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東日本大震災で避難をした人の肥満リスクは56%高い 福島県民を7年間追跡調査

東日本大震災後の避難生活による健康リスクへの影響に関する新たなデータが報告された。福島県民の中で避難をした人は、新たに肥満となるリスクが交絡因子調整後にも56%高いという。福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センターの長尾匡則氏らの研究であり、「Public Health」に論文が掲載された。

東日本大震災で避難をした人の肥満リスクは56%高い 福島県民を7年間追跡調査

震災後の避難生活の肥満リスクの実態とその関連因子を探る研究

2011年3月11日の東日本大震災とそれに続く福島第一原発事故により、福島県居住者のうち16万人が自宅外に避難を強いられ、本研究での最長追跡期間である約7年が経過した2017年12月時点でも約5万人が避難を継続していた(本年5月1日時点では2万5,959人と発表されている)。

避難生活は生活環境の急変やストレス等によって、健康リスクを押し上げることが知られており、東日本大震災による避難生活に伴う健康リスクについても既に多くの研究が行われ、体重や腹部肥満の増加も報告されている。しかし、それら体重に関する研究は追跡期間が2年程度と短期間であったり、肥満のリスクと考えられている心理社会的因子との関連が十分検討されていない。

以上を背景として長尾氏らは、福島県民のうちベースライン(震災後の間もない時期)に肥満でなかった人を最長7年間追跡し、避難を要したか否かで新たに肥満となるリスクを比較検討した。また、避難後に肥満となった人を対象として、どのような因子が肥満リスクに関連しているのかを、心理社会的因子も含めて検討した。

避難を要した人は交絡因子調整後も肥満移行率が有意に高い

この研究では、2011年7月~2012年11月に、原発事故の健康への影響の調査のために実施されている福島県「県民健康調査」のうちの「健康診査」および「こころの健康度・生活習慣に関する調査」に参加した39~89歳の県民のうち、その時点で肥満(国内基準のBMI25以上)でなく、かつその後毎年実施されていた追跡調査のいずれかに参加していた1万5,875人(年齢63.0±11.1歳、男性38.4%)を解析対象とした。

この解析対象のうち、8,644人(54.5%)が政府による避難指示等により避難を要し、7,231人(45.5%)は避難せず生活を続けられていた。両群のベースライン(2011年7月~2021年11月)データを比較すると、避難群は年齢(62.4±11.1 vs 63.7±10.9歳)が若く、睡眠に満足している割合(59.8 vs 68.8%)が低く、精神的不調が強く(K6スコアが13以上の割合が16.2 vs 9.8%)、放射線による健康リスクが高いと認識している割合(48.0 vs 41.1%)が高かった(いずれもp<0.001)。BMIや運動習慣には有意差がなかった。

最長7年の追跡で約13%が肥満に移行

最長7年(平均4.29年)、6万8,165人年の追跡で2,042人(12.9%)が、肥満に移行していた。肥満への移行率を性別にみると、男性は14.1%、女性は12.1%だった。

肥満移行群と非移行群のベースラインデータを比較すると、年齢は全体解析と女性での解析では有意差がなかったが、男性のみの解析では肥満移行群のほうが若年だった。またBMIは男性・女性ともに肥満移行群のほうが高値だった(全体解析で24.0±0.9 vs 21.7±2.0、p<0.001)。喫煙・飲酒・運動習慣については、性別の解析では肥満移行群と非移行群との間に有意差はみられなかった。

このほかに、放射線による健康リスクが高いと認識している人の割合は、男性・女性ともに肥満移行群のほうが高いこと、睡眠の満足度については女性のみ肥満移行群のほうが低く男性は有意差がないこと、収入が減少した割合は男性のみ肥満移行群のほうが低く女性は有意差がないことなどが示された。

千人年あたりの肥満移行率は、非避難群23.0に対して避難群は35.7

避難を要した人の割合は、肥満移行群が65.4%、非移行群は52.8%であり、前者のほうが有意に高く、性別に解析した場合も同様だった(すべてp<0.001)。千人年あたりの肥満移行率は、全体解析では非避難群23.0、避難群35.7、性別の解析では、男性は同順に26.1、40.3、女性は21.1、33.1だった。

肥満移行リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、ベースラインのBMI、喫煙・飲酒・運動習慣、収入の減少、教育歴、睡眠満足度、精神的不調、放射線による健康リスクの認識、地域活動への参加など)を調整後、避難群は非避難群に比べて肥満移行リスクが56%、有意に高いことが明らかになった(ハザード比〈HR〉1.56〈95%CI;1.42~1.72〉)。性別に解析した結果、女性は避難生活のために肥満リスクがより高まる可能性が示された(男性はHR1.44〈1.24~1.66〉、女性はHR1.66〈1.47~1.89〉)。

なにが避難者の肥満リスクを高めているのか?

次に、肥満移行群のみを対象とする解析により、肥満移行リスクと関連のある因子を検討。前記の交絡因子を調整後、ベースラインのBMI(1上昇するごとにHR3.20〈3.00~3.40〉)、現喫煙(HR1.27〈1.06~1.52〉)は肥満移行リスク上昇に、睡眠に満足していること(HR0.87〈0.75~1.00〉)、教育歴の長さ(13年以上でHR0.79〈0.69~0.92〉)は肥満移行リスクの低下に関連していることが示された。

避難生活の長さも肥満移行リスクに関連

続いて、2017年3月末までに避難指示が解除された地域の住民と、避難指示が継続されている地域の住民に分けて検討。前記同様の交絡因子を調整した解析の結果、避難指示が解除された住民の肥満移行リスクは男性がHR1.22(1.001~1.48)、女性はHR1.58(1.35~1.85)であるのに対して、避難指示が継続されていた地域の住民では男性HR1.55(1.33~1.81)、女性HR1.72(1.50~1.97)であり、避難生活の長さも肥満移行リスクに影響を及ぼしていることが示唆された。

著者らは、本研究には摂取エネルギー量を把握できていないこと、ベースライン時に既に肥満に該当していた人の体重変化を検討していないことなどの限界点があるとしたうえで、「東日本大震災とそれに続く福島第一原発事故による避難生活は、7年後の肥満リスクと有意に関連しており、この関連は潜在的な交絡因子を調整後にも一貫して観察され、肥満は避難によって引き起こされた健康課題だと考えられた。ゆえに避難先での身体活動、適切な食事、睡眠の質を維持し、放射線不安などの健康的な行動をとるうえでの障壁を取り除くことが有効である」と結論づけている。

文献情報

原題のタイトルは、「Association between evacuation and becoming overweight after the Great East Japan Earthquake: a 7-year follow-up of the Fukushima Health Management Survey」。〔Public Health. 2024 Jul:232:170-177〕
原文はこちら(Elsevier)

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