欧州・ブラジル最上位のサッカーチームを管理するスポーツ栄養士の7割がサプリメントの利用を支持
欧州とブラジルのサッカー最上位リーグのクラブで選手の栄養管理にあたっているスポーツ栄養士を対象に、サプリメントに対する考え方や実際に行っている指導について調査した結果が報告された。栄養士の7割は、選手がサプリを使うことに同意または強い同意を示した。また、栄養士個人のサプリ利用状況が、選手に対するサプリ使用の推奨と相関することも明らかにされている。
トップレベルのサッカー選手をサポートするスポーツ栄養士を対象にアンケート
サッカーは低強度運動と高強度運動が断続的に繰り返される負荷の強いスポーツであり、パフォーマンスの維持や怪我の防止のための栄養管理の必要性が高い。トップレベルのサッカー選手はサプリの利用率が高いとする報告もある。ただ、選手の栄養管理にあたるスポーツ栄養士のサプリに対する考え方や、実際に選手に対してどのような推奨や指導を行っているのかは明らかにされていない。今回取り上げる論文の著者らはこの点について、オンラインアンケートによる調査を行った。
なお、サプリメントの定義は複数存在するが、この研究では国際オリンピック委員会(IOC)のコンセンサスステートメントに即した定義(習慣的に摂取される食品に加えて、意図的に摂取される食品、食品成分、栄養素、または非食品化合物)を採用したと記されている。
欧州とブラジルの計7リーグのクラブ経由で回答を得た65人を対象に解析
この調査は、2022年11月から翌2023年2月に、オンライン匿名アンケートとして実施された。対象は欧州の6リーグ(イングランド・プレミアリーグ、スペイン・ラ・リーガ、イタリア・セリエA、ドイツ・ブンデスリーガ、フランス・リーグアン、ポルトガル・プリメイラリーガ)およびブラジル全国選手権セリAに属するサッカークラブの栄養士。研究者の個人的なネットワーク等を通じて各クラブに連絡をとり、クラブ経由でアンケートへの回答を依頼した。
アンケートの内容は、回答者個人の属性(年齢や栄養指導の経験年数、教育歴など)、サプリメントに対する認識・捉え方、サプリメントに関する推奨や指導等の実際という3点で、合計19項目の質問で構成されていた。回答は5段階のリッカートスコア(強い同意、同意、どちらでもない、非同意、強い非同意)で選択してもらった。
138人に対して回答協力依頼の連絡を行い、69人(50.0%)から回答を得られた。ただし、回答を得られた中の3人はクラブ側からの要請があり、解析から除外。ほかに1人の回答が不正確と判断され除外され、最終的に65人の回答を解析対象とした。
サプリが効果的とすることの同意率は53.8%、安全とすることへの同意率は23.1%
では、論文に示されている解析結果の一部を紹介していく。
対象者のおもな特徴
まず、解析対象者の特徴だが、年齢は34.7±5.6歳、サッカー選手への栄養指導歴6.0±9.3年、学位は学士未満が9.2%、学士26.2%、修士50.8%、博士13.8%、クラブとの契約はフルタイムが60.0%、パートタイムが32.3%、コンサルタントまたはアドバイザーが7.7%、選手との接触頻度は毎日が72.3%、週1回以上が26.2%、それ未満が1.5%だった。
サプリメントに対する認識・捉え方
次に、サプリメントへの関心の有無を問う質問に対しては、95.4%と大半が同意または強い同意(関心がある)を示した。自分自身がサプリメントについて知識があるとの回答も95.4%だった。サプリに関する十分なトレーニングを受けたか否かについては、肯定する回答が76.9%を占め、サプリに関する信頼できる情報にアクセスできると回答したのは87.7%だった。また、栄養士(nutritionists/dietitians)がサプリに関する権威とみなされるべきであるとする考え方に93.8%が肯定した。
サプリが効果的であるとすることの同意率は53.8%だった。一方で、サプリが安全であるとすることの同意率は23.1%にとどまった。サプリが有効と考える領域は、身体的・生理的なスポーツパフォーマンス(93.8%)、疲労回復(81.5%)、精神的および認知機能上のスポーツパフォーマンス(76.9%)などだった。
選手が求めるサプリ関連の情報源は誰であるべきかという質問に対しては、98.5%が栄養士を挙げ、医師(55.4%)、薬剤師(24.6%)、スポーツ科学者(24.6%)などが続いた。実際に選手が情報源としていると考えられるのは誰かを問うと、最多は栄養士の73.8%だったが、コーチ(67.7%)や友人・家族(53.8%)も多く挙げられた。
回答者自身がより詳しく知りたいと思うトピックは、スポーツパフォーマンスのためのサプリの使用(69.2%)、何らかの特定のサプリについて(53.8%)、信頼できる情報源について(30.8%)などが挙げられた。
サプリに関する推奨や指導等の実際
15.4%の栄養士は、サプリの販売にかかわっていた。ただし全員が企業との利益相反の存在を否定した。なお、サプリの販売経験の有無で二分した場合に、栄養指導の経験年数の有意差はなかった。また、栄養指導歴の長さ、および最終学歴は、選手に対するサプリの推奨の同意率と関連がなかった。
栄養士の個人的なサプリ使用について質問すると、58.8%が過去半年以内に1種類以上のサプリを摂取していた。サプリを個人的に使用している栄養士は、選手へのサプリの推奨への同意率が高いという有意な関連が認められた。ただし、個人的な使用と選手への販売経験の有無との関連は非有意だった。
サプリに関する情報源は、エビデンスデータベースや学術雑誌(93.8%)が多くを占め、そのほかに学術集会(58.5%)、専門機関のガイドライン(43.1%)が挙げられた。参考とする研究の種類については、システマティックレビュー(44.6%)、無作為化比較試験(36.9%)、メタ解析(7.7%)が挙げられた。
サッカー選手にサプリを推奨することに何らかの障壁があると感じている栄養士は26.2%にとどまっていたが、サプリ使用規制に関する懸念(50.8%)や潜在的な有害事象リスク(26.2%)があるとする回答も一定数認められた。サプリの有効性に関するエビデンスが十分ないとする認識は24.6%だった。
文献情報
原題のタイトルは、「Perspectives and practices of nutritionists on dietary supplements for elite soccer teams: a cross-sectional survey study」。〔Front Sports Act Living. 2023 Aug 11:5:1230969〕
原文はこちら(Frontiers Media)