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5種類そろう食事の準備に関するセルフエフィカシーが高い保護者の子は、栄養バランスが良い可能性 国内の小中学生男子サッカー選手とその保護者を調査

国内のサッカークラブに所属する小中学生男子とその保護者を対象とするペア調査の結果、5種類そろう食事の準備に関するセルフエフィカシーが高い保護者の子どもは、「食事バランスガイド」の推奨に近い食生活であることを示唆する研究結果が報告された。筑波大学体育系運動栄養学の小澤智子氏、麻見直美氏らが国内のサッカークラブに所属する小中学生男子とその保護者を対象に行った調査の結果であり、「Journal of Nutritional Science and Vitaminology」に論文が掲載された。

5種類そろう食事の準備に関するセルフエフィカシーが高い保護者の子は、栄養バランスが良い可能性 国内の小中学生男子サッカー選手とその保護者を調査

ジュニアアスリートの食事は保護者のセルフエフィカシーで規定される?

成長期にいる小中学生の選手にとって、成長、スポーツパフォーマンスの発揮、および怪我のリスク抑制という点で、十分な栄養素等摂取は重要である。国内では、農林水産省と厚生労働省が策定した「食事バランスガイド」が、理想的な食事パターンの基準として用いられており、その「食事バランスガイド」ではコマのイラストを用いて、主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物という五5種類の料理グループの摂取を推奨している。そして、この5種類がそろう食事は、一般の人だけでなくアスリートの食事としても重要と考えられている。

一方、小中学生の食事は保護者が用意することが大半であり、保護者の食事準備に関するセルフエフィカシーが高いことが、子どもの栄養素等摂取状況に関連している可能性がある。しかし、スポーツクラブに所属している子どもと保護者を対象とするこのような視点での研究は、これまでのところ実施されていない。小澤氏と麻見氏らは、この点に関する初の調査研究を実施した。

小学5-6年生と中学生のサッカー選手とその保護者対象のペア調査

この研究は、首都圏に拠点を置くサッカークラブに所属している小学5-6年生(10~12歳)123人、中学生(12~15歳)315人の男子と、その保護者を対象とする横断研究として実施された。

子どもに対しては1週間にわたる食事調査を行い、朝食、昼食、夕食および補食において、主食、主菜、副菜、牛乳・乳製品、果物という5種類の料理グループそれぞれを摂取したか否かを自己申告で回答してもらった。給食を摂取した昼食を除外し、朝食、夕食、補食を通して5種類そろえた食事摂取回数を算出した。

保護者のセルフエフィカシーは、5種類そろう食事を、自身の子どもにいつも準備することができるかを問い、7つの状況について「全くできると思わない」~「必ずできると思う」の5段階で回答してもらい、評価した。7つの状況とは、子どもと外食するとき、食材が足りない日、経済的に厳しいとき、自身の体調が良くないとき、自身がいつもより忙しいとき、自身の気持ちが落ち込んでいるとき、子どもの練習や試合が休みの日であった。なお、子どもの練習や試合が休みの日という状況の回答はバイアスが高いと評価されたため、解析から除外し、スコアの合計は6~30点の範囲となった。

保護者のセルフエフィカシー得点が高い子どもの5種類そろえた食事回数は高頻度であった

代替え食品のない食品アレルギーのある子ども、およびデータ欠損者を除外し、365組(小学生100名、中学生265名)の親子を解析対象とした。保護者は94.5%が母親だった。

子ども対象の食事調査で1日を通して5種類そろえた食事の摂取回数を中央値で全体を二分すると、小学生では49.0%が、5種類そろえた食事の回数が多い高頻度群であるのに対して、中学生では61.1%が高頻度群であり、有意にその割合が高かった(p=0.036)。競技レベルで比較すると、地方大会レベルでは高頻度群の割合は46.8%であるのに対して、全国大会レベルではその割合が71.3%であって、後者で有意に高かった(p<0.001)。

保護者の年齢を比較すると、低頻度群は中央値43.0歳に対して高頻度群は44.0歳であり、後者のほうが、有意に年齢が高かった(p=0.018)。また保護者のセルフエフィカシースコアは、低頻度群が中央値15.5点であるのに対して、高頻度群は17.0点であり、後者のほうが、有意にセルフエフィカシースコアが高かった(p=0.005)。なお、回答者が父親か母親かで比較した場合に、選手の5種類そろえた食事摂取回数の頻度に有意差はなかった。

次に、子どもの5種類そろえた食事摂取回数が高頻度群であることを従属変数、学校の種別、競技レベル、保護者の年齢、父親か母親か、および保護者のセルフエフィカシースコアを独立変数として、多変量ロジスティック回帰分析を実施した。その結果、保護者のセルフエフィカシースコアが高いほど、子どもの5種類そろえた食事が高頻度群である可能性が有意に高いことが明らかになった(調整オッズ比1.06〈95%CI;1.00~1.12〉、p=0.036)。

保護者のセルフエフィカシーの高さは、選手の朝食摂取状況に、より関連している可能性

続いて、保護者のセルフエフィカシースコアと、子どもの朝食、夕食、補食における5種類の料理グループそれぞれの摂取回数との相関を検討した。すると以下のように、多くの料理グループの摂取回数が、保護者のセルフエフィカシースコアと正相関した。

まず朝食において、主食以外の4種類の料理グループの摂取回数との相関が有意だった。相関係数(r)は、主菜が0.13、副菜は0.20、牛乳・乳製品は0.11、果物は0.13であった。なお、5種類の料理グループがそろっていた食事の摂取回数との相関も有意であった(r=0.15)。

一方、夕食では主食との関連が有意であり(r=0.12)、主菜、副菜の摂取回数との相関は有意ではなかった。牛乳・乳製品は0.14、果物は0.17で有意であり、5種類の料理グループがそろっていた食事の摂取回数との相関も有意であった(r=0.19)。

補食については、牛乳・乳製品との相関のみが有意だった(r=0.12)。

保護者のセルフエフィカシーを高めるような介入が必要

著者らは、「保護者のセルフエフィカシースコアと、子どもの5種類そろえた食事摂取回数の頻度との間に、有意な関連が認められた。この関連は夕食に比較して朝食でより強く観察された」と総括している。また論文の考察において、「保護者が準備した食事を主に食べている小中学生にとって、保護者のセルフエフィカシーは重要であるため、保護者のセルフエフィカシーを高めるような栄養教育が必要ではないか」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Self-Efficacy of Parents of Boys in Sports Clubs on Meal Preparation and Boys’ Dietary Intake: A Cross-Sectional Study of Soccer Clubs」。〔J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 2023;69(6):471-478〕
原文はこちら(J-STAGE)

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