プロテイン補給にまつわる、ありがちな誤解とよくある質問 科学的エビデンスのまとめ
プロテイン補給に関連する、よくある質問や誤解を11項目にまとめ、それぞれについて現時点での科学的エビデンスに基づき回答をまとめた形式のレビュー論文が、国際スポーツ栄養学会の「Journal of the International Society of Sports Nutrition」に掲載された。一部を抜粋して紹介する。
プロテインサプリメントを摂取する主目的は、タンパク質の需要が食事から摂取可能な範囲を上回った時に不足分を補うことだが、スポーツ領域ではパフォーマンス向上につながるとの認識も根付いている。著者によると、「医学文献データーベースであるPubMedで『タンパク質と運動パフォーマンス』を検索すると、数千件の論文がヒットするほど科学的エビデンスが豊富であるにもにもかかわらず、かなりの誤解が広がっている」とのことだ。
プロテインは腎臓を害するか?
タンパク質摂取による腎機能低下を報告した研究の多くは、疾患有病者を対象とする研究であり、スポーツを行っている腎機能が正常な若年者には当てはまらない可能性がある。さらに近年では、腎機能低下のリスク因子(肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症など)を有する人の体組成改善を意図して、タンパク質の摂取量を増やすという介入を行った研究が報告されるようになり、それらからも腎機能が低下するとの明確なデータは示されていない。
まとめると、健康リスクがなく、スポーツトレーニングを行っている集団では、推奨量(recommended dietary allowance;RDA)を上回る量を、有害事象を伴わずに摂取可能。
タンパク質を過剰に摂取すると体脂肪が増加するか?
タンパク質摂取量の多さと体脂肪量の増加との関連を報告した研究が複数存在する。ただし、タンパク質摂取量がどの程度の場合に「多い」と定義するかが研究によって異なることに留意する必要があり、高タンパク質の食事で体組成が改善したとする報告もある。
まとめると、タンパク質の摂取量が多いことは、スポーツトレーニングを行っている人の場合、必ずしも体脂肪量を増加させるわけではない。
チーズやピーナッツバターは良好なタンパク源か?
チーズやピーナッツバターには、しばしばそれらが良好なタンパク源であると訴求する表示がなされている。しかしそれらの製品は、赤身肉などの他の高タンパク食品に比べるとエネルギー密度が高く、1食分に換算した場合のタンパク質含有量は低いことが少なくない。
まとめると、チーズやピーナッツバターは多くの場合、脂質の含有量が高くて高エネルギーであり、理想的なタンパク源とは言えない。これらはタンパク源というよりも脂質源とみなされ、エネルギー量に配慮する必要がある。
動物性タンパク質(肉類)は健康に悪いか?
過去に実施されたメタ解析では、赤身肉は肝動脈疾患とのリスクとの関連が有意でなく、加工肉はリスクの上昇と関連していた。心血管疾患のほかに癌リスクとの関連の懸念も指摘されている。
まとめると、加工肉の摂取は健康関連指標の多くに悪影響を与える可能性がある。ただし、その関連には、肉以外に摂取されている食品の嗜好またはライフスタイル全般も影響を及ぼしていることも考えられる。白身肉や魚肉は心血管疾患や癌リスクを増大させることはなく、むしろ低下させる可能性もあるようだ。
活発な身体活動を行っていない場合も、プロテインが必要か?
人体は約5万の異なるタンパク質で構成されていて、その65%は骨格筋にあり、骨格筋と全身の健康のために、活発な身体活動を行っていない場合も十分なタンパク質の摂取が必要とされる。最近の研究からは、タンパク質の摂取によって体組成を良好な状態に変更できることが示されてきている。
同化作用を高めるために、筋力トレーニング終了後1時間以内にプロテインを摂取すべきか?
筋タンパク質の同化作用を刺激するために、トレーニング後に速やかにタンパク質を摂取すべきとの考え方は、2001年の研究報告(doi:10.1111/j.1469-7793.2001.00301.x)後に急速に広がったようだ。その後、多くの研究が行われ、最近では必ずしもトレーニング直後の摂取が同化作用にとって重要ではない可能性が指摘されるようになってきた。むしろ、より重要なことは、1日のタンパク質摂取の総量ではないかと考えられている。
論文では以上のほかに、「持久系アスリートもプロテイン補給が必要か?」、「1回の食事機会で摂り込むことのできるタンパク質量に上限はあるか?」、「タンパク質は骨の健康に悪影響を及ぼし得るか?」、「ビーガンやベジタリアンでも、トレーニングに伴う需要を満たし得るタンパク質を摂取可能か?」といった質問と回答がまとめられている。
文献情報
原題のタイトルは、「Common questions and misconceptions about protein supplementation: what does the scientific evidence really show?」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2024 Dec;21(1):2341903〕
原文はこちら(Informa UK)