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ポリフェノールが持久力を高める可能性 スポーツパフォーマンスへの影響を検討した系統的レビュー

ポリフェノール摂取により、有酸素性持久力が向上するのではないかとする、システマティックレビューの結果が報告された。ポリフェノールについては、運動誘発性筋損傷(EIMD)の抑制という視点での研究が豊富だが、それにとどまらず、パフォーマンス上のメリットも期待できる可能性を示唆する内容。

ポリフェノールが持久力を高める可能性 スポーツパフォーマンスへの影響を検討した系統的レビュー

ポリフェノール摂取のスポーツパフォーマンスへの影響は?

ポリフェノールはワイン、ベリー、チョコレート、緑茶などの植物や植物性食品に豊富に含まれている微量栄養素で、酸化ストレスの抑制や抗炎症、免疫能への影響など、多面的な機能を持つとされている。スポーツの分野でも、運動誘発性筋損傷(exercise-induced muscle damage;EIMD)の抑制、一酸化窒素(NO)利用能の亢進を介したパフォーマンスの向上などが報告されている。既にポリフェノールの有用性をシステマティックレビューにより総括した論文も報告されているが、今回取り上げる論文の著者によると、それらのレビューの多くはEIMDに焦点を当てており、パフォーマンスへの影響に着目したものが少なく、エビデンスの総括が行われていないという。

これを背景として著者らは、PubMed、Scopus、Web of Science (WOS)、EBSCO-SPORTDiscus、Embaseなどの文献データベースを用いて、スポーツパフォーマンスへのポリフェノール摂取の影響を検討した研究報告のシステマティックレビューを行った。

11件の研究報告を抽出して検討

検索対象は各データベースのスターチから2023年8月までに収載された論文とし、PRISMA(システマティックレビューおよびメタ解析の優先報告項目)に準拠して検索を実施。包括基準は、健康なアスリートを対象に、ポリフェノールまたはポリフェノール化合物(複数のポリフェノールの組み合わせ)摂取によるスポーツパフォーマンスへの効果を、並行群間試験、クロスオーバー試験などの対照条件のあるデザインで検討し、英語で執筆されていて全文にアクセス可能な論文。ポリフェノール摂取以外の介入も併せて行った研究の報告や、ポリフェノールの摂取量が明らかでない論文、検討対象が健康なアスリートでないものなどは除外した。

合計491報がヒットし重複削除後の387報をタイトルと要約に基づくスクリーニングによって87報に絞り込み、これを全文精査の対照とした。最終的に11件の研究報告が適格と判断された。

11件の研究の合計参加者数は220人で、年齢は18~48歳の範囲であり、56人がプロアスリート、164人はレクリエーションアスリートで、7件は男性のみを対象としていた。試験デザインは5件が並行デザイン、6件はクロスオーバー法で、9件は二重盲検、2件は単盲検だった。ポリフェノールの形態は、5件がカプセル、3件は液状、他はスナックなどとして摂取されていた。

有意な影響を報告している論文が多数存在

論文では、各研究で検討された指標をスポーツパフォーマンス、代謝関連指標、抗酸化関連指標という三つに分類したうえで、定性的な解析の結果が述べられている。取り上げられている研究の一部を紹介する。

スポーツパフォーマンスへの影響

持久力パフォーマンスへの影響を走行タイムで評価した3件の研究のすべてで、有意な結果が報告されていた。また、疲労困憊に至るまでの時間を検討した3件の研究も、すべて介入によってその時間が延長することが示されていた。走行距離を検討した3件の研究中2件は、プラセボとの比較で有意なプラス効果を報告していた。

2件の研究はピークパワー到達時間を検討しており、そのうち1件で有意な影響が観察された。ランニングエコノミーを検討した研究は2件で、有意な結果を報告していたのは1件だった。そのほかに、自覚的運動強度(rate of perceived exertion;RPE)や最大有酸素速度(maximum aerobic velocity;MAV)などの検討の報告があり、一部は非有意な結果を報告しているが、有意とするものが多かった。

代謝関連指標や抗酸化関連指標への影響

抽出された研究は、スポーツパフォーマンス以外にも、代謝関連指標や抗酸化関連指標への影響を検討した研究が多く含まれていた。

例えば心拍数への影響を評価した8件の研究のうち、2件は対プラセボで有意な減少を報告していた。VO2を検討した研究も8件あり、1件は対プラセボで有意な上昇を報告していた。

抗酸化能または抗酸化マーカーを評価したのは2件のみで、1件は非有意、1件は評価指標の中に有意なものと非有意なものが混在していた。

論文の結論は以下のように要約されている。

「11件の研究の結果は、ポリフェノールの摂取がスポーツパフォーマンスに有意なプラスの影響を及ぼし得ることを示している。ポリフェノール摂取によって、有酸素運動の持久力パフォーマンス向上と、脂質酸化が促進される可能性がある。ただし、心血管系の長期転帰への影響や性別による影響の差異などは十分に検討されていない。最適な摂取量や摂取タイミングの確立という点でも、より多くの研究を必要としている」。

文献情報

原題のタイトルは、「Polyphenol supplementation boosts aerobic endurance in athletes: systematic review」。〔Front Physiol. 2024 Apr 8:15:1369174〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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