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10代女性アスリートのエネルギー可用性、体組成、栄養知識に関する教育の効果を証明

10代の女性持久系アスリートに対する栄養教育の有効性を示した研究結果が、トルコから報告された。無作為化比較試験での介入により、エネルギー可用性、体組成、栄養知識などに有意な改善が認められたという。

10代女性アスリートのエネルギー可用性、体組成、栄養知識に関する教育の効果を証明

栄養指導でLEAリスクは低下するのか?

若い女性アスリートは食事ガイドラインの遵守率とエネルギー可用性(energy availability;EA)が低いことが少なくない。EAが低い状態、つまり利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)では、健康リスクが上昇しスポーツパフォーマンスは低下する。LEAの有病率は研究対象によって異なるが、20~60%の範囲と報告されている。

LEAの発生に、アスリート本人の栄養知識のレベルが関与している可能性が想定され、栄養教育によってLEAリスクを抑制できると考えられる。今回紹介する論文の著者らは、トルコ・イスタンブールに居住する若年女性アスリートを対象とする、無作為化比較介入試験により、栄養養育の有用性を検討した。

イスタンブール在住の女性アスリート対象無作為化比較試験

この研究の参加者は、イスタンブールに所在する複数のスポーツクラブから募集された、15~18歳の女性アスリート100人。参加者同士の接触がないように配慮したうえで選出された。研究期間中の脱落を除き、解析対象は83人となった。平均年齢は17.2±2.0歳で、行っている競技はサッカーが34人、バレーボールが33人、バスケットボールが16人だった。

無作為に介入群(解析対象者数45人)と対照群(同38人)の2群に割り付け、介入群に対しては、管理栄養士による対面での栄養指導を6回実施。指導内容は、エネルギー代謝、栄養バランス、トレーニング前後の栄養、利用可能エネルギー不足(LEA)、水分補給、サプリメントなどであり、講義とともに小冊子を提供した。対照群には何の指導も行わなかった。

介入前(ベースライン)と介入6カ月後に、女性のLEA調査票(low energy availability in females questionnaire;LEAF-Q)、摂食態度テスト(Eating Attitudes Test;EAT-26)、スポーツ栄養知識調査票(Sports Nutrition Knowledge Questionnaire;SNKQ)により、介入効果を検討した。また、3日間(平日2日、休日1日)の食事記録に基づく栄養素摂取量と、3日間の活動記録に基づく消費エネルギー量を算出した。

ベースラインにおいて、年齢、競技歴、BMI、体脂肪率に有意差はなかった。摂取エネギー量(p=0.0005)と運動による消費エネルギー量(p=0.002)については、いずれも対照群のほうが有意に高値だった。ただし、総消費エネルギー量に有意差はなかった(p=0.120)。また、エネルギー可用性(EA.〈摂取エネギー量-運動による消費エネルギー量〉/除脂肪体重で算出)は、介入群か24.1±10.7kcal/kg、対照群が27.3±12.2kcal/kgであり、群間差は非有意だった(p=0.112)。

栄養指導でLEAリスクは低下する

解析の結果、介入群では6カ月後に、体組成関連の指標や複数の栄養素の摂取量、スポーツ栄養の知識などに有意な変化が観察された。対照群は変化に乏しかった。介入群における介入前後の変化は以下のとおり。

BMIは20.81±2.16から21.23±1.99、脂肪量は11.64±4.59kgから12.05±4.65kgへと有意に上昇した。運動による消費エネルギー量も633.84±295.01kcalから645.48±301.79kcalへと有意に増加していた(すべてp=0.01)。

栄養素摂取量については、タンパク質は70.66±22.06gから84.76±22.53gへ、炭水化物は184.36±54.65gから228.04±57.09gへ、脂質は76.52±33.64gから82.80±25.91gへと、いずれも有意に増加していた(すべてp=0.01)。

介入群ではLEA有病率が低下

これらの変化の結果として、介入群では利用可能なエネルギー量(摂取エネギー量-運動による消費エネルギー量)が、1739.7±396.6kcalから2046.1±448kcalへと有意に増加した(p=0.01)。

エネルギー可用性(EA.前記の値を除脂肪体重で除した値)が30kcal/kgを「利用可能エネルギー不足(LEA)」とすると、介入前は73.3%とほぼ4人1人が該当していたが、介入から6カ月後には52.6%と、ほぼ2人に1人の割合に減少していた。ちなみに対照群では、46.7%から57.8%と増加傾向がみられた。

また、女性のLEA調査票(LEAF-Q)のスコアは、介入群において8.57±4.36点から6.82±3.72へと有意に低下していた(p=0.01)。スコア8点以上を「LEAのリスクあり」と定義すると、介入群では51.2%から45.5%へと減少、対照群では63.2%から65.8%へとやや増加していた。

スポーツ栄養の知識にも有意な変化

スポーツ栄養知識調査票アンケート(Sports Nutrition Knowledge Questionnaire;SNKQ)については、介入群において、29.18±8.60点から35.29±7.17点へと有意に上昇していた(p=0.01)。摂食態度テスト(Eating Attitudes Test;EAT-26)の結果については20点以上を「摂食行動の問題あり」と定義すると、介入群におけるその割合は、介入前が42.3%、介入6カ月後は40%、対照群では47.4%、39.5%であり、この変化に有意差はなかった。

著者らは、「栄養教育が食事摂取量の増加、体組成へのプラスの影響、栄養知識の向上に有益であることが証明された。これらは結果として、短期間で女性アスリートのエネルギー可用性の増大に貢献することを示唆している」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「The effect of nutrition education sessions on energy availability, body composition, eating attitude and sports nutrition knowledge in young female endurance athletes」。〔Front Public Health. 2024 Mar 14:12:1289448〕
原文はこちら(Frontiers Media)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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