主食・主菜・副菜が揃った食事の頻度が高いと栄養バランスが良好 ただし、塩と食物繊維は別
主食・主菜・副菜がそろっている食事の摂取頻度が低い人は、摂取量が推定平均必要量未満である栄養素の数が有意に多いという関連を示したデータが報告された。ただし、生活習慣病の予防のための目標量との関係は有意でないという。神戸学院大学栄養学部公衆栄養・衛生学部門の鳴海(百武)愛子氏らが行った研究の結果であり、「Nutrients」に論文が掲載された。主食・主菜・副菜がそろっている食事の摂取頻度の多寡にかかわらず、食塩の過剰摂取や食物繊維の過少摂取が蔓延している実態も明らかにされている。
主食、主菜、副菜がそろっている食事(SMS食)の頻度は栄養素摂取量に関連ある?
一汁三菜の整った伝統的な日本食は健康的な食事パターンの一つであり、日本人の長寿を支えていると考えらており、「健康日本21(第三次)」でも「主食・主菜・副菜を組み合わせた食事が1日2回以上の日がほぼ毎日の者の割合を令和14年度までに50%とする」との目標が掲げられている。しかし、主食(staple grain dish)、主菜(main dish)、副菜(side dishes)がそろっている食事(SMS食)の摂取頻度と、習慣的な栄養素摂取量との適切さとの関連のエビデンスは、必ずしも十分とは言えない。
他方、SMS食の摂取頻度および食事摂取状況は、年齢や性別、BMI、教育歴、婚姻状況、居住環境、喫煙・飲酒・運動習慣などとも関連があり、習慣的に運動をしている人では食事の質が高いことなども報告されている。これらを背景として鳴海氏らは、日本人成人におけるSMS食の摂取頻度と対象者の基本的な特性、生活習慣関連因子との関係、および栄養素摂取量の適切さとの関係という二つの関係性の検証のため、以下の研究を行った。
30~69歳の日本人を対象に調査
この研究では、2019年2月に調査パネル登録者89万人の中から、性別と年齢層が人口構成と一致する30~69歳の日本人成人800人を無作為に抽出。オンラインと郵送を用いた調査を実施した。回答は任意であり、インセンティブは設けなかった。回答協力者の中から、内容に欠落のある人、何らかの食事療法を行っている人などを除外し、331人の回答を解析対象とした。主な特徴は、年齢48.8±10.2歳、男性62.8%、BMI22.3±3.4で、未婚者が26.6%。
調査では、「主食(米、パン、麺類)、主菜(肉、魚、卵、大豆製品を主材料とする料理)、副菜(野菜、きのこ、海藻などの小鉢)を組み合わせた食事を1日2回以上食べる日は、週に何日か?」という質問から、SMS食の摂取頻度を把握した。日常の栄養素摂取量は、簡易型自記式食事歴質問票(brief-type self-administered diet history questionnaire;BDHQ)の回答から評価した。
栄養素摂取量の適切さ(不適切さ)は、「日本人の食事摂取基準(2015年版)」の「目標量」(生活習慣病予防のために目標とすべき量や範囲)や「推定平均必要量」(年齢と性別が一致する人の50%が必要量を満たすと推定される量)からの逸脱により評価した。
ほぼ毎日、SMS食を1日2回以上摂取している人は約4割
主食、主菜、副菜がそろっている食事(SMS食)を1日2回以上摂取する日の頻度は、「ほぼ毎日」が132人(39.9%)、「週4~5日」が65人(19.6%)、「週2~3日」が74人(22.4%)、「週1回以下」が60人(18.1%)だった。
SMS食の摂取頻度と生活習慣関連因子の関係をみると、SMS食を「ほぼ毎日」摂取している群は、女性、高齢者、既婚者が多く、朝食欠食習慣のある人は少なかった。BMIや教育歴、世帯収入、喫煙・飲酒習慣、歩行時間とは、有意な関係がなかった。
目標量や推定平均必要量から逸脱している人の割合
