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運動の種類や持続時間は血糖変動にどう影響するのか? 年齢、性別、BMIなどどともに解析

2024年04月07日

運動の種類や持続時間が血糖変動に及ぼす影響を、年齢、性別、BMIなどとの関連とともに解析した結果が報告された。レジスタンス運動では有酸素運動に比べて低血糖または高血糖の時間の割合が少ないことなど、多くのデータが示されている。米国の健常者を対象とした研究。

運動の種類や持続時間は血糖変動にどう影響するのか? 年齢、性別、BMIなどどともに解析

isCGMの普及を糖尿病でない人の代謝管理に役立てる

血糖値は現在も採血により測定されるが、皮下の間質液中のブドウ糖濃度を計測して血糖値を推定し、アルゴリズムに基づき連続的に血糖変動を捉える「間欠的血糖スキャン(intermittently scanned Continuous Glucose Monitoring;isCGM)」が急速に普及してきている。このisCGMのユーザーとして、当初は保険診療下での糖尿病患者、とくに1型糖尿病患者の使用が中心だったが、現在では2型糖尿病患者、または保険診療外で糖尿病予備群、あるいは血糖変動がパフォーマンスと関連するアスリートなどが使用するようになってきた。これによって、糖代謝が正常の人の運動による血糖変動を理解することが可能となっている。

これまでのところ、正常耐糖能の人の運動による血糖変動にどのような影響が生じるのかという点について、少数例での検討結果は複数報告されているが、運動のタイプや持続時間の違い、あるいは年齢や性別、BMIによる影響の差異を検討できるほどの大規模なサンプルでは検討されていない。こうした背景の下、今回紹介する論文研究では、119人という比較的大きなサイズでの検討を行っている。

健常者約120人の血糖変動を10日間測定

この研究の参加者は、米国内の12カ所の糖尿病クリニックに受診している1型糖尿病患者の家族、友人、知人から募集された。適格基準は年齢6歳以上で、HbA1c5.7%未満であり、糖代謝に影響を及ぼし得る疾患や薬剤の服用がなく、18歳以上はBMIが30未満、18歳未満はBMIパーセンタイルが5~85の範囲であること。妊婦は除外されている。

参加者にはisCGMが支給され、10日間にわたって血糖変動を記録。その間に少なくとも1回、運動を行うこととした。運動を実施した際には、運動の種類(有酸素運動かレジスタンストレーニングか、またはそれらの混合か)を記録してもらった。

解析対象とする運動中の血糖変動は、運動持続時間が10分以上とし(支給したisCGMが5分ごとの計測のため)、また食事の影響を抑制するため食後30分以上経過後に行った運動とした。運動の実施時刻は5~24時の間に分布していたが、運動を行う時間帯による血糖変動への影響は、本研究では考慮されていない。

血糖値は54mg/dL未満を「非常に低い(very low)」、54~70mg/dL未満を「低い(low)」、70~120mg/dL未満を「正常(normal)」、120~130mg/dL未満を「上昇(elevated)」、130~140mg/dL未満を「高い(high)」、140mg/dL以上を「非常に高い(extremely high)」と分類。70mg/dL未満が3回続いた場合を「低血糖」とし、54mg/dL未満は「重症低血糖」と定義した。

性別や運動のタイプなどによって血糖変動への影響が有意に異なる

解析対象とした119人の年齢は31±21歳、女性65%で、BMIは22.1±4であり、全体で663セッションの運動イベントが記録されていた。

運動中の間質液中ブドウ糖濃度(以下、血糖値)は、すべての時間の85.2±25.7%が正常域(70~120mg/dL)にあった。正常を超えた時間の割合は9.3±21.6%、下回った時間の割合は5.6±16.9%だった。

91セッション(13.7%)で70mg/dL未満が確認され、55セッション(8.3%)では70mg/dL未満の値が15分以上連続していた。また重症低血糖(<54mg/dL)が0.6±5.2%に認められた。一方、高血糖(>140mg/dL)は2.2±9.7%に認められた。

