スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2024 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

カフェインの筋肉に対する作用は摂取の30分後が最大か? 集中力などへの作用とは異なる可能性

カフェインの筋肉に対する作用は、摂取30分後の時点に最大化することを示唆する研究結果が報告された。一般的に、カフェインの集中力や認知機能等への作用は摂取60分後に最大化するとされているが、筋肉への作用はそれより短時間で発現するのかもしれない。ポーランドからの報告。

カフェインの筋肉に対する作用は摂取の30分後が最大か? 集中力などへの作用とは異なる可能性

カフェインの筋肉への作用をTMGで評価

カフェインはエルゴジェニックエイドとしてアスリートの間で広く利用されている。カフェインのスポーツパフォーマンス上の作用は、注意力や集中力、認知機能の向上と筋肉に対する働きかけなどによって生ずると理解されている。スポーツパフォーマンスへの影響を考慮した場合の最適な摂取方法として、パフォーマンスを最大化したい時間帯の60分前に3~6mg/kg摂取と推奨されることが多い。この推奨はおもに、血中のカフェイン濃度や心拍数、および認知機能の変化を評価した研究の結果から導かれたものであり、カフェインの筋肉に対する作用との関連についてはあまり検討されていない。

筋肉の機能の評価方法はさまざまであるが、近年、簡便な手法として、電気刺激によって非侵襲的に筋肉の収縮速度や硬さなどを測定する「Tensiomyography(TMG)」という手法が用いられるようになってきた。今回紹介する論文の研究では、このTMGによって、カフェイン摂取後の筋肉への作用が最大化するタイミングを検討している。

男子サッカー選手42人を対象にカフェイン摂取30分後と60分後で比較

研究参加者は、ポーランドの全国レベルでプレーし、習慣的にカフェインを摂取している男子サッカー選手42人(24.8±4.4歳、BMI24.4±3.6)。試験当日までカフェイン摂取量を変えないように指示したうえで、当日はカフェインを含む食品の摂取を禁止。

TMGテストを施行後に6mg/kgのカフェインを摂取してもらい、その30分後と60分後にもTMGテストを行った。

なお、TMGテストは両足の内側腓腹筋を対象とし、評価指標は、信頼性が高いと報告されている電気刺激後の収縮時間(contraction time;Tc)と最大変位(maximum displacement;Dm)、および遅延時間(delay time:Td)と半径方向変位(radial displacement velocity;Vrd)の4項目。

摂取30分後のほうが筋肉の収縮速度や硬さが有意に高い

解析の結果、カフェイン摂取から30分後の筋収縮は60分後より有意に速いことが示された。具体的には電気刺激後の収縮時間(Tc)は、ベースライン(カフェイン摂取前)が21.94±4.5、30分後は19.09±3.1、60分後は20.84±3.5ミリ秒であり、30分後と60分後との値には有意差が観察された(p<0.001)。また遅延時間(Td)は同順に、19.35±2.0、18.6±1.9、19.01±1.7ミリ秒であり、30分後と60分後との値に有意差が観察された(p=0.035)。

また筋肉の硬さの指標とされる最大変位(Dm)も、2.64±1.0、2.07±0.9、2.47±1.1mmであって、やはり30分後と60分後との値に有意差が観察された(p=0.001)。なお、Dmは値が小さい方が、筋肉が硬いと判定する。半径方向変位(rVrd)に関しては、30分後と60分後とで有意差はなかった(p=0.075)。

これらの評価指標はすべて、カフェイン摂取の30分後よりも60分後において、カフェイン摂取前の値に近づく傾向がみられた。このことから著者らは、「カフェイン摂取の60分後では、既にその時点でカフェインの筋肉に対する作用が失われ始めている可能性がある」と述べている。なお、右足と左足の比較では、4種類の評価指標のすべて、有意差は観察されなかった。これを根拠として、「カフェイン摂取による筋肉への影響は全身性のものと考えられる」との考察も加えられている。

結果解釈に際して留意すべき点

以上の結果に基づき論文の結論は、「スポーツアスリートまたは身体活動を行っている人が、筋肉のパフォーマンスの向上を期待してカフェインを摂取する場合、約30分前に摂取することでメリットを受けられる可能性がある。それによって筋肉の収縮が速くなり、遅延時間が短縮され、運動能力の向上につながるのではないか」と総括されている。また、TMGテストについて、「TMGを用いることでカフェイン摂取後の筋肉反応の非侵襲的なモニタリングが可能になる。この手法はスポーツパフォーマンスや身体リハビリテーションの分野でのさらなる研究、および応用が期待される」と付け加えられている。

一方、本研究の限界点として、対照が習慣的にカフェインを摂取している男性アスリートのみであって、比較対照群を置いておらず、他の集団への一般化は制限されること、および、TMGで評価した筋肉が一つの部位のみであることなどを挙げている。

文献情報

原題のタイトルは、「Muscle contraction time after caffeine intake is faster after 30 minutes than after 60 minutes」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2024 Dec;21(1):2306295〕
原文はこちら(Informa UK)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2024後期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