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日本の健康課題に対応した栄養評価システムを(株)明治が開発 既存システムとの比較で妥当性を確認

株式会社 明治は、食品に含まれる栄養素や食素材の量をスコア化して評価する栄養プロファイリングシステム(NPS)を開発し、その妥当性の検証を行った。予防すべき健康リスクに応じて、成人(非高齢者)向けと高齢者向けという2種類のNPSを構築し、いずれも海外で既に使用されているNPSとの比較の結果、相関が確認できたという。同社研究本部の若山諒大氏らの研究によるもので、「Nutrients」に論文が掲載された。

日本の健康課題に対応した栄養評価システムを(株)明治が開発 既存システムとの比較で妥当性を確認

海外では行政府や団体が開発・運用しているNPSが、日本ではまだ普及前夜

栄養プロファイリングシステム(nutritional profiling system;NPS)とは、食品に含まれる栄養素などの量を健康増進の視点からスコア化またはランク付けして、食品の栄養価値を評価する手法のこと。海外では行政府または研究機関や食品関連団体がNPSを開発し、統一した基準による表示がなされ、消費者の食品選択や食品企業による製品改良に活用されている。

一方、国内の現状は、1食分や100gあたりの栄養素量を示すといった形式の「栄養成分表示」が義務付けられているのみで、NPSに関しては、食品関連企業各社が独自に開発して利用し始めた段階にとどまっている。そうしたなか、(株)明治は昨年(2023年)6月に、日本人の食生活の実態を考慮したオリジナルのNPSである「Meiji NPS」を開発した。今回発表された論文は、Meiji NPS開発の手法を詳述するとともに妥当性の検証を行い、その結果を報告する内容。

日本人の二つの健康課題に対応した2種類のNPSを開発

日本は超高齢社会であり、栄養面での課題が高齢者の健康課題において大きなウエイトを占めている。高齢者の栄養という点では、適切な栄養バランスでエネルギーを十分に摂取し、フレイルを予防することが重要といえる。その一方、非高齢者では過食や食塩の過剰摂取等による生活習慣病の増加が大きな問題となっていたり、そのほかにも若年女性のやせといった栄養関連の健康課題が生じている。

これら「栄養不良の二重負荷」と言われるような、相反する課題を含む複雑なニーズに対応するため、Meiji NPSは「ライフステージによって異なるNPSが策定されている点が大きな特徴といえる。つまり、65歳未満の成人対象のNPS(成人NPS)と、65歳以上対象のNPS(高齢者NPS)が開発された。

NPSの開発は、(1)摂取を推奨すべき栄養素と食素材の設定、(2)摂取を制限すべき栄養素の設定、(3)摂取目安量(reference daily values;RDV)の設定、(4)RDVに基づく推奨あるいは制限レベルを算出するアルゴリズム(Meiji NPS)の開発、(5)Meiji NPSの妥当性の検証という工程で行われた。
対象とした健康課題に基づいて、栄養素と食素材を設定:

成人NPSでは、摂取を推奨すべき栄養素をタンパク質、食物繊維、カルシウム、鉄、ビタミンD、制限すべき栄養素を飽和脂肪酸(saturated fatty acid;SFA)、糖類、食塩相当量、およびエネルギーとした。高齢者NPSは、タンパク質、食物繊維、カルシウム、ビタミンDの摂取を推奨し、糖類、食塩相当量、およびエネルギーを制限するとした。食素材としては、双方のNPSともに、果実類、野菜類、種実類、豆類、乳類の摂取を推奨するとした。

摂取目安量(RDV)の設定

摂取目安量(RDV)も、成人と高齢者に分けて設定した。設定に用いたデータは、栄養素については、タンパク質、食物繊維、カルシウム、鉄、ビタミンD、エネルギー、食塩は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」とし、SFAと糖類は世界保健機関(World Health Organization;WHO)の推奨に依拠した。食素材については、果実類、野菜類、豆類、乳類は「健康日本21」の推奨を用い、種実類は国内外の研究データに依拠して設定した。

アルゴリズム(Meiji NPS)の開発

上記の各パラメーターと、「国民健康・栄養調査」で把握されている日本人の摂取栄養素量の中央値との乖離に基づき、米国で開発された既存のNPS「Nutrient-Rich Food Index 9.3(NRF9.3)」を援用して、日本人の食生活に即したNPS「Meiji NPS」のアルゴリズムを開発した。なお、NRF9.3は有用性と精度が検証済みのNPSで、摂取を推奨すべき9種類の栄養素(タンパク質、食物繊維、ビタミンA、C、カルシウム、鉄、カリウムなど)は含有量に応じてスコアを加算し、摂取を制限すべき3種類の栄養素(SFA、糖類、食塩)は含有量に応じてスコアを減算する。

1,545種類の食品について、NRF9.3などとの相関から妥当性を検証

完成したMeiji NPSの妥当性の検証に際して、まず、「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」に収載されている食品の中から、解析に必要なデータが満たされている1,545種類の食品を特定して、Meiji NPSスコアを算出した。その結果、成人NPSのスコアは-760~292の範囲であり、高齢者NPSのスコアは-770~268の範囲に分布していた。平均スコアは同順に38.9±75.8、39.3±70.9、中央値は36.7(四分位範囲3.2~73.1)、31.2(同5.4~69.6)だった。
米国で活用されているNRF9.3との相関:

次に、Meiji NPSとNRF9.3の相関をみることで、Meiji NSPの妥当性を検証した。すると、成人NPSはrs=0.67、高齢者NPSはrs=0.60であり、有意な相関が認められた(いずれもp<0.001)。ただし、食素材別にみた場合に魚介類やきのこ類、藻類は、相関が相対的に低く、有意ではなかった。これは、NRF9.3がエネルギー量100kcal単位で評価するのに対して、Meiji NPSは重量100g単位で評価するため、水分含有量が高い食品はスコアの乖離が大きくなることによるものだという。
オーストラリアなどで活用されているHSRとの相関:

続いて、オーストラリアやニュージーランドで用いられているNPSである「Health Star Rating(HSR)」との相関が検討され、成人NPSはrs=0.64、高齢者NPSはrs=0.61(ともにp<0.001)と計算された。

開発されたNPSは、日本人の栄養関連健康課題の解決に有用

以上の結果に基づき著者らは、「日本人のライフステージに応じた健康課題に即して新たに開発した、成人向け、および高齢者向けNPSの妥当性が確認された。NPSは、「日本の栄養課題に適した栄養評価や製品改良に役立つ可能性がある」と結論づけている。

なお、現在は成人と高齢者向けという2種類のMeiji NPSだが、同社発のプレスリリースには、「将来的には、世界各地の食生活の実態を考慮し、子ども、大人、高齢者それぞれの健康課題に対応したNPSを開発していく」と記されている。

プレスリリース

食品の栄養価値をスコア化して評価する明治栄養プロファイリングシステム(Meiji NPS)の設計とその妥当性の検証~国際学術誌Nutrientsに掲載~(明治)

文献情報

原題のタイトルは、「Development and Validation of the Meiji Nutritional Profiling System (Meiji NPS) to Address Dietary Needs of Adults and Older Adults in Japan」。〔Nutrients. 2024 Mar 24;16(7):936〕
原文はこちら(MDPI)
https://www.mdpi.com/2072-6643/16/7/936

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