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第21回国際スポーツ栄養学会(ISSN)の発表演題ダイジェスト

今回は、国際スポーツ栄養学会(International Society of Sports Nutrition;ISSN)の第21回学会抄録集から、いくつかの研究発表をピックアップして紹介する。

第21回国際スポーツ栄養学会(ISSN)の発表演題ダイジェスト

エナジードリンクはカフェイン以上の精神的・身体的な影響をもたらすのか?

原題:Beyond the Buzz: Do Energy Drinks Offer More Than Caffeine for Mental and Physical Tasks?

エナジードリンク摂取による精神的・身体的な影響は、同量のカフェイン(陽性対照)よりも大きいのかという検討の報告。研究デザインは、無作為化カウンターバランスクロスオーバー法。

日常的にトレーニングを行っているボランティア21人(22±5.9歳、男性9人、170.8±10.8cm、71.9±14.8kg、体脂肪率20.2±9.4%、トレーニング歴9.5±5.9年、カフェイン摂取量200.5±140.2mg/日)を対象として、エナジードリンクまたはカフェイン200mgを含む陽性対照ドリンクを摂取前と摂取45分後に、気分プロファイル、精神運動覚醒テスト、握力、腕立て伏せを含む一連のテストを行った。両条件の試行には1週間のウォッシュアウト期間を設けた。

精神運動覚醒テストのスコアの変化は、エナジードリンクは-13±19m秒、カフェインでは-5±28m秒であり、両条件ともに改善が認められた。ただし条件間の差は非有意だった(p=0.3391)。気分プロファイル(p=0.152)や握力(p=0.152)、腕立て伏せ(p=0.209)にも有意差はなかった。

発表者らは、「エナジードリンクに含有されているカフェイン以外の成分は、カフェイン摂取により得られる効果を超えるほどの影響を及ぼさない可能性がある」と結論づけている。なお、カフェインの摂取量は平均すると3.0mg/kg未満となり、比較的少量であることが解釈上の留意点だとしている。

米国陸軍の女性士官候補生の間にエネルギー不足や睡眠の質低下が蔓延

原題:Low Energy Availability Prevalence, Sleep Quality, and Dietary Habits in Female ROTC Cadets

米国陸軍の予備役将校訓練課程に所属する女性士官候補生における、利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)の有病率、睡眠の質、および食習慣の実態を調査した報告。LEAのリスクは女性のLEAF質問票(Low energy availability in female questionnaire;LEAF-Q)、睡眠についてはピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburgh Sleep Quality Index;PSQI)と、アスリート睡眠行動質問票(Athlete Sleep Behavior Questionnaire;ASBQ)で評価し、エネルギー出納については活動量計を7日間連続で装着して消費エネルギー量を把握し、同期間の摂取エネルギー量を勘案して、軍隊における食事摂取基準(Military Dietary Reference Intakes;MDRI)と比較し評価した。研究期間中はふだんの行動を維持するように求めた。

研究参加者はROTCの女性士官候補生9人(22±4歳、166.7±6.0cm、65.8±8.5kg、体脂肪率25.6±6.3%、除脂肪体重〈FFM〉48.6±4.6kg)。利用可能エネルギーは32.3±12.2kcal/kg FFMであり、3人(33.3%)は30kcal/kg FFMであってLEAに該当。他の6人中5人(55.6%)はLEAではないものの最適値(45kcal/kg FFM)以下だった。つまり、LEAやLEAリスクのない士官候補生は、9人中1人のみだった。

摂取エネルギー量は2,052±684kcal/日であり、MDRIを満たしている割合は、エネルギー量(33.3g/kg)については33.3%、炭水化物(4~8g/kg)については44.4%、タンパク質(0.8~1.6g/kg)については88.9%、脂質(20~30%)については22.2%だった。LEAF-Qスコアは8.6±4.3であり、66.7%の女性士官候補生がLEAのリスク状態であった。PSQIスコアは6.3±3.3で44.4%が睡眠の質の低下、ASBQスコアは38.6±5.9で33.3%が睡眠行動の不良を表していた。

LEA該当者は非該当者に比し炭水化物と脂質の摂取量が有意に少ないにもかかわらず、体脂肪率が有意に高かった。睡眠パラメーターには有意差がなかった。

3種類の体組成測定法に対する学生アスリートの好みや認識の違い

原題:Student-Athlete Perceptions of Body Composition Measurement Instruments: A Pilot Study

体組成の評価に用いられる3種類の方法に対する、大学生アスリートの好みが調査された。比較されたのは、生体電気インピーダンス法(bioelectrical impedance;BIA〈タニタ社〉)、デジタル人体測定法(digital anthropometry;DA〈Fit3D社〉)、および水中体重測定法(hydrostatic weighing;HW)。発表者によると、この研究は、BIA、DA、HWという3種類の体組成評価方法に対するアスリートの認識を調査した初の研究だという。

