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東京2020・北京2022のオリパラ代表・代表候補日本人選手の食習慣・サプリメント使用状況の調査結果

オリンピック・パラリンピックの代表・代表候補日本人アスリートの食習慣サプリメント(以下:サプリ)使用の実態が報告された。サプリ利用者の半数は事前に医師や栄養士に相談せずに摂取していることなどが明らかにされている。日本スポーツ振興センター ハイパフォーマンススポーツセンター(以下:HPSC)の妙圎園香苗氏、亀井明子氏らの研究によるもので、「Frontiers in Sports and Active Living」に論文が掲載された。

東京2020・北京2022のオリパラ代表・代表候補日本人選手の食習慣・サプリメント使用状況の調査結果

日本人オリンピアン・パラリンピアンはサプリをどのように摂っているのか?

スポーツサプリメントの一部にはパフォーマンスを向上させるというエビデンスのあるものがある一方、ドーピング物質に汚染されたサプリの摂取によって意図せずドーピング違反と判定された事例も報告されており、健康に対して負の影響が生じる潜在的なリスクも存在する。このような状況に対して国際オリンピック委員会(International Olympic Committee;IOC)は2017年に、アスリートのサプリ使用は十分なリスク/ベネフィットの分析に基づいて判断すべきとするコンセンサスステートメントを公表している。しかし、エリートレベルのアスリートがサプリの使用に際して、このIOCステートメントの内容をどの程度考慮しているのかという実態は、これまでのところ調査されていない。

以上を背景として妙圎園氏らは、オリンピック・パラリンピックに参加した日本人アスリートを対象として、食習慣、サプリ利用の実態、およびサプリ利用に対する考え方を調査した。

東京2020、北京2022の代表・代表候補選手を対象に調査

この研究は、2020年の東京(実際は2021年)での夏季および2022年の北京での冬季のオリンピック・パラリンピックの代表・代表候補となったアスリート1,392人を対象に行われた。オリンピック代表・代表候補選手は、大会の1~5カ月前に国立スポーツ科学センターでメディカルチェックを受けており、その際、過去1年間の食習慣、サプリの利用状況等を調査した。パラリンピック代表・代表候補選手は、各競技団体の合宿所またはナショナルトレーニングセンターを含むHPSC利用時に、同様の食習慣、サプリの利用状況等を調査した。各大会における選手数と平均年齢・性別(女性の割合)は、東京オリンピック(T-O)が1,040人、26.4±5.1歳、49.2%、東京パラリンピック(T-P)が83人、36.1±9.7歳、24.1%、北京オリンピック(B-O)が239人、24.7±5.3歳、46.0%、北京パラリンピック(B-P)が30人、35.7±9.8歳、30.0%だった。

サプリ使用選手の多くは自己判断で使用を開始している

この調査は前述のように、アスリートの食習慣全般も調査されているが、ここではスポーツフードやサプリに関する質問の解析結果を中心に紹介する。

選手のうち4人に3人がサプリを使用

スポーツフード(ドリンク、ゼリー、ジェル、バーなど)を摂取している選手の割合は、T-Oが83.0%、T-Pは92.8%、B-Oは78.7%、B-Pは73.3%だった。一方、サプリ使用率は同順に、76.3%、74.7%、73.6%、56.7%であった。つまり、北京パラリンピックを除き、選手の4人に3人がサプリを使用していた。

使用しているサプリの成分としては、プロテイン(64.7~82.3%)、アミノ酸(63.1~85.5%)、ビタミン(29.4~43.2%)、ミネラル(17.7~30.6%)などが多く選択された。クレアチンは5.9~19.4%、カフェインは6.8~17.6%だった。

「過去に個別栄養サポートまたは栄養講習会への参加などにより、栄養サポートを受けた経験がある」との回答は、86.7~90.0%の範囲だった。また「アンチ・ドーピングに対する意識はあるか?」という質問に対しては、98.8~100.0%が「はい」と回答した。

サプリの使用目的

サプリの使用目的は、「リカバリー」が多く選択され(46.0~58.1%)、B-O以外では1位の理由として挙げられていた。B-Oの1位の理由は「パフォーマンスの向上」(47.2%)であり、「リカバリー」(46.0%)は2位だった。そのほかに、「食事で不足しているエネルギーや栄養素補給」(28.9~41.2%)、「増量(体重・骨格筋)、減量」(27.9~34.1%)などが多く選択された。

このような明確な目的をもってサプリを使用する選手が多い一方で、「もらえるから(メーカーの提供、試供品、カフェで配布されていたなど)」(最高値はB-Pの11.8%)、「スタッフ(コーチ、チームメイト、企業の担当者など)に勧められた」、「念のため」(いずれもT-Pで4.8%)といった受動的な使用理由も選択されていた。

サプリ使用をどのように判断したか

「サプリ使用前に医師または栄養士の評価を受けたか?」との質問に「はい」と回答した割合は27.4~38.6%だった。つまり、大半の選手が自己判断でサプリを使用している実態が示された。また、「サプリメントのパフォーマンスに関する科学的根拠を確認したか?」には56.5~63.6%が「はい」と答えるにとどまった。このほかにも、サプリメントの副作用や処方薬との相互作用のリスクなどを検討したとする割合は総じて高いとは言えない結果だった。

さらに、「世界アンチ・ドーピング機関(World Anti-Doping Agency;WADA)の禁止物質が含まれていないことを確認したか?」との質問に対して、B-P以外は90.3~95.2%のみが「はい」と回答し、ドーピングリスクを考慮せずにサプリ使用を判断している選手の存在が浮かび上がった。なお、B-Pは100%がこの質問に「はい」と回答していた。

アスリートに対する栄養教育の推進が必要とされる

この調査では、サプリを使用していない選手に対してその理由を質問している。それによると、最も多い回答は「必要ない」であり38.5~59.5%が選択。次いで、「ドーピング禁止物質の混入が心配」が多く選択され、B-Pでは100%、その他も37.7~52.4%の範囲だった。

これらの結果に基づき論文には、「すべての代表選手が食事やサプリメントに関する正しい知識を身につけ、サプリメント使用の必要性を自己責任で判断できるようにし、またドーピングリスクの回避のためにも、アスリートとサポートスタッフに対する栄養教育の推進が重要」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Investigation of supplement use and knowledge among Japanese elite athletes for the Tokyo 2020 Olympic/Paralympic games and the Beijing 2022 winter Olympic/Paralympic games」。〔Front Sports Act Living. 2023 Oct 18:5:1258542〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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