ストレスがかかると食べ方へのこだわりが強くなり、偏食しがちになる可能性 滋賀医科大学
ストレスがかかると、食べ方へのこだわりが強くなり、偏食しがちになる可能性のあることがわかった。このようなこだわりは、脳の側坐核にドーパミンを補うことで修正できるという。滋賀医科大学などの研究グループによる動物実験の結果であり、「Frontiers in Neuroscience」に論文が掲載されるとともに、同大学のサイトにニュースリリースが掲載された。
ストレス下のマウスは、同じ餌が入っているのに特定の餌場に固執する
摂食行動は精神神経疾患で変化することが知られている。また、ストレスなどの環境要因によっても摂食行動は変化する。研究グループでは、社会的隔離(不安)、間欠的な高脂肪食(不満)、身体的拘束(身体的ストレス)といった複数のストレスマウスモデルにおいて、摂食行動や一般的な身体所見を観察した。しかし、これらのマウスで、摂食量や体重等に、共通の変化を見いだせなかった。
一方で、研究グループが新たに考案した定量方法を用いて「食べ方」に着目したところ、すべてのストレスマウスモデルに共通して、こだわりが強くなったかのような偏った食べ方(すべての餌場には同じ餌が入っているにもかかわらず、特定の餌場に固執する)が生じることがわかった。
ストレスを受け食べ方にこだわりを生じたマウスは側坐核のドーパミン濃度が低い
また、ストレスを受けたマウスでは、摂食時の脳内の側坐核におけるドーパミン濃度の上昇の程度が低いこと、そして、側坐核にドーパミンを補うと食べ方の偏りが正常化することも明らかになった。
さらに、マウスの側坐核に投射するドーパミン神経細胞の興奮性を遺伝薬理学的に抑制して、ストレスと同じ状況を再現すると、ストレスがある時と同様の偏った食べ方をすることが判明した。
これらの結果から、「食べ方」の変化は、中脳辺縁系のドーパミン系を中心とした報酬系の異常を直接反映している可能性が高いと考えられ、ストレスの存在を客観的に評価するバイオマーカーとして利用できることが期待される。
関連情報
ストレスによる報酬系の異常は特徴的な摂食行動パターンを呈する(滋賀医科大学)
文献情報
原題のタイトルは、「Stress-impaired reward pathway promotes distinct feeding behavior patterns」。〔Front Neurosci. 2024 May 9:18:1349366〕
原文はこちら(Frontiers Media)