研究対象は全米大学体育協会(National Collegiate Athletic Association;NCAA)ディビジョンIの大学アスリート20人(19.6±1.6歳、女性12人)。BIA、DA、HWの順で測定し、測定直後にアンケートを実施した。

10人(50%)がBIAを好みの方法として選択し、8人(40%)がHWを選択し、DAを選択したのは2人(10%)だった。定性的な分析により、これらの体組成測定法に関する四つのテーマが浮かび上がった。一つ目のテーマは「使いやすさとタイムリーな測定」であり、この点では大半の学生アスリートがBIAが優れていると評価し、次いでHW、DAだった。二つ目のテーマは「正確さが重要」という点、三つ目は「使って楽しい」、四つ目は「好奇心と新しさ」だった。

ホエイプロテイン40mg単回または20mg×2回で下肢伸展1RMへの影響に有意差

原題:The effects of supplementation with one or two doses of whey protein plus leucine versus placebo on individual and group 1-RM responses following eight weeks of resistance training

1日に6.2mgのロイシンを含む40gmのホエイプロテインを単回摂取する群(1PRO+L群)と、6.2gmのロイシンを含む20gmのホエイプロテインを1日2回摂取(ロイシンの1日量は12.4gm)する群(2PRO+L群)、およびプラセボ群とで、8週間の動的抵抗トレーニングによる下肢伸展1RM値に及ぼす影響が異なるかが検討された。

39人の男性(20.6±1.5歳、82.8±13.8kg、181.5±7.3cm)を無作為に3群に分け、80%1RMによる下肢伸展動的抵抗トレーニングを週3回、8週間継続。介入前後の下肢伸展筋力は、1PRO+L群は127.1±33.2kgから169.2±25.9kg、2PRO+L群は128.9±22.5kgから157.8±19.6kg、プラセボ群は131.4±19.2kgから157.4±28.9kgで、全群で有意に上昇していた。1RMの変化率は同順に、40.8±38.1%、26.2±30.1%、20.1±15.0%だった。これらの群間差は非有意だったが、変化率が最小重要差(minimal important difference;MID)を超えた割合は、1PRO+L群は100.0%(全員)であり、2PRO+L群の71.4%およびプラセボ群の58.3%より有意に高かった。2PRO+L群でのその割合はプラセボ群と有意差がなかった(p=0.484)。

急激な体重増加は総合格闘技プロファイターの試合の結果と関係がない

原題:Rapid Weight Regain is Not Linked to Success in Professional UFC Fighters During Competition

世界トップレベルの総合格闘技と位置づけられているUFC(Ultimate Fighting Championship)に出場する選手において、計量後の急速な増量が試合の結果に影響するのかという研究。2024年開催のUFCイベントに出場した24人のプロファイター(30.9±3.9歳、176.8±10.4cm)を対象として、計量時の体重と試合当日の体重を比較し、その変化率と勝敗との関連が検討された。

計量時の体重は69.6±4.1kg、試合当日は75.7±17.3kgであり、10.8±4.5%の増量が行われていた(p<0.001)。解析の結果、体重の変化率は試合の結果との関連が認められなかった。発表者らは、「格闘技アスリートや指導者は、今後、減量戦略をどの程度徹底的に行うか、再考する必要があるかもしれない」と述べている。

ユースサッカー選手では400mgの高用量カフェインが急性効果をもたらす可能性

原題:Caffeine effects on physical performance and sport-specific skills in elite youth soccer players: a randomized trial using the balanced placebo design

若年のサッカー選手のパフォーマンスに対する高用量のカフェイン摂取の影響のエビデンスは未だ十分でない。400mgのカフェイン摂取の急性効果を検討したロシアからの報告。

同国の有力サッカーアカデミーに所属する54人(15.93±0.8歳、BMI21.36±1.37、身体成熟度98.05±1.90)を4群に群分け。カフェインであると伝えカフェインを支給する「I群」、カフェインであると伝えプラセボを支給する「II群」、プラセボであると伝えプラセボを支給する「III群」、プラセボであると伝えカフェインを支給する「IV群」とした。全群でテスト60分前に400mgを摂取した。身体能力と競技特異的スキルを、5、10、20、30mスプリント、カウンタームーブメントジャンプ、ドリブル、方向転換、T字テスト、反復スプリントテスト(repeated sprint ability test;RSA)などで評価した。

カフェインを摂取した2群(IとIV)では、RSAの結果が有意に優れていた(p<0.001)。ドリブルはI群で有意に向上し(p=0.048)、IVは有意水準未満の上昇傾向が観察された(p=0.064)。スプリントタイム、方向転換、ジャンプの高さには有意な影響は観察されなかった。副作用発現率に有意な群間差はなかった。

