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グアーガム分解物が腸内細菌叢を改善することで、肌機能も改善する可能性 太陽化学

グアーガム分解物摂取の肌機能への効果をヒトで検証した研究結果が報告された。グアーガム分解物は、バリア機能の低下しやすい乾燥期の頬の皮膚バリア機能(保湿力)や皮膚粘弾性(ハリの指標)を改善することが明らかになり、これには腸内環境の改善効果が寄与したと推測されるという。太陽化学株式会社などの研究グループによるもので、論文が「Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition」に掲載されるとともに、同社のサイトにプレスリリース が掲載された。

グアーガム分解物が腸内細菌叢を改善することで、肌機能も改善する可能性 太陽化学

研究の背景:腸内細菌叢をインナービューティーの視点で検討

近年の研究で、腸内細菌叢は腸のみならず全身の健康に関与していることが明らかになってきており、肌についても例外でない。この関係は腸-皮膚軸(Gut-Skin Axis)とも呼ばれ、インナービューティーの観点からも注目を集めている。本研究では腸内細菌叢の改善に有用な水溶性食物繊維として知られるグアーガム分解物※1に着目し、その摂取が肌機能の維持・改善につながるかを検討した。

※1 グアーガム分解物:インド・パキスタン地方に生育するグァー豆の種子に含まれる、高分子食物繊維グアーガムを分解した水溶性食物繊維。グァー豆の食物繊維やグアー豆食物繊維とも呼ばれる。善玉菌の餌になりやすく、優れた腸内環境改善作用を有する。

研究方法:グアーガム分解物5g/日摂取の影響を対プラセボで検討

グアーガム分解物を5g/日摂取した健常成人35名(Partially Hydrolyzed Guar Gum:PHGG群)と、グアーガム分解物を含有しないプラセボ※2食品を摂取した健常成人35名(プラセボ群)について、摂取6週間後と12週間後の肌機能の評価をした。

※2 プラセボ:見た目や味などは試験食品と区別がつかないものの、機能性成分を含まない食品。「試験食品を摂取した」という行為が精神的に作用し、効果をもたらすことがあり、これをプラセボ効果という。この影響を排除するため、試験食品の有効性検証には、プラセボとの比較が一般的とされている。

主な結果:PHGG群で皮膚バリア機能などが改善

  • PHGG群で頬の皮膚水分量※3が有意に増加した。
  • PHGG群はプラセボ群に比べて、皮膚バリア機能(保湿力)の低下しやすい乾燥期における、頬の皮膚バリア機能(経皮水分蒸散量)※4を改善した。
  • PHGG群はプラセボ群に比べて頬の皮膚粘弾性※5が有意に増加した。
  • PHGG群はプラセボ群に比べて頬における乾燥期のメラニン量指数※6が有意に減少した。
  • PHGG群では睡眠と疲労感の改善が認められた。

※3 皮膚水分量:本研究では皮膚水分量の指標として角層水分量をCorneometerで測定した。角層水分量は乾燥などの外部環境の影響を強く受ける。また、皮膚バリア機能(保湿力)が低下すると水分を保つことができず皮膚水分量は低下する。
※4 皮膚バリア機能:皮膚の主要な機能の一つであり、体内の水分喪失を防ぐ(保湿力)、外界からの異物の侵入を防ぐといった機能を指す。本研究では皮膚バリア機能の指標として経皮水分蒸散量(Trans-Epidermal Water Loss;TEWL)をTewameterで測定した。TEWLは単位時間あたりに皮膚が喪失した水分量のことであり、皮膚バリア機能が低下すると水分喪失が増加することでTEWLが増大する。
※5 皮膚粘弾性:一般に肌のハリや柔軟性、弾力などと表現される指標であり、皮膚粘弾性の低下は老化と関連しているとされている。本研究ではCutometerを用いて測定した。
※6 メラニン量指数:Chroma Meterを用いた肌色の測定において算出される指標であり、肌の色素沈着状態の評価などに用いられている。メラニン量指数の低下は肌の色が白く、透明感がある状態に近づいていることを示唆する可能性がある。

図 本研究から推定されるグアーガム分解物の効果(イメージ)

本研究から推定されるグアーガム分解物の効果(イメージ)

(出典:太陽化学(株))

考察と今後の検討:腸内細菌叢の組成変化との関連の解明が求められる

本研究ではグアーガム分解物の継続的な摂取が肌機能(皮膚バリア機能、肌のハリ)の改善に有用である可能性が示された。これまでのグアーガム分解物の知見から推定される作用機序としては、腸内細菌叢の改善を通じた短鎖脂肪酸※7の産生増加の影響が考えられる。

※7 短鎖脂肪酸:食物繊維やオリゴ糖などを腸内細菌が発酵してつくる酢酸・プロピオン酸・酪酸などの有機酸。消化管のエネルギー源となり、バリア機能を強化し、消化管の運動を調節するなど、腸内環境の維持に重要な役割を果たす。また、全身のエネルギーとして使われたり、免疫や糖代謝・脂質代謝を調節したりとさまざまな機能を有する。

腸内細菌由来の短鎖脂肪酸は、皮膚バリア機能(保湿力)の改善に有用であるとする報告があるほか、皮膚炎症の抑制に有用であるとする報告もある。また、本研究の結果でみられた睡眠や疲労感の改善が肌機能の改善に寄与した可能性もあり、複合的な要因が影響したものと予想される。

研究グループでは、「今回の研究では腸内細菌叢の解析を併せて実施していないため、今後は腸内環境にも踏み込んだ、より詳細な知見を集めていくことを検討している」としている。

プレスリリース

“グアーガム分解物”の摂取が肌機能を改善することを発見 腸内環境の改善による肌機能調節の可能性(太陽化学株式会社)

文献情報

原題のタイトルは、「Dietary Intervention of Prebiotic Partially Hydrolyzed Guar Gum Improves Skin Viscoelasticity, Stratum Corneum Hydration, and Reduction of Trans-Epidermal Water Loss: A Randomized, Double-Blind, and Placebo-Controlled Clinical Study in Healthy Humans」。〔J Clin Biochem Nutr. 2024 Jun 7(Advance online publication)〕
原文はこちら(J-STAGE)

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