スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2023 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

タウリンの抗加齢、心血管リスク抑制における役割 文献レビュー

スポーツサプリメントやエナジードリンクの成分として広く知られているタウリンについて、加齢や心血管疾患リスクに対する有用性をまとめた、米国の研究者によるレビュー論文を紹介する。タウリンは、血圧調節や心血管の健康に有益な可能性があると総括されている。以下に要旨を抜粋する。

タウリンの抗加齢、心血管リスク抑制における役割 文献レビュー

イントロダクション

タウリンという名称は、ラテン語で雄牛を意味するタウルスから名付けられた。これは、1827年にドイツの科学者によって初めてウシの胆汁から単離されたことに由来する。実際には胆汁ばかりでなく、さまざまな動物の組織、とくに脳、心臓、骨格筋などにも、タンパク質を構成しないアミノ酸としてタウリンが存在しており、食品としては肉や魚、家禽、乳製品に含まれ、またエナジードリンクの成分として利用されている。

ヒトもタウリンをある程度合成できるが、最適なレベルを維持するには食事からの摂取が不可欠。ベジタリアンはタウリンの摂取量が不足している可能性があるが、それにより欠乏症が生じるかは不明。

タウリンは主に細胞内液に存在し、多くの生理学的プロセスにおいて重要な役割を果たしている。例えば脂質代謝と脂溶性ビタミンの吸収に必要とされ、また抗酸化特性を示し、神経保護と心血管の健康という点で潜在的なメリットを有すると考えられている。脳内に存在するタウリンが、神経伝達物質または神経調節物質として働き、認知プロセス、気分、行動、記憶、学習、および不安の制御に影響を与える可能性が報告されている。

タウリンと心血管の健康

タウリンと心臓機能

タウリンは心臓の遊離アミノ酸全体の約50%を占め、実験動物およびヒトにおいて、心臓の収縮性を高め心臓の機能を改善することが示されている。実際、日本では1985年にタウリンが心不全の治療薬として承認されている。

タウリンと血管機能

タウリンは一酸化窒素(NO)の生成を促し、血管内皮機能を改善することが示されている。内皮機能の改善は、血管の弾力性の改善、降圧、炎症の軽減、血流改善などを介して、心血管の健康につながり、イベントリスクを抑制する可能性がある。また、タウリンの抗酸化活性も酸化ストレスから血管を保護するように働くと考えられる。実験動物およびヒトにおいて、タウリン摂取が血圧の適度な低下につながる可能性のあることも報告されている。

ただし、内皮に対するタウリンの働きは未だ議論の余地がある。しかしながら最近、120人の2型糖尿病患者に1gのタウリンまたはプラセボを1日3回、8週間摂取するという無作為化比較試験の結果が報告され、タウリン群ではインスリン値およびインスリン抵抗性(HOMA-IR)が対プラセボで有意に低値となり、炎症や酸化ストレス、内皮機能のマーカーの改善も認められたという。また、メタ解析においても血圧低下作用が確認された。とは言え、臨床応用に向けて、適切なデザインでの研究と至適用量の確立が欠かせない。

タウリンと運動パフォーマンス

多くのエナジードリンクやスポーツサプリメントに、運動パフォーマンスを向上させるという目的のため、タウリンが含まれている。もっともそれらの製品の大半には、タウリンのみならずカフェインも含まれている。

複数の研究で、タウリンが運動パフォーマンスを向上させ、筋肉損傷を軽減し、運動誘発性酸化ストレスを軽減する可能性があることが示唆されており、アスリートの間で関心を集めている。ただし、矛盾する研究結果も存在すること、およびエナジードリンクの乱用の懸念があることなど、いくつかの注意点を提起する主張もみられる。

タウリンと老化

タウリンと長寿

タウリンのレベルは加齢とともに減少することが示されており、この減少をタウリンサプリメントで補うことで、加齢に伴う健康問題の発症が遅延する可能性が報告されている。マウスにタウリンサプリメントを投与すると、対照群と比較して寿命が約10%延長し、筋持久力と筋力が向上したとする報告もある。この研究での投与量は1日あたり15~30mgであり、体重80kgに換算すると3~6gであって、欧州食品安全機関(Europe Food Safety Authority;EFSA)の示す安全基準内である。また、タウリンはマウスの腸内細菌叢を整え腸の恒常性の回復にプラスの影響を与えることなども示されている。

タウリンとテロメア長、サーチュイン、幹細胞

テロメアの摩耗は細胞の増殖能力を低下と関連しているが、マウスのテロメア長と血漿タウリンレベルとの間に相関関係があることが報告されている。また、“長寿遺伝子”と呼ばれるサーチュインの発現は加齢とともに減少するが、タウリンがそれを抑制する可能性も示されている。さらに、さまざまなタイプの細胞に変化して指数関数的に増殖する能力を備えた幹細胞の減少は老化現象や疾患リスクを高めるが、タウリンは幹細胞の機能を高めるとするデータが増えてきている。

推奨摂取量と安全性

現時点でタウリンの食事摂取基準(dietary reference intake;DRI)は確立されていない。典型的な西洋人の食事には多くの人に必要とされる量のタウリンが含まれている可能性があるが、ベジタリアンなどでは摂取量が不足している可能性がある。典型的な食事からのタウリンの平均摂取量は、成人で1日あたり約40~400mg程度と推定される。タウリンを最も多く含む食品は海産物であり、海藻や貝類が含まれる。

サプリメントとしてのタウリンの推奨用量は、利用目的によって異なる場合がある。大半のタウリンサプリメントは1回あたり500~2,000mgの範囲だが、至適用量は年齢、体重、健康状態などのさまざまな要因によって異なると考えられ、また反応も人によって異なる可能性がある。

タウリンは一般的に安全であると考えられている。ただし、他のサプリメントと同様に、適量の摂取が重要であり、過剰に摂取すると、消化器症状(吐き気、嘔吐、下痢など)や神経症状(めまい、震え、頭痛など)といった潜在的な副作用が生じる可能性のあることが報告されている。また、降圧剤などとの相互作用も考えられる。

文献情報

原題のタイトルは、「Functional Role of Taurine in Aging and Cardiovascular Health: An Updated Overview」。〔Nutrients. 2023 Sep 30;15(19):4236〕
原文はこちら(MDPI)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2024前期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