発表者らは、身体成熟度の高い15~17歳のユースサッカー選手の場合、カフェイン400mgの急性摂取は妥当かつ安全と考えられると述べている。

「リバースダイエット」とは何か? 問題点は? アスリートのコーチ対象質的調査

原題:Defining ‘reverse dieting’: A qualitative survey of post diet strategies among weight loss coaches for natural athletes

近年、フィットネスの領域でダイエット後の体重管理戦略としてリバースダイエットの人気が高まっている。しかしその定義は定まっていないことから、アスリートのコーチを対象とするオンライン調査による定性的な研究が行われた。調査では二つの自由回答による質問を行った。一つは「カロリーバランスを負にする脂肪減少段階の後に、ほかの方法ではなくリバースダイエット戦略を実施するのはなぜか?」であり、もう一つは、クライアントがリバースダイエットによる悪影響を経験したことがあれば提示を求めるというもの。

66件の回答が収集され、最初の問いに対する回答は、47人が「持続可能な食習慣を身に付けるうえでメリットがあるため」と回答し、31人が代謝適応について言及し、20人は生理学的な健康上の考慮事項について言及していた。2番目の質問に対しては、27人が「遵守の問題でリバースダイエットを中止した」と回答し、20人が「リバースダイエットによる副作用はない」と回答。10人が体脂肪量の増加に言及し、4人は内分泌への影響を指摘した。

結論には、「最も注目すべきことは、リバースダイエットは持続可能な食習慣を見に付けるという目的で採用されることが多い一方で、中止の最も一般的な理由は遵守の欠如であるという点であり、これはリバースダイエットの目的と実践の矛盾を浮き彫りにしている。その適用は個人差が大きいことが示唆される」と述べられている。

カフェイン入りエナジードリンクによるエネルギー消費と脂肪酸化の変化

カフェイン入りエナジードリンク摂取の急性の影響と、28日間摂取した場合の慢性の影響について、同じ研究グループから2題発表された。それら2題をまとめて紹介する。

急性効果について

原題:Acute Supplementation with a Caffeinated Energy Drink on Energy Expenditure And Fat Oxidation

男性33人、女性27人(27±8歳、BMI26.7±2.2)を対象とする無作為化二重盲検プラセボ対照試験。カフェイン200mgを含有するエナジードリンクまたはプラセボを単回摂取し、0、30、60、90、120分後に間接熱量測定を行い、安静時エネルギー消費量と脂質酸化を計測した。カフェイン摂取により、エネルギー消費量はベースラインの1,930±354.12kcal/日(以後、単位は省略)から30分後には2,025±353.49、90分後1,970±343.09、120分後1,983±373.05と有意に増加した(すべてp<0.05)。一方、プラセボ摂取後には、60分後が1,864±261.95、90分後1,894±285.88、120分後1,878±289.55であり、ベースラインの1,936±308.56から有意に減少していた(すべてp<0.05)。

脂質酸化率も、カフェイン摂取群ではベースラインから有意に増加し、プラセボ摂取では有意に低下した。これらの結果は、カフェイン含有エナジードリンクを単回摂取後には、エネルギー消費と脂質酸化に急性の変化が生じる可能性があることを示唆している。

慢性効果について

原題:Energy Expenditure and Fat Oxidation Changes Following 28-Days of Consumption of a Caffeinated Energy Drink

上記と同一対象での無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、介入期間は28日間であり、カフェイン200mgを含有するエナジードリンクまたはプラセボを連日摂取してもらった。摂取初日と28日目に、摂取直後、30、60、90、120分後に間接熱量測定を行い、安静時エネルギー消費量と脂質酸化を計測した

摂取28日後、カフェイン群はエネルギー消費量がベースラインの1,985±293.24から、30分後には2,101±290.46、60分後には2,025±257.12、90分後には2,046±283.54と、有意に増加していた(すべてp<0.05)。脂質酸化率に関しては、カフェイン群で摂取120分後の脂質酸化率が高くなる傾向(p=0.052)がみられた。

結論として、28日間連続してカフェイン含有エナジードリンクを摂取すると、エネルギー消費と脂質酸化が有意に増加し、慢性効果が持続することが示された。発表者らは、「これらの変化が体重管理と代謝上の健康にどの程度の影響を及ぼし得るのかという点については、さらなる研究が必要であり、また長期的な影響と潜在的なメカニズムの解明も求められる」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Proceedings of the Twenty-First International Society of Sports Nutrition (ISSN) Conference and Expo」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2024 Jul;21(sup1):2374669〕
原文はこちら(Informa UK)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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