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サプリメントへの異物混入の現状と安全なサプリ摂取の推奨事項 ナラティブレビュー

ナラティブレビューにより、サプリメントへの異物混入の実情や、アスリートがそれを摂取してしまうリスクと対策などについて総括した論文が、昨秋に米国の研究者らが発表しており、今回はその要旨を紹介する。サプリメント産業は過去20年間で大幅な成長を遂げ、その成長速度は研究者が全製品の安全性と有効性を判断できる速度を超過していることから、個々のアスリートの自律的な判断が重要だとする論旨。

サプリメントへの異物混入の現状と安全なサプリ摂取の推奨事項 ナラティブレビュー

イントロダクション

クレアチン、β-アラニン、硝酸塩などのパフォーマンス向上のエビデンスのある栄養補助食品(サプリメント)の摂取は、スポーツアスリートの間で広く行われている。調査対象により差はあるが、6~8割のアスリートが習慣的にサプリメントを摂取していると推定されている。

米国では、1994年に栄養補助食品健康・教育法(Dietary Supplement Health and Education Act;DSHEA)が議会で可決され、サプリメントは「食品」の中の一つのカテゴリーとして位置づけられた。この定義により、食事を補うことを目的としたサプリメントには、何らかの「栄養成分」が含まれていなければならないとされた。その後、その「栄養成分」は、ビタミン、ミネラル、ハーブ、アミノ酸、酵素などの物質と定義された。また、臓器組織や腺抽出物が含まれることもあり、形態は錠剤、カプセル、ソフトジェル、液体、粉末などのさまざまである。

サプリメントはパフォーマンスや健康上のメリットをもたらす可能性があるが、これまでの研究から、サプリメントの中には異物が混入しているものが存在していることがあり、その摂取によってドーピングのリスクが生じることが示されている。また、健康上のリスクを引き起こすこともあり得る。これらを背景として、ナラティブレビューの手法によりアスリートの間でのサプリメントの使用状況の実態を概観し、ドーピングのリスクと対策を総括する。

レビューの情報源は、PubMed、Medline、SPORT Discus、Google Scholarなどであり、検索用語として、サプリメント、エルゴジェニックエイド、異物混入、ドーピング、汚染、アンチ・ドーピング、アスリート、健康などを用いた。原著論文のほかに、システマティックレビュー、メタ解析、ナラティブレビューも適格とした。また、抽出された論文の参考文献もハンドサーチにより追加した。

サプリメントの普及率

アスリートは一般集団と比較してサプリメント使用率が高いことが知られており、対象により6~8割とされている。近年ではソーシャルメディアの普及がサプリメント利用に影響を及ぼしているとする考え方が増えている。例えば1998~2009年までの11年間でサプリメントの利用率自体はそれほど大きくは変化していなかったが、摂取される製品数は、1人あたり6から9に増加したというデータがある。

パフォーマンス向上という有効性については、プロテイン、炭水化物、クレアチン、カフェイン、硝酸塩、β-アラニン、およびスポーツドリンクが好まれ、エビデンスが存在する。

異物混入と不用意なドーピング

サプリメントへの異物混入は、禁止物質リストに含まれる興奮剤、同化薬、または特定の医薬品の偶発的、または意図的な混入(spiked〈スパイク〉と呼ばれたりする)と定義できる。これらの実態を把握する調査が行われているが、対象とする製品群や使用者群によって結果が異なる。一般的に、多成分サプリメントやタンパク質同化作用、減量、脂肪燃焼をうたうサプリメントなどは、異物混入が多いようである。

これまでの最大規模の研究の一つは、13カ国、215社、634製品を調査したもので、サンプルの14.8%にアナボリックアンドロゲンステロイドまたはステロイド誘導体が含まれていた。その後に行われた23件の研究を統合したレビューでは、全体的な汚染率が12~58%という結果が示されている。

一方、アスリートが意図せずに禁止物質を摂取してしまうことを不注意によるドーピングと呼ぶ。不注意なドーピングが最も生じやすいのはサプリメント摂取である。そのリスクを最小限に抑制するため、アスリートは自分が摂取する製品を慎重に判断することが重要である。

ラベル表示に関する懸念

サプリメントに関するもう一つの懸念材料は、ラベルの不当表示である。つまり、ラベルに記載されていない成分が含まれていたり、記載されている含有量を超過していたり過少であったりする場合がある。前者については、メーカーが意図的にそのようにすることのほか、製造工程の管理が不十分であり、複数の製品で製造ラインを共用している場合に、汚染物質が混入することもある。後者については、12種の製品を調査した研究では、実際の含有量がラベル表示の90~110%の範囲に収まっていた製品は1種類のみであったとする報告や、多成分サプリメントのカフェイン含有量はラベル表示の59~176%の範囲でばらついているといった報告がある。

ラベル表示関連の懸念として、メーカー独自のブレンド、つまり使用量の詳細を明らかにしていない成分の使用も指摘できる。多成分サプリメント100製品を調査したところ、44.3%に使用量を明示していない独自のブレンドが行われてたとの報告がある。このような場合、安全性の懸念が高まり、反対に有効性が失われることもある。

有害事象

サプリメント使用に伴う有害事象の大半は、吐き気、消化器症状、頭痛などであり、いずれも軽度であると考えられるが、なかには入院を要するようなケースもあり得る。それらの詳細を明らかにすることは本ナラティブレビューの範疇を超えている。前述のように、多成分サプリメントやタンパク質同化作用、減量、脂肪燃焼をうたうサプリメントは、より注意深い判断が必要だろう。

安全なサプリメント利用の実践

アスリートは、サプリメント利用の前に、自ら最善と考えられる方法を判断する必要がある。サプリメント以外の多くの市販製品の品質が必ずしもすべて等しいわけではないのと同様に、すべてのサプリメントが同じレベルの品質管理の下で製造されているわけではない。サプリメントの使用には常にある程度のリスクが伴うが、第三者検証プログラムによって厳格に評価された製品を選択することでリスクを軽減することはできる。さらにアスリートにとっては、アンチ・ドーピング機関の禁止物質リストを習慣的に検索していることが重要である。そのリストは毎年更新されている。

また、この領域のトレーニングを受け詳しい知識を持った専門家、例えばスポーツ栄養学を専門とする管理栄養士に相談することも重要だ。専門家は、個々の競技に有利と考えられるサプリメントはどのようなタイプか、作用機序が競技の生理学的要求に関連しているかどうか、個々のアスリートがそれを必要としている状態かどうか、および潜在的なデメリットの有無を判断可能である。

複数のサプリメントを併用する「ポリサプリメント」にも注意が必要とされる。これは医学の臨床における「ポリファーマシー」に相当するものといえ、ポリファーマシーでは予測困難な有害事象が発生したり、QOLを低下させたりすることのリスクが明らかであり、対策が行われるようになってきている。

サプリメントの場合も、例えばマルチビタミン、プレワークアウトサプリ、回復促進サプリ、エナジードリンク、ハーブサプリ、睡眠補助サプリなどには同一成分が重複して含まれていることがあり、それらを一つ一つの製品に示されている摂取目安量を遵守したとしても、すべてを摂取すれば数倍の用量を摂取することとなり、有害事象のリスクは上昇する。

文献情報

原題のタイトルは、「Prevalence of adulteration in dietary supplements and recommendations for safe supplement practices in sport」。〔Front Sports Act Living. 2023 Sep 29:5:1239121〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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