食事記録アプリと食品摂取頻度質問票の連携は困難? 経過観察にはどちらか一方で追跡を 藤田医科大学
一般に普及されている食事記録アプリケーションは、食物摂取頻度質問票と互換性がないとする研究結果が報告された。藤田医科大学などの研究グループの研究の成果であり、「Nutrients」に論文が掲載されるとともに、同大学のサイトにプレスリリースが掲載された。
研究の概要
藤田医科大学などの研究グループは、近年一般に普及されている食事記録アプリに着目し、国内で広く使用されている2種類の食物摂取頻度質問票との比較を行った。この結果、食事記録アプリと食物摂取頻度質問票で得られる結果には互換性はないことを明らかにした。
従来の食事調査法は管理栄養士の経験・技量に大きく依存する記録紙法がメインだったが、今後は医療のデジタル化に伴い、食事調査に食事記録アプリやWebベースでの食物摂取頻度質問票による栄養評価が、管理栄養士のいない一般の診療所で普及すると予想される。食事記録アプリと食物摂取頻度質問票にはそれぞれ長所短所があり、今回の検討は方法導入の際の参考情報として活用できると予想される。
研究成果のポイント
- 食事記録アプリの記録を7日間以上解析することで、ビタミンB12やビタミンDのような長期に貯蔵できるビタミンは日により摂取量が大きく違うことを明らかにした。
- 日本でよく使われている食事記録アプリと二つの食物摂取頻度質問票を直接比較したところ、摂取エネルギーや栄養素に相関はあるが、互換性はなかった。
- 両者ともに実際の摂取量に比べると、摂取エネルギー量は過小に評価される。
- 手法の異なる方法で栄養摂取量を評価した場合、両者で得られる結果を混同してはならない。
研究の背景
食事調査法は、食事記録法、食事思い出し法、食物摂取頻度法などが挙げられるが、完璧なものはない。これまで広く使用されてきた食事記録法は管理栄養士の技量によるところが大きく、経済的、時間的に負担の大きな調査法といえる。
食物摂取頻度法は一定数の食品名、食品の摂取頻度(毎日1回、週に1~2回、月に1~2回など)、おおよその1回量(重量や容量、大きさ)を尋ねる方法。また食事記録アプリは食べたものの写真や名前を入力し、アプリで解析する方法。食事記録アプリと食物摂取頻度質問票は被験者自身で結果を入力するため、管理栄養士のいない施設でも行える利点がある。
医療のデジタル化が進められている日本では、食事記録アプリとWebで入力・解析する食物摂取頻度質問票に基づいた栄養指導が一般の診療所で普及すると予想される。そのため研究グループは、両者の特性を予め比較しておく必要があると考えた。
研究手法・研究成果
59名の被験者に、二つの食物摂取頻度調査(FFQg、BDHQ)を行ったのち、1カ月のうち7日以上食事記録アプリ(asken)で食べているものを3食とも(間食も含め)入力してもらった。二つの食品摂取頻度調査、食事記録アプリで計測したエネルギーや栄養素については、いずれの検査法で総エネルギー量をみても1,600kcal程度と過小評価されたが、両者に相関がみられた。
次に両者の互換性をブランド-アルトマン分析法※1で比較したところ、いろいろな栄養素のパーセント誤差※2が40%以上であり、互換性はないと考えられた。したがって、食事記録アプリで測定した結果と、2種類の食物頻度摂取調査で測定した結果を混同してはいけないことが示された。
※1 ブランド-アルトマン分析(Bland-Altman analysis):二つの測定方法の一致性の評価に用いられる手法。
※2 パーセント誤差:互換性の評価に用いる。20%以内だと互換性ありと判断される。
今後の展開
食事記録アプリと二つの食物摂取頻度質問票の、どちらも実際の栄養摂取量より過小に見積もられることを意識して結果を解釈するとともに、前後の体重の変化など、ほかの指標も参考にして評価する必要がある。
食事記録アプリでは従来の記録紙法でできなかった長期間の食事内容、毎食の食事内容を解析できるが、毎回食事を入力する手間がかかり、保存するデータ量は多くなる。食物摂取頻度質問票は1回の解答入力(20分程度)で済み、データ量は少ない利点があるものの、個人の記憶に依存する欠点がある。
重要なことは、食事調査法に完璧なものはないということを十分に認識した上で使用すれば、どちらも長所を生かした使用法が可能と思われる。また、栄養摂取に関して患者のフォローアップをする際には、どちらの方法を用いるか予め決めたうえで、経時的な変化量を捉える必要がある。
プレスリリース
食事記録アプリと食品摂取頻度質問票は 異なる食事調査法であることを明らかにしました(藤田医科大学)
文献情報
原題のタイトルは、「A Study on the Compatibility of a Food-Recording Application with Questionnaire-Based Methods in Healthy Japanese Individuals」。〔Nutrients. 2024 Jun 2;16(11):1742〕
原文はこちら(MDPI)