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テレビ33%、Web検索22%、Webサイト17% 日本人が栄養・食事の情報を入手するメディアを調査

日本人は、どのメディアから栄養や食事についての情報を得ているかが明らかにされた。東京大学の研究グループが行ったオンライン質問票調査の結果であり、「JMIR Public Health and Surveillance」に論文が掲載されるとともに、同大学のサイトにプレスリリースが掲載された。

テレビ33%、Web検索22%、Webサイト17% 日本人が栄養・食事の情報を入手するメディアを調査

テレビ(32.9%)、ウェブ検索(22.2%)、特定のウェブサイト(16.6%)、新聞(15.0%)、本や雑誌(11.6%)、動画サイト(10.6%)といった、幅広いメディアが利用されていた。研究グループによると本研究は、「一般の人々が栄養や食事に関する情報をさまざまなメディアから得ていることを明らかにした世界で初めての研究」だという。また、「栄養や食事についての信頼できる情報を、社会に向けどのように発信・普及すればよいかを議論・検討するための科学的根拠となることが期待される」としている。

研究の背景:世にあふれる栄養・食事関連情報の、どれがよく使われているのか?

現在、栄養や食事に関する情報は、インターネットを含めて、さまざまなメディアを通じて容易に入手できる。しかしながら、一般の人々がどのような情報源から、栄養や食事に関する情報を入手しているかについては、ほとんど検討がなされてこなかった。

そこで東京大学大学院医学系研究科の研究グループは、日本人成人における、さまざまなメディア情報源からの食事・栄養に関する情報の探索行動を網羅的に調べることとした。

研究の内容:20~70代の約6千人にオンライン調査

本研究は、2023年2~3月にオンライン質問紙調査に参加した20~79歳の日本人成人5,998人を対象とする横断研究として実施された。どのメディアから栄養や食事についての情報を得ているかについては、まず、以下の質問に回答してもらった。

「栄養や食事についての情報を得るときに、あなたが日常的に情報源として用いている媒体・メディアは以下のうちのどれですか? 当てはまるものすべてをお選びください」。

次に、選択した媒体・メディアのそれぞれについて、「その情報源から得られた『栄養や食事についての情報』は信頼できると思いますか?」と尋ねた。選択肢は、「全くそう思わない」、「あまりそう思わない」、「どちらともいえない」、「ややそう思う」、「非常にそう思う」の五つ。このうち、「ややそう思う」もしくは「非常にそう思う」と答えた場合、その情報源を「栄養や食事についての情報源」と分類した。

その結果として得られた、日本人5,998人における栄養や食事についての情報源は、図1に示すとおり。最も多くの人々に使用されていた情報源はテレビ(32.9%)だった。2番目以降は、ウェブ検索(22.2%)、特定のウェブサイト(例:政府や医療メーカー。16.6%)、新聞(15.0%)、本や雑誌(11.6%)、動画サイト(例:YouTube。10.6%)だった。

図1 日本人5,998人の栄養や食事についての情報源(値は%。複数回答可)

日本人5,998人の栄養や食事についての情報源(値は%。複数回答可)

特定のウェブサイトは、政府や医療メーカーのサイトなど。SNSは、Twitter(現在のX)、Instagram、Facebookなど。
(出典:東京大学)

情報入手に用いるメディア別にみた個人の特性

続いて、これらの中で、10%以上の人々に使用されていた六つの情報源について、多変量ロジスティック回帰分析※1にて、関連する特性を調べた。その結果が表1で、どの情報源とも一貫した関連を示したのはヘルスリテラシー※2のみであり、ヘルスリテラシーが高いほど、ここで取り上げた個々の情報源すべてにおいて、利用する確率が高いことがわかった。

※1 多変量ロジスティック回帰分析:統計解析で使われる解析法の一つ。原因と考えられる因子(例えば、性、年齢、教育歴など)が二つ以上あるとき、それらが、結果と考えられるもの(例えば、栄養や食事についての情報を入手するときにテレビを使用するか否か)と関連しているかどうかを調べるときに用いる。「多変量」とは、原因と考えられる因子が二つ以上あることを意味する。また、「ロジスティック回帰」は、結果と考えられるものがある/なしで表せるときに使われる解析方法。
※2 ヘルスリテラシー:健康や医療に関する正しい情報を入手し、理解して活用する能力。

