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プロバイオティクスでランナーのパフォーマンスや消化器症状などが改善

プロバイオティクスの摂取により腸内細菌叢の組成が改善し、マラソンのパフォーマンス向上や消化器症状の抑制といった変化が生じるとする、二重盲検試験の結果が報告された。中国で行われた研究。

プロバイオティクスでランナーのパフォーマンスや消化器症状などが改善

プロバイオティクスの効果をアスリート集団で検証

腸内細菌叢に関しては近年、医学のさまざまな専門領域でトピックとして扱われ注目を集めている。またスポーツにおいてもパフォーマンス等と関連する可能性を示唆する研究が増えている。

一方、マラソンをはじめとする持久系競技では、長時間の運動負荷に伴う腸管透過性の亢進、腸型脂肪酸結合タンパク質(intestinal-fatty acid binding protein;I-FABP)の増加、腸内細菌叢の変化、心理的ストレスの増大、および消化器症状を来しやすい。それらはパフォーマンスの低下につながるだけでなく、腸内細菌叢の組成次第では全身の慢性炎症の亢進や神経機能の低下、ストレス反応の増大といった影響が生じる可能性がある。

腸内細菌叢の組成へのアプローチとして現在、最も現実的で直接的な方法はプロバイオティクスの摂取であるが、これまでの腸内細菌叢関連の研究の多くは動物モデルでの研究であり、ヒトを対象とした研究の場合も通常は疾患の病態との関連で研究されていて、アスリートへの影響を検討したものはごく限られている。以上を背景として、今回紹介する論文の著者らは、アスリートを対象とする二重盲検試験を行い、プロバイオティクスの有用性を検討した。

研究対象と手法

研究参加者は、日常トレーニングを続けているアマチュアマラソンランナー20人(男性16人、女性4人)。筋骨格系疾患や消化器疾患、呼吸器疾患などの既往者、および喫煙歴のあるアスリート、習慣的飲酒者は除外されている。このうち1人が怪我のため自主的に研究参加を中断し、解析は無作為に割り付けられたプロバイオティクス群10人(うち女性2人)、プラセボ群9人(同2人)とで比較検討された。

介入期間は5週間で、プロバイオティクス群はラクトバチルス・アシドフィルスとビフィドバクテリウム・ロンガムが含まれるサプリメント、プラセボ群にはマルトデキストリンを摂取してもらった。それらは外観上、見分けがつかないよう包装して手渡した。

介入1週間前から介入期間中の喫煙と飲酒を禁止し、またトレーニング内容を変更しないように指示。毎日トレーニング日誌を記録してもらい、走行距離・時間等が変化していないことを確認した。

評価項目は、クーパー12分間ランニングテスト(クーパーテスト)で把握されるパフォーマンス、体組成、情緒安定性、消化器症状、腸内微生物叢の組成、磁気共鳴画像法(MRI)による骨格筋の微小循環など。

なお、ベースライン時点において、年齢、性別の分布、BMIに有意差はなく、またマラソン経験、トレーニングでの走行距離、教育歴にも有意差がなかった。

それでは、各評価指標の介入の影響をみていこう。

消化器症状が抑制されパフォーマンスが有意に向上

消化器症状の指標(gastrointestinal symptom rating scale;GSRS)は、プラセボ群はベースラインが6.44±2.74点、介入後は6.33±2.45点で有意な変化がなく、プロバイオティクス群は9.20±4.64点から7.40±3.24点へと有意に低下していた(p=0.025)。

腸内細菌叢の組成はベースラインでは有意差がなかったが、介入後にプロバイオティクス群ではプラセボ群よりラティカセイバチルス属が有意に豊富という差が認められた(p=0.001)、またプロバイオティクス群では有害な細菌の有意な減少が認められた。一方、プロバイオティクスの投与後にビフィズス菌の有意な増加は観察されず、著者らは「予想外なこと」と記している。

クーパーテストでの12分間のランニング距離は、プラセボ群ではベースラインが2.68±0.41km、5週間の介入後は2.71±0.44kmであり、有意な変化はなかった。それに対してプロバイオティクス群は同順に2.88±0.57km、3.01±0.60kmであり、有意に増加していた(p=0.016)。

なお、BMIや体組成への有意な影響は、両群ともに観察されなかった。

安全性の懸念は認められない

介入中に、プロバイオティクスまたはプラセボに起因する有害事象は認められなかった。介入終了後のメディカルチェックでも、参加者全員、肝・腎機能を含む検査値に異常がないことが確認された。

なお、プロバイオティクス群の参加者の60%とプラセボ群の参加者の44.44%が、自分がどちらの群に割り付けられたかを正しく予測していた。プラセボ群に割れ当てられた参加者の77.78%は、研究終了後にプロバイオティクスの摂取を前向きに評価した。

著者らは本研究にはサンプル数が少なく、とくに女性アスリートが少ないこと、トレーニング条件を一定に保つために長期間の介入を行えず5週間に限定したことなどの限界点があるとしたうえで、「プロバイオティクスの摂取によりマラソンランナーの腸内細菌叢の組成が改善し、消化器症状が軽減され、パフォーマンスが向上する可能性を秘めている」と結論を述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of probiotic supplementation on 12 min run performance, mood management, body composition and gut microbiota in amateur marathon runners: A double-blind controlled trial」。〔J Exerc Sci Fit. 2024 Oct;22(4):297-304〕
原文はこちら(Elsevier)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1728869X2400039X

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