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必須アミノ酸(BCAA)で筋肉痛や筋損傷マーカーを抑制できるか? 18件の研究のメタ解析

運動による筋損傷や筋肉痛に対する必須アミノ酸/分岐鎖アミノ酸(branched-chain amino acid;BCAA)の有用性に関する、システマティックレビューとメタ解析の結果が報告された。筋損傷のマーカーであるクレアチンキナーゼや筋肉痛に対しては有意な効果が確認され、摂取量が高用量、長期間であるほうが、より有効性が高いことが示唆されたという。

必須アミノ酸(BCAA)で筋肉痛や筋損傷マーカーを抑制できるか? 18件の研究のメタ解析

運動に伴う筋肉へのダメージをBCAAで抑えることは可能か?

運動誘発性筋損傷(exercise-induced muscle damage;EIMD)は、クレアチンキナーゼ(creatine kinase;CK)や乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase;LDH)の上昇として観察され、また遅発性筋肉痛を引き起こす。これらは通常、運動負荷後24~48時間にピークに達し、7日程度で治癒する。この間、スポーツパフォーマンスの低下が生じる。

これに対して、ロイシン、イソロイシン、バリンというBCAAが、EIMDの影響を軽減する可能性が近年指摘されている。今回紹介する論文は、EIMDのマーカーと筋肉痛に対するBCAAの有用性を検討したこれまでの研究報告を対象とするシステマティックレビューとメタ解析の結果であり、BCAAの摂取量・摂取期間との用量反応関係も解析されている。

7種の文献データベースから18件の研究報告を抽出

システマティックレビューとメタ解析のためのガイドライン(PRISMA)に準拠して、PubMed、Web of Science、Scopus、SPORTDiscusなど7種類の文献データベースに、それぞれの開始から2022年9月13日までに収載された論文を対象として、検索が行われた。包括基準は、健康な人を対象として、対照群を置いた無作為化比較試験により、運動負荷に伴い発生するEIMDへのBCAAの影響を検討した研究。除外基準は、BCAA以外の栄養素の摂取または他の介入を同時に行っている研究。

2名の研究者が独立して検索を行い、採否の意見の不一致は討議により解決した。一次検索で1,144報がヒットし、重複していた199報を除外後にタイトルと要約に基づくスクリーニングにより28報に絞り込んだ後、全文精査を行い13件の研究の報告を抽出した。これに、Google Scholarを用いたハンドサーチにより5件を追加して、最終的に18件をメタ解析の対象とした。

18件の研究の特徴

18件の研究は2005~18年に報告されていた。研究デザインは、クロスオーバー試験が6件、並行群間比較試験が12件であり、11件は二重盲検、7件は単盲検だった。研究参加者数は合計331人で、BCAA摂取条件は199人、プラセボ摂取条件が200人だった。性別については14件が男性のみ、2件は女性のみ、他の2件は男性と女性が含まれていた。12件の研究の参加者は日常的にトレーニングを行っていて、6件の研究の参加者は日常的にトレーニングを行っていなかった。

試験での運動負荷は、13件はレジスタンス運動、5件は持久力運動だった。評価項目は、クレアチンキナーゼ(CK)のみが2件、遅発性筋肉痛のみが4件、CKと乳酸脱水素酵素(LDH)が4件、CKと遅発性筋肉痛が5件、CKとLDHおよび遅発性筋肉痛を評価していた研究が3件だった。

BCAAの摂取量は3.15~29.3g/日、体重換算では0.08~0.54g/kg/日の範囲であり、摂取期間は1~28日の範囲だった。

CKや遅発性筋肉痛に関しては有意、LDHに関しては非有意

メタ解析は、各研究報告で示されている運動誘発性筋損傷(EIMD)の発生からの経過で層別化したうえで、バイオマーカー(クレアチンキナーゼ〈CK〉、乳酸脱水素酵素〈LDH〉)、遅発性筋肉痛ごとに行われている。

バイオマーカーに対する効果

クレアチンキナーゼ(CK)に対する効果

運動誘発性筋損傷(EIMD)の発生直後にCKを評価した9件の研究のメタ解析の結果、BCAA摂取によりCKの有意な低下が確認された(効果量〈ES〉=-0.44〈95%CI;-0.76~-0.12〉、p=0.006)また、EIMD発生の72時間後に評価した3件の研究のメタ解析の結果も有意だった(ES=-0.99〈-1.63~-0.35〉、p=0.002)。一方、EIMDの24時間後や48時間後、96時間後に評価した研究のメタ解析では、BCAA摂取の有効性が確認されなかった。

サブグループ解析からは、日常的にトレーニングを行っていない対象のほうがトレーニングを行っている対象よりも有効性が高く、男性のみの研究では女性のみまたは男性と女性が含まれている研究よりも有効性が高いことが示唆された。

乳酸脱水素酵素(LDH)に対する効果

EIMD発生の直後および24時間後、48時間後にLDHが評価されていたが、メタ解析の結果はいずれのタイミングでも、有意な効果が確認されなかった。

遅発性筋肉痛に対する効果

EIMD発生直後に遅発性筋肉痛を評価した研究のメタ解析では、有意な効果が認められなかった。一方、EIMD発生の24時間後(ES=-1.34〈-1.93〜-0.74〉、p<0.001)、48時間後(ES=-1.75〈-2.7~-0.81〉、p<0.001)、72時間後(ES=-1.82〈-2.76〜-0.87〉、p<0.001)、および96時間後(ES=-0.82〈-1.42~-0.21〉、p=0.008)には、メタ解析によりBCAA摂取の有意な遅発性筋肉痛抑制効果が示された。

用量反応関係や性差

EIMD発生24時間後の解析では、BCAAの摂取量が多いほど遅発性筋肉痛の抑制効果が大きいことが示された(1g多いごとにESが-0.06〈-0.12~-0.003〉、p=0.041)。また、性別に関しては、すべての時点で男性のほうがより大きな効果が示された。

論文の結論は、「BCAA摂取によってはEIMD発生24時間以内のCKレベルを低下させ、その後は72時間後の時点で有意差はみられるものの、その他の時点での有意差はない。またLDHレベルに対する有益性は認められない。このほか、用量反応関係が観察され、高用量(5g/日以上)、単回よりも連日(7日以上)の摂取のほうが、より有効性が上昇する可能性があるようだ」と総括されている。

文献情報

原題のタイトルは、「Attenuating Muscle Damage Biomarkers and Muscle Soreness After an Exercise-Induced Muscle Damage with Branched-Chain Amino Acid (BCAA) Supplementation: A Systematic Review and Meta-analysis with Meta-regression」。〔Sports Med Open. 2024 Apr 16;10(1):42〕
原文はこちら(Springer Nature)

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