一方、フードリテラシー※3と情報源との関連は、情報源によってさまざまであり、テレビの利用はフードリテラシーが低いことと関連している一方、特定のウェブサイト、本や雑誌、動画サイトの利用はフードリテラシーが高いことと関連していた。さらに、食事内容の質※4が高いことは、新聞および本や雑誌の利用と関連していた。

※3 フードリテラシー:食品に関するニーズを満たし摂取量を決定するに際して、計画、管理、選択、準備、食べるために必要な相互に関連した知識、スキル、行動の集まり。
※4 食事内容の質:食事内容の質の評価には、健康食インデックス(Healthy Eating Index)を用いた。これは、現時点での科学的知見を網羅的にまとめたうえで定められた「アメリカ人のための食事ガイドライン」(Dietary Guidelines for Americans)の遵守の程度を測る指標で、日本人における有用性も検証済み。

性別や教育歴、および職業が管理栄養士であることとの関連

そのほかに、女性であることはテレビと本・雑誌の利用と関連し、男性であることは特定のウェブサイト、新聞、動画サイトの利用と関連していた。また、年齢は新聞の利用と正の関連があり、特定のウェブサイトや動画サイトの利用とは負の関連があった。高学歴者は、特定のウェブサイトや新聞を利用する傾向がある一方で、テレビや動画サイトを利用しない傾向にあった。

管理栄養士は、一般の人々(栄養・健康関連以外の職業の人々)よりも、特定のウェブサイト、本や雑誌を利用する傾向がある一方で、テレビや動画サイトを利用しない傾向にあった。

表1 栄養や食事についての情報を入手するときに使用する情報源と個人特性との関連
テレビウェブ検索特定の
ウェブサイト
新聞本や雑誌動画サイト
(YouTubeなど)
ヘルス
リテラシー
高い高い高い高い高い高い
フード
リテラシー
低い高い高い高い
食事内容の質高い高い
女性男性男性女性男性
年齢若年者高齢者若年者
体重低体重普通体重過体重・
肥満
教育歴中卒・高卒大卒以上大卒以上中卒・高卒
世帯収入
就労状況無職
婚姻状態既婚
居住状態家族・友人
と同居
家族・友人
と同居
慢性疾患あり
喫煙非喫煙者喫煙者
栄養・健康に
関する職業
◯栄養・健康
関連以外の
職業
◯栄養士・
管理栄養士

◯看護師・
助産師・
保健師・
薬剤師
◯栄養・健康
関連以外の
職業

◯メディア
関連の
職業
◯栄養士・
管理栄養士

◯食に
関する
民間資格の
所有者
◯栄養・健康
関連以外の
職業
多変量ロジスティック回帰分析で統計学的に有意なもの(P<0.05)のみを示す(「―」は有意な関連がなかったことを示す)。特定のウェブサイトは、政府や医療メーカーのサイトなど
(出典:東京大学)

今後の展望:信頼性の高い食事・栄養情報を効果的に伝達するために

本研究により、日本人成人を対象として、栄養や食事についての情報を求める際に日常的に利用されるさまざまな(オンラインおよびオフラインの)情報源があることが明らかになった。さらに、それぞれの情報源を使用するかどうかには(ヘルスリテラシーを除けば)異なる要因が関連していた。このことは、潜在的なユーザー、トピック、最適な情報普及戦略がそれぞれの情報源によって大きく異なることを示唆している。

本研究において最も懸念される知見は、二つの主要な情報源(テレビとウェブ検索)の利用と、フードリテラシーおよび食事内容の質との間に正の関連が観察されなかったことと言える。一方で望ましい知見は、特定のウェブサイト、新聞、本や雑誌、動画サイトの利用が、フードリテラシーや食事内容の質と正の関連を示したことと言える。

いずれにしても本研究は、一般の人々が栄養や食事に関する情報をさまざまなメディアから得ていることを明らかにした世界で初めての研究。本研究の成果は、栄養や食事についての信頼できる情報を、社会に向けどのように発信・普及すればよいかを議論・検討するための科学的根拠となることが期待される。

プレスリリース

日本人はどのメディアから栄養や食事についての情報を得ているか―オンライン質問票調査―(東京大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Prevalence and correlates of dietary and nutrition information seeking through various online and offline media sources among Japanese adults:an online cross-sectional study」。〔JMIR Public Health Surveill. 2024 Feb 14:10:e54805〕
原文はこちら(JMIR Publications)

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