栄養素別に目標量から逸脱している人の割合をみると、炭水化物については46.8%、タンパク質は40.2%、脂質は46.5%と半数未満だったが、飽和脂肪酸は54.1%と過半数を占めていた。さらに、ナトリウム(食塩相当量)は98.5%とほぼ全員が目標量から逸脱(おもに過剰摂取)しており、食物繊維も86.1%と大半が逸脱(おもに過少摂取)していた。
推定平均必要量との関係では、ビタミンB1(逸脱者の割合65.0%)、カルシウム(同37.2%)、ビタミンA(29.0%)、マグネシウム(26.3%)、ビタミンC(23.9%)、鉄(23.0%)などの栄養素の摂取量が推定平均必要量未満である人の割合が高かった。
SMS食の摂取頻度が低い人は、多くの栄養素の摂取量が推定平均必要量から逸脱
次に、ほぼ毎日SMS食を1日2回以上摂取している群における栄養素摂取量が、目標量・推定平均必要量から逸脱している割合を基準として、年齢、性別、喫煙・飲酒習慣、朝食欠食習慣、歩行数、婚姻状況などの交絡因子を調整したうえで、他群での逸脱の多寡を栄養素別に検討した。その結果、主要栄養素ではたんぱく質、微量栄養素では水溶性ビタミンのビタミンB2、B6、葉酸、ビタミンCについて、SMS食の摂取頻度が低いほど目標量・推定平均必要量からの逸脱が多いという、有意な傾向性が認められた。
また、SMS食摂取頻度が週1回以下の場合、タンパク質の摂取量の逸脱がOR2.40(95%CI;1.12~5.14)、ビタミンB2はOR3.16(1.02~9.80)、B6はOR14.21(3.27~61.64)、ビタミンCはOR2.29(1.00~5.21)と、逸脱している人の割合が有意に高かった。さらに、タンパク質に関しては、SMS食摂取頻度が週2~3日の群でもOR2.09(1.07~4.07)と、有意な高いオッズ比が認められた。
SMS食の摂取頻度は推定平均必要量とは有意な関連があるが目標量との関連は非有意
続いて、SMS食の摂取頻度と、摂取量が目標量・推定平均必要量から逸脱している栄養素の数との関連を、性別や年齢層、BMIなどの交絡因子を調整して検討。すると、SMS食の摂取頻度が低いほど、推定平均必要量から逸脱している摂取量の栄養素の数が多いという有意な関連が認められた(傾向性p<0.01)。一方、目標量からの逸脱との関連は認められなかった(傾向性p=0.50)。
このほか、SMS食の摂取頻度と摂取食品群との関連についての多変量解析の結果、SMS食の摂取頻度が低いことは、麺類、清涼飲料水、菓子、添加糖の摂取量が多く、魚介類、海藻、卵の摂取量が少ないことと関連していた。
次のステップは、SMS食の摂取頻度と健康アウトカムとの関連の検証
著者らは本研究を「SMS食の摂取頻度と栄養素摂取量の適切さ、および、その関係と潜在的な関連のある因子を検討した初の研究」と位置づけている。
既報研究との比較では、SMS食をほぼ毎日摂取している割合は同等だが、ほとんど摂取していない人の割合は高いという。これは本研究での回答者には、男性や若年層が多かった影響ではないかと考察されている。
論文の結論は、「SMS食の摂取頻度は、複数の栄養素および食品群の適切な摂取と関連していることが明らかになった。これらの知見は、近年の栄養学的な課題となっている高齢者の栄養不良や若年女性のやせの予防のための栄養介入に役立てられるのではないか。ただし、食塩の過剰摂取と食物繊維の過少摂取に関しては、SMS食の摂取頻度とは独立した課題であることが示された。これらの課題の解決のためのさらなる研究が必要とされる。また、SMS食の摂取頻度の高さが健康アウトカムの改善をもたらすのかという点について、縦断的研究による検証が求められる」と述べられている。
文献情報
原題のタイトルは、「Relationship between Frequency of Meals Comprising Staple Grain, Main, and Side Dishes and Nutritional Adequacy in Japanese Adults: A Cross-Sectional Study」。〔Nutrients. 2024 May 26;16(11):1628〕
原文はこちら(MDPI)