点、2.99±0.90点だった(競技スポーツ群と非競技スポーツ群〈p<0.05〉、および競技スポーツ群と非スポーツ群〈p<0.001〉との間に有意な群間差あり)。
その一方、摂食障害リスクを表すEDEQスコアは同順に1.79±1.37点、2.00±1.25点、1.97±1.24点であり、群間差は非有意だった。
6カ月間の縦断的解析
ベースラインから6カ月の変化の縦断的解析では、追跡調査時における摂食障害リスクを表すEDEQスコアと、他の評価指標のスコアとの関連を検討した。その結果、ベースライン時のEDEQスコアが高いことは追跡調査時のEDEQスコアの高さと有意な関連があり、摂食障害のリスクは持続しやすいと考えられた。
ただし、BAS-2で評価されたボディイメージのスコアが高い場合、EDEQスコアが継続的に高い状態が続くという状況を改善するように働く可能性が示された。
一方、CBIQAの尺度のうち、外見(見栄え)のスコアが高いことは、EDEQスコアが継続的に高い状態が続く状況に対して、促進的に働く可能性が示された。CBIQA尺度のうち、筋肉質であることや痩せていることに関するスコアは、EDEQスコアの変化に有意な影響を及ぼしていなかった。
以上より著者らは、「競技スポーツに参加していることは、ボディイメージにプラスに作用する可能性がある。ただし、外見(見栄え)に関連するボディイメージが高いことは、将来の摂食障害のリスクを高めるかもしれない」と結論づけている。また、「これらの関連性のメカニズムは依然として不明である」とし、今後のさらなる研究の必要性を指摘している。
文献情報
原題のタイトルは、「Body image concerns among individuals with different levels of sporting engagement and exercise: A longitudinal study」。〔Eat Behav. 2024 May 1:53:101881〕
原文はこちら(Elsevier)