論文ではこれ以降、性別、年齢、BMI、運動の種類・持続時間と血糖変動の解析結果を述べている。

性別での比較:女性は運動中の血糖値が低く、かつ低下幅が大きい

まず性別で比較すると、女性の運動持続時間は男性よりも有意に短かく(49±34 vs 57±41分、p=0.009)、運動中の平均血糖値は低く(95±17 vs 99±15 mg/dL、p=0.004)、運動後の血糖値も低かった(93±18 vs 100±17mg/dL、p=0.04)。また、運動中の血糖値の低下幅も女性のほうが大きかった(運動前から運動中の最低血糖値の差が14±18 vs 10±14mg/dL、p=0.009、運動前後の差は6±20 vs -1±20mg/dL、p=0.001)。

女性の44%、男性の40%が運動中に少なくとも1回、70mg/dL未満の記録があり、連続3回70mg/dL未満の記録のあった割合は同順に26%、21%であって、これらの群間差は有意でなかった。

年齢層別やBMIカテゴリー別の比較

次に年齢層別に比較すると、20~39歳では20歳未満より70mg/dL未満の時間の割合が6.9%多く(p<0.001)、54mg/dL未満の時間も0.6%多かった(p=0.031)。40~59歳は20歳未満と比べて、正常範囲にある時間が8.4%多く(p=0.012)、この範囲を超過している時間帯も少なかった。このほかにも、年齢層によって運動中の血糖値や運動前後での血糖変動幅に、有意な違いがあることがわかった。

BMIカテゴリーでみると、低体重者は普通体重(BMI18.6~24.9)に比較して、運動前の血糖値が有意に高く(104±20 vs 97±17mg/dL、p=0.02)、運動前後での血糖変動幅が小さかった(3±23 vs 4±20mg/dL、p=0.03)。過体重(国内での肥満に相当するBMI25以上)は、普通体重群と血糖変動に有意差がみられなかった。

運動のタイプの影響:混合セッションは血糖値が低下しやすい

有酸素運動とレジスタンストレーニングを比較した場合、運動前血糖値は後者で有意に高く(93±13 vs 99±18mg/dL、p=0.02)、運動前から最低血糖値までの低下幅は少なかった(12±18 vs 7±12mg/dL、p=0.005)。一方、両者混合の運動セッションでは、運動前から最低血糖値までの低下幅が20±17mg/dLであり、3条件の中で最大だった(有酸素運動との比較でp=0.029)。また、運動前後での血糖低下幅も混合セッションで大きかった(15±20mg/dL)。

レジスタンストレーニングは有酸素運動と比較して、54mg/dL未満の時間帯や130mg/dLまたは140mg/dLを超える時間帯の割合が有意に少なかった。

運動持続時間の影響:時間が長いほど血糖変動が大きくなる

運動前血糖値と運動中の平均血糖値は、さまざまな運動時間のグループ間で類似していた。一方、運動持続時間が長いほど運動中の最低血糖値がより低く、最高血糖値はより高いという有意差が観察された。

これらを総括して論文の結論は、「健康な人では、レジスタンス運動は有酸素運動と比較して低血糖のリスクが低く、高血糖への曝露も少ないようだ。両者を組み合わせた運動では血糖値の低下幅が大きくなり、低血糖リスクが生じやすい傾向がある。今後の研究では、一般人口の血糖変動に影響を与える、栄養、運動の時間帯、その他の要因を考慮して、健康やパフォーマンスの維持・向上に最適な目標設定の確立が望まれる」。

文献情報

原題のタイトルは、「The Impact of Sex, Body Mass Index, Age, Exercise Type and Exercise Duration on Interstitial Glucose Levels during Exercise」。〔Sensors (Basel). 2023 Nov 9;23(22):9059〕
原文はこちら(MDPI)

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