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「成人」「高齢者」「こども」それぞれの睡眠について推奨事項を提示 厚労省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」

「成人」「高齢者」「こども」それぞれの睡眠について推奨事項を提示 厚労省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」

厚生労働省はこのほど、「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」を策定した。成人に対しては、個人差はあるものの6時間以上の睡眠時間を目安とすること、高齢者では床上時間が8時間以上とならないことを目安とすることなどの推奨事項が示されている。

図1 睡眠の推奨事項一覧

睡眠の推奨事項一覧

※生活習慣や環境要因等の影響により、身体の状況等の個人差が大きいことから、「高齢者」「成人」「こども」について特定の年齢で区切ることは適当でなく、個人の状況に応じて取り組みを行うことが重要であると考えられる。
(出典:厚生労働省)

「指針」から「ガイド」に変更

我が国における睡眠指針については、平成15年度に「健康づくりのための睡眠指針~快適な睡眠のための7箇条~」が策定されたのが始まりで、次いで平成26年度に「健康づくりのための睡眠指針 2014」が策定された。それから約10年が経過し、睡眠に関する新たな科学的知見が蓄積されてきている。

一方、「健康日本 21(第二次)最終評価」の休養分野の指標である「睡眠による休養を十分とれていない者の割合」は、ベースライン値の18.4%(平成21年)から、15%(令和4年)に低下させることを目標としていたが、最終評価時は21.7%(平成30年)とむしろ増加しており、とくに中高年者(50歳代)において増加の度合いが大きかった。こうした状況を踏まえ、最新の科学的知見に基づき、「健康づくりのための睡眠指針 2014」を見直し「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」として策定された。

「健康づくりのための睡眠指針 2014」との大きな違いは、令和6年度からスタートする国民健康づくり運動である「21世紀における第三次国民健康づくり運動(健康日本 21(第三次)」において目標として掲げられた、適正な睡眠時間と睡眠休養感の確保に向けた推奨事項を、「成人」「こども」「高齢者」と年代別にとりまとめた点。また、良い睡眠とするための科学的知見に基づく参考情報がまとめられている。そのほか、睡眠障害や女性の睡眠、交替制勤務などについても、エビデンスに基づく総括がなされている。

図2 「健康日本 21(第三次)」の休養・睡眠分野に関する目標・指標

「健康日本 21(第三次)」の休養・睡眠分野に関する目標・指標

(出典:厚生労働省)

本ガイドは定量的な推奨事項だけでなく定性的な推奨事項を含むこと、および、従来の「指針」という表現が、すべての国民が等しく取り組むべき事項であるという誤解を与える可能性等を考慮し、「ガイド」という名称に変更されている。

全体の構成は、前半が「睡眠に関する推奨事項」、後半が「睡眠に関する参考情報」と、大きく2部で構成されている。以下、一部を紹介する。

睡眠に関する推奨事項

推奨の提示の前に、本ガイドでは「睡眠に関する基本的な事項」を総括している。例えば、必要な睡眠時間は年齢によっても変化すること、季節によっても変わること、さらに個人差が大きいこと、また何らかの疾患のために睡眠が妨げられたり、休養感が低下したりすることもあることに、気づきを促す記述がなされている。

これに続き、成人、高齢者、こどもごとに、推奨とその解説が掲げられている。推奨の内容は本稿の冒頭の表のとおり。

睡眠に関する参考情報

睡眠に関する参考情報は、以下の項目。「良質な睡眠のための環境づくり」、「運動、食事等の生活習慣と睡眠」、「睡眠と嗜好品」、「睡眠障害」、「妊娠・子育て・更年期と良質な睡眠」、「就業形態(交替制勤務)と睡眠の課題」。

これらのトピックについて、それぞれのポイントをまとめたうえで、詳しい解説が加えられている。ここではスポーツ栄養領域に関連のある、2項目めの「運動、食事等の生活習慣と睡眠」、3項目めの「睡眠と嗜好品」から一部を抜粋して紹介する。

運動、食事等の生活習慣と睡眠

ポイント

  • 適度な運動習慣を身につけることは、良質な睡眠の確保に役立つ。
  • しっかり朝食を摂り、就寝直前の夜食を控えると、体内時計が調整され睡眠・覚醒リズムが整う。
  • 就寝前にリラックスし、無理に寝ようとするのを避け、眠気が訪れてから寝床に入ると入眠しやすくなる。
  • 規則正しい生活習慣により、日中の活動と夜間の睡眠のメリハリをつけることで睡眠の質が高まる。
このポイントの提示とそれに続く解説の後に、「よくある質問と回答」として、5項目のQ&Aが示されている。その中には、「どのような運動が睡眠改善に最も効果的か?」、「睡眠改善のためにおすすめの食事は?」という質問も。ちなみに後者のアンサーは、「海外の研究では、食事パターンと睡眠の質に関するいくつかの報告が存在し、その代表的なものに地中海食パターンがありますが、現時点で睡眠の質改善に寄与する個別の食品等は特定されていません。そのため、必要な栄養素を摂取できるよう、主食・主菜・副菜を中心に様々な食品を取り入れ、バランスの良い食事パターンを構築することをお勧めします」というもの。

睡眠と嗜好品

ポイント

  • カフェインの摂取量は1日400mg(コーヒーを700cc程度)を超えると、夜眠りにくくなる可能性がある。
  • カフェインの夕方以降の摂取は、夜間の睡眠に影響しやすい。
  • 晩酌での深酒や、眠るためにお酒を飲むこと(寝酒)は、睡眠の質を悪化させる可能性がある。
  • 喫煙(紙巻きたばこ、加熱式たばこ等のニコチンを含むもの)は、睡眠の質を悪化させる可能性がある。
このトピックについても、「夜にコーヒーを飲んでいても問題なく眠れるが、本当にカフェインは睡眠に影響するのか?」「コーラタイプの飲料にもカフェインが入っていると聞きいたが、夜は飲まないほうが良いか?」という4項目のQ&Aが挙げられている。

なお、ガイドの末尾の「まとめ」には、新型コロナウイルス感染症パンデミックを契機とした生活様式の変化、とくにリモートワークの普及が睡眠に及ぼす影響、および、ICT(information and communications technology. 情報通信技術)を活用した睡眠の評価法などについては、知見が不十分と判断され参考情報を示すには至らなかったと記されている。

関連情報

厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」

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