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スケソウダラタンパク質は筋肉の神経活性を高める 対ホエイプロテインのRCTで有意差

スケソウダラのタンパク質(Alaska pollack protein;APP)が筋肉の神経活性を高めるという点で、ホエイプロテインより優れていることを示唆するデータが報告された。中京大学スポーツ科学部の廣野哲也氏(現・京都大学大学院医学研究科)らが行った、若年成人対象の無作為化二重盲検試験の結果であり、本研究に関する論文は、「Journal of Nutritional Science and Vitaminology」に掲載された。

スケソウダラタンパク質は筋肉の神経活性を高める 対ホエイプロテインのRCTで有意差

APP栄養介入の運動神経入力への影響の差異をヒトで検証

筋力トレーニングと適切なタンパク質の摂取によって筋タンパク質の合成が促進される。一般的に筋力は筋量と比例するが、筋力の向上には筋量として把握される形態的要因だけでなく、中枢神経系からの運動神経への入力も重要である。

これまでの動物実験で、魚のタンパク質、とくにAPPは、タンパク質源を置換する栄養介入により、AKT/mTORを活性化させ、筋量を増加させることが示されている。廣野氏らは、これまでに運動介入とAPP栄養介入を高齢者と若齢者に対して実施し、運動神経入力に対する有用性を検証してきた。今回は、運動介入を行わず、APP栄養介入のみを実施したときに起きる運動神経入力への有用性を明らかにするため、ヒトを対象とする無作為化二重盲検試験により検討した。

運動神経入力への影響は、運動神経細胞が発する電気信号が軸索を通じて筋線維に伝わり、筋収縮を引き起こす基本単位である「運動単位(Motor Unit;MU)」のパルス数で評価した。

研究の対象と手法について

研究の対象は健康な大学生55人(20.2±1.0歳、女性29人)。評価部位である外側広筋が含まれる下肢の神経筋疾患や手術の既往のある学生は除外した。無作為に2群に分け、28人をAPP群、他の27人をホエイプロテイン(whey protein;WP)群として、どちらも毎日朝食時に試験食由来のタンパク量として4.5gを摂取してもらった。介入期間は3カ月として、この間、食事や身体活動習慣を変えず、筋力トレーニングは行わないよう指示した。

介入中にAPP群の7人、WP群の4人が脱落し、解析対象はAPP群21人、WP群23人となった。ベースライン時点(介入前)において両群間に、性別の分布、身体活動量、体重、体組成(骨格筋量、体脂肪量)に有意差はなかった。また、栄養素摂取量は、タンパク質(p=0.191)および脂質(p=0.160)には有意差がなかったが、炭水化物摂取量はAPP群のほうが多かった(4.39±1.62 vs 3.53±1.01g/kg/日,p=0.046)。摂取エネルギー量の差は有意水準未満だった(33.3±11.3 vs 28.0±6.2kcal/kg/日,p=0.065)。

評価項目は、エコー検査による外側広筋の筋厚と筋輝度、膝関節伸展筋力の最大筋力(maximum voluntary contraction;MVC)、高密度表面筋電図から特殊解析によって算出された運動単位発火頻度であり、ベースラインおよび介入1.5カ月後と3カ月後の計3回測定した。

APP介入による、筋機能や筋形態、筋肉神経に対する影響

筋力や形態的な変化には群間に有意差なし

結果について、まず膝関節伸展筋力に着目すると、両群間で増大し、有意な時間効果が観察されたが、群間差は非有意だった。

筋厚は両群ともに有意な変化がみられなかった。この点について論文の考察では、介入中の筋力トレーニングを禁止したことで説明可能としている。一方、筋輝度については両群ともに有意に低下したが、群間差は認められなかった。

MUで評価した筋肉の神経活性の変化は群間に有意差

筋肉の神経活性は、ベースライン時点の最大随意収縮(MVCpre)の20%未満で運動単位(MU)の発火が観察される低閾値のMU群、MVCpreの20%以上40%未満でMUの発火が観察される中閾値のMU群、MVCpreの40%以上で発火が観察される高閾値のMU群という3群に分けて検討されている。なお、低閾値のMU群は持久力に関与し、高閾値のMU群は瞬発力に関与していると解釈される。

解析の結果、両群ともに介入によって運動単位の発火頻度が低下していた。これは、より少ない神経入力で同等のトルクを発揮できるように変化したことを表している。そして、APP群とWP群を比較すると、APP群においてこの変化がより大きかった。とくに、低閾値および中閾値のMU群では、変化幅に有意差が観察された。

まとめると、著者らは、「APPはWPと比較し、最大筋力は有意な差はなく、運動神経における、発火頻度をより低下させることが示された。発火頻度の低下は、筋肉の肥大による収縮能力の向上が起きていることを示唆する。一方、筋厚や除脂肪量などの形態的な指標に有意な変化がなかったことから、本研究におけるAPP介入による筋肉への肥大効果は、形態的な指標の測定限界以下の少ない範囲での増加であったことが示唆される」と、結論づけている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of Alaska Pollack Protein Ingestion on Neuromuscular Adaptation in Young Healthy Adults: A Randomized, Placebo-Controlled Trial」。〔J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2024;70(3):228-236〕
原文はこちら(J-STAGE)

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