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世界マスターズ陸上に出場する選手の栄養摂取状況を調査 多くの栄養素が推奨量に足りていない

世界マスターズ陸上に出場するアスリートが、多くの栄養素の推奨量を満たしていないとする研究結果が報告された。研究者らは、「マスターズアスリートは、栄養サポートを受けることで恩恵を得られるのではないか」と述べている。

世界マスターズ陸上に出場する選手の栄養摂取状況を調査 多くの栄養素が推奨量に足りていない

マスターズアスリートでは加齢変化によるエネルギー要件の考慮が必要

アスリートにとって栄養戦略が重要であり、この点は高齢(マスターズ)アスリートであっても変わりはない。さらに、マスターズアスリートの場合、若年者よりも同化抵抗が高い、つまり筋タンパク質合成が低下していたり、酸化ストレス、骨量減少などのために、若年アスリートよりも需要の大きい栄養素が存在する可能性もある。しかし、マスターズアスリートの栄養素摂取量に関する研究は少ないことから、本論文の著者らは、世界マスターズ陸上競技選手権大会出場選手を対象とする調査を行った。

調査は、2022年フィンランド大会の屋外競技、2023年のポーランド大会の屋内競技に参加した計43人のマスターズアスリートを対象に行われた。主な特徴は、年齢59.2±10.3歳で、女性16名、男性27名、身長168±8cm、体重62.3±10.8kgであり、競技は持久系が21人、スプリント16人、ジャンプ2人、十種競技など複合が3人、投擲1人。栄養素摂取量は、試合が行われている期間に単回の24時間リコール法にて把握した。解析は、全体平均の解析と、性別および持久系とパワー系の競技別の解析が行われた。

推奨される摂取量を満たしているマスター選手の少なさが明らかに

相対摂取エネルギー量は男性選手でより少ない

まず、エネルギー量についてみると、体重あたりの摂取エネルギー量は平均28±13kcal/kgであり、既報研究で推奨されている30~45kcal/kgを満たしている割合は42%と半数以下だった。

性別・競技別にみると、女性のパワー系は41±10kcal/kgで80%の選手が推奨を満たしていたものの、女性の持久系は29±14kcal/kg(45%)、男性のパワー系は27±12kcal/kg(41%)と推奨を満たしている選手は半数足らずであり、さらに男性の持久系では24±10kcal/kg(20%)と、5人に1人しか推奨を満たしていなかった。

主要栄養素では炭水化物がとくに少ない

次に主要栄養素についてみると、脂質は比較的満たされているが、炭水化物摂取量の少なさが際立つ結果となった。詳細は以下のとおり。

炭水化物

全体平均が3.4±1.6g/kgで既報研究の推奨(5~10g/kg)を満たしている割合は21%。性別・競技別では、女性パワー系が5.1±1.0g/kg(60%)、女性持久系が3.5±1.8g/kg(27%)、男性持久系が2.9±1.5g/kg(20%)、男性パワー系が3.1±1.4g/kg(6%)。性別のみで比較した場合、炭水化物の相対摂取量は男性よりも女性のほうが有意に多かった。

なお、食物繊維は全体平均が23±11gで推奨を満たしている割合は35%だった。

タンパク質

全体平均が1.3±0.6g/kgで既報研究の推奨(1.5g/kg)を満たしている割合は40%。性別・競技別では、女性パワー系が1.9±0.1g/kg(100%)、男性パワー系が1.3±0.5g/kg(41%)、女性持久系が1.1±0.5g/kg(27%)、男性持久系が1.2±0.8g/kg(20%)。

脂質

全体平均が30±10%エネルギーで既報研究の推奨(25~30%)を満たしている割合は74%。性別・競技別では、男性持久系が28±8%(90%)、女性パワー系が29±11%(80%)、男性パワー系が31±7%(74%)、女性持久系が33±14%(55%)。

なお、ω3脂肪酸は全体平均が2.3±2.1gで推奨を満たしている割合は26%だった。

微量栄養素ではビタミンD、Eの推奨を満たしている割合が10%未満

微量栄養素も推奨を満たしていない選手が多くを占めていた。以下に、とくに不足が顕著なビタミンD、E、カルシウム、カリウムについて詳細を記すが、ほかにもビタミンA(全体平均が552±611μg〈レチノール活性当量〉で推奨を満たしている割合が14%)、亜鉛(同順に9±5mg、33%)なども不足が目立った。一方、ビタミンB2、B3、B12、ナトリウムなどは、比較的充足されていた。

ビタミンD

全体平均でみた場合に推奨を満たしていない選手の割合が最も高い微量栄養素はビタミンDであり、平均摂取量は221±179IU、満たしている選手は5%だった。性別・競技別でみると、持久系は男性・女性ともに推奨を満たしている選手が0%であり、パワー系選手との間に有意差が存在した。

ビタミンE

ビタミンEは全体平均が8±7mgで、推奨を満たしている選手は9%だった。性別・競技別でみると、女性は持久系・パワー系ともに推奨を満たしている選手が0%だった。

カルシウム、カリウム

カルシウムは全体平均が664±385mgで、推奨を満たしている選手は14%だった。またカリウムは2,912±1,542mgで12%だった。

性別・競技別でみると、カルシウム、カリウムとも、持久系は男性・女性ともに推奨を満たしている選手が0%だった。またカリウムについては、パワー系選手との間に有意差が存在した。

著者らは、「我々の調査の結果、世界マスターズ選手権に出場する多くのアスリートが、推奨レベルの炭水化物、タンパク質、微量栄養素を摂取していないと結論づけることができる。栄養サポートを強化することで、マスターズアスリートはその恩恵を受けることができるのではないか」と総括している。

文献情報

原題のタイトルは、「Dietary Intake of Athletes at the World Masters Athletics Championships as Assessed by Single 24 h Recall」。〔Nutrients. 2024 Feb 19;16(4):564〕
原文はこちら(MDPI)

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