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国際スポーツ栄養学会(ISSN)、不可欠アミノ酸がパフォーマンスに与える影響についての見解を発表

国際スポーツ栄養学会(International Society of Sports Nutrition;ISSN)はさきごろ、「不可欠(必須)アミノ酸の摂取が運動とパフォーマンスに及ぼす影響」についてのポジションスタンド(見解)を「Journal of the International Society of Sports Nutrition(JISSN)」に掲載した。不可欠アミノ酸が筋タンパク質の合成と代謝回転を強力に刺激することなど、15項目にわたる見解がまとめられている。要旨を紹介する。

国際スポーツ栄養学会(ISSN)、不可欠アミノ酸がパフォーマンスに与える影響についての見解を発表

不可欠アミノ酸(EAA)はニーズに応じた無限の組み合わせが可能

国際スポーツ栄養学会(ISSN)のポジションスタンドは、「JISSN」誌の編集者と研究委員会が、JISSN読者が興味をとくに抱くと判断したトピックに関する招待論文。包括的な文献レビューに基づき執筆されたものを、JISSNの編集者と研究委員会が承認し発表される。今回は、不可欠(必須)アミノ酸(essential amino acid;EAA)のスポーツパフォーマンスへの影響に焦点が当てられた。

アミノ酸のうち、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリンという9種類は、内因的に生成することができず、生存のために摂取する必要があるため、“不可欠”アミノ酸と呼ばれる。このほかに、成長期や疾患罹患時などに生理学的ニーズを満たせないことのあるアミノ酸は「条件付き不可欠アミノ酸」とされている。

不可欠アミノ酸(EAA)をすべて摂取する必要性のあることのエビデンスは、過去100年にわたって十分に確立されてきた。EAAのうち1種類だけでも摂取量が不足すると、タンパク質合成障害などの欠乏症の症状が引き起こされる。すべてのEAAを消化しやすいかたちで豊富に含んでいるタンパク質は、「高品質」のタンパク質と呼ばれる。

高品質のタンパク質を必要量摂取することの重要性も、既に十分明らかになっている。ただし、最小必要量を上回る量を摂取した場合に得られるメリットについては、比較的最近になり認識されるようになってきた。それらのメリットの中で最も明らかなものは、とくに体タンパク質合成とタンパク質代謝回転を刺激することであり、それが筋肉量と筋肉の質の上昇をもたらし、身体的パフォーマンスの向上につながることが示されている。

また、EAAをサプリメントとして捉えた場合の特徴として、クレアチンなどの1種類の化合物のみからなるサプリではなく、生理学的要求に応じて9種類のEAAを組み合わせて利用でき、その組み合わせはほぼ無限にあることが挙げられる。

EAAが筋肉と体タンパク質に及ぼす影響、および、EAAと運動と機能

このポジションスタンドでは、食事摂取を通じてEAAの必要量を満たす個人における、9種類の遊離型EAAについて、作用機序(筋タンパク質代謝回転の重要性、筋タンパク質合成〈muscle protein synthesis;MPS〉の制御)、安全性、エネルギーバランスとの関連、運動負荷との相互作用、摂取タイミング、他の栄養素との相互作用、臨床での適用と転帰との関連といった項目を立てて詳細に解説されている。

要所要所に「重要なポイント」という箇条書きがまとめられており、その一部を抜粋する。

EAAが筋肉と体タンパク質に及ぼす影響

  • 骨格筋タンパク質合成(MPS)に対する経口EAAの用量反応は、約15~18gで頭打ちになる。
  • 血漿EAAレベルはMPSと関連する。
  • 経口EAAは、同量の高品質タンパク質よりもMPSをより大きく刺激する。
  • 加齢に伴う同化反応の低下には、異なるEAA、とくにロイシンの割合の高さが必要。
  • エネルギー不足によってEAA必要量が増加し、その要件が満たされない場合、必要なEAAを供給するために筋タンパク質の異化が生じる。

EAAと運動と機能

  • EAAと運動の同化作用は相乗的であり、両者を組み合わせた場合の反応は、個々の反応の合計よりも大きい。運動によって引き起こされる四肢の血流の増加は、骨格筋へのEAA輸送を増加させることによって、この反応に寄与する。
  • EAAと有酸素運動、その他の筋肉負荷の組み合わせも骨格筋の同化作用がある。
  • EAAを運動前に摂取すると、運動終了後に摂取した場合よりも高い同化作用が得られる。ただし、運動終了後1時間以内に同化作用が弱まる可能性がある。
  • 運動刺激がない場合も、加齢や臨床病理などの同化に対する抵抗性を有する集団におけるEAA投与は臨床転帰改善に有益であり、筋力と機能的パフォーマンスの回復に有効であることが示唆されている。

15項目からなる要約と結論

研究委員会によって承認されたポジションスタンドは、以下の15項目。

  1. 遊離型EAAサプリメントは、筋タンパク質の合成と代謝回転を強力に刺激する。
  2. EAAは、タンパク質から単離した窒素含有量が等しい食品よりも筋タンパク質の合成を刺激する。
  3. EAAを摂取後には末梢濃度が急速に上昇し、アミノ酸が骨格筋内に輸送される。
  4. EAAによる筋タンパク質合成刺激は、摂取が複数回であっても生じる可能性があり、食事摂取による効果を妨げない。
  5. 1種類のEAA、または複数のEAAの集合体がMPS刺激プロセスに関与している可能性がある。ただし、すべてのEAAが摂取された場合に、顕著で持続的な刺激が発生する。
  6. 安静時の筋タンパク質合成刺激は、EAA1.5~18gの範囲の用量で発生する。
  7. 同化抵抗性のある対象(加齢、臨床病理)で筋タンパク質合成を最大限に刺激するには、EAAに含まれるロイシンの割合がより高い必要がある。
  8. 同化抵抗性のある対象では、長期にわたるEAA摂取により機能的転帰が改善される。
  9. EAAと運動の効果は相互に作用するため、組み合わせた場合に効果はさらに大きくなる。この相互作用は、血流の増加と血中EAA濃度の上昇により、運動中の筋肉へのEAAの輸送が増加することによるもの。
  10. 同化反応は、EAA摂取と筋力運動または有酸素運動の組み合わせで一貫して報告されている。この効果は加齢にかかわらず維持される。
  11. 習慣的な遊離型EAAサプリメントの摂取は、毎日の安全な摂取量の上限内に十分収まる。
  12. EAA補給の有効性は、多くの症状に関する臨床研究で示されている。
  13. 高齢者集団におけるEAA補給に関する多数の縦断的研究では、代謝および機能的転帰において良好な改善が得られたことが一貫して報告されている。
  14. 意図的または非意図的にエネルギー制限がされているアスリートにおけるEAA摂取、筋タンパク質代謝の変化、およびそれに関連するパフォーマンス、および体組成の変化に及ぼす潜在的な影響を理解するには、さらなる研究が必要。
  15. アスリートが経験することのある急性傷害や外科的介入に続くリハビリテーション期間に続発する非活動期間でのEAA摂取の有用性の理解には、さらなる研究が必要。

文献情報

原題のタイトルは、「International Society of Sports Nutrition Position Stand: Effects of essential amino acid supplementation on exercise and performance」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2023 Dec;20(1):2263409〕
原文はこちら(Informa UK)

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