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女性エリートアスリートの月経障害、避妊薬、怪我の実態をスイスのオリンピック委員会が調査

スイスのオリンピック委員会が、同国の女性エリートアスリートを対象に行った、月経障害の有病率や避妊薬の使用率、それらと怪我のリスクとの関連について調査した、アンケートの結果が報告された。同国トップレベルの女性アスリートは避妊薬をあまり使用していないこと、痩せていると有利と考えられやすい競技の選手では、月経不順や初経遅延が多いことなどが示されている。

女性エリートアスリートの月経障害、避妊薬、怪我の実態をスイスのオリンピック委員会が調査

400人以上のスイスの女性エリートアスリートが調査に協力

女性アスリートでは月経周期の乱れや無月経、初経発来の遅延などが多いことが知られている。競技により異なるものの、調査対象の最大61%が女性アスリートのトライアド(摂食障害、無月経、骨粗鬆症)の構成因子の二つ以上を有しているというデータも報告されている。これは、同年代の非アスリートの一般集団における有病率として報告されている3~4%に比較し極めて高い。ただ、論文著者によると、これらのデータは最新とは言えず、ものによっては20年前のものだという。そこで著者らは、このトピックに関する最新のデータを収集する目的で、以下のアンケート調査を行った。

調査回答アスリートの特徴

この調査は、スイスのオリンピック委員会によって行われた。2021年春に、107競技、1,092人の女性エリートアスリートに対して、電子メールのニュースレターの記事によってアンケート回答協力を呼び掛けた。アンケートの質問内容は、一般情報、怪我の既往、月経周期、尿失禁、避妊/妊娠、栄養など。408人(37.4%)が回答に協力した。

解析対象アスリートの年齢は、半数は23歳以下、30%が24~29歳、20%が30歳以上、トレーニング量は10~20時間/週が60%以上、10時間/週未満は10.8%、20時間/週以上は28.8%。

行っているスポーツは92競技に分布しており、個人競技のアスリートが70.4%で、団体競技は29.6%だった。また、痩せていることが有利とされることの多い競技(持久系、審美系、および体重別階級のあるもの)でない競技を行っているアスリートが56.6%を占めた。なお、この論文では痩せていることが有利とされることの多い競技を「lean sports」、そうでない競技を「non-lean sports」と定義していることから、本稿ではこれ以降、「lean sports」、「非lean sports」と表す。

ホルモン避妊薬/システムの使用は45.1%

回答者のうち45.1%はホルモン避妊薬/システムを使用していた。その内訳は経口避妊薬が57.5%、子宮内留置型システム(レボノルゲストレル)が32.0%、避妊リングが9.4%、避妊インプラントが1.1%など。一方、全体の54.9%はホルモン避妊薬/システムをまったく使用しないか、子宮内避妊器具などの非ホルモン避妊法を用いていた。

この結果をさらに、lean sportsと非lean sportsに分けて傾向の違いの有無を検討。すると、lean sportsのアスリートでは何らかの避妊薬の利用率が25.4%と有意に低かった(p=0.049)。

ホルモン避妊薬を使用しているアスリートにその理由を尋ねると、避妊薬を使用したいという願望(83.4%)、月経痛の軽減(36.5%)、競技会のスケジュールにあわせた周期管理(35.9%)、出血量の抑制(27.1%)などが挙げられた。

ホルモン避妊薬の使用がパフォーマンスに影響を与えるかどうかという質問には、43.6%が「わからない」、31.5%が「影響はない」であり、大半は明確な影響を感じていなかった。なお、肯定的な回答は14.4%であり、反対にパフォーマンスの悪化は2.8%のアスリートによって報告された。

原発性無月経の該当者率が11.3%

15歳までの初経発来のない原発性無月経が、11.3%のアスリートから報告された。Lean sportsと非lean sportsでその割合を比較すると、前者は14.0%、後者は9.2%であり、前者に多かったが有意差はなかった(p=0.149)。また、個人競技と団体競技での比較では、初経年齢に差はなかった。

BMI18.5未満の痩せに該当するアスリート(2.8%)とBMI18.5以上のアスリート(97.2%)との比較では、原発性無月経の該当者率に有意差はなかった(p=0.611)。ただしこれは、BMI18.5未満のサンプル数が少ないためと考えられた。そこで、対象全体のBMIの中央値である21.7で二分して比較すると、BMI21.7未満群における原発性無月経の該当者率は15.2%、BMI21.7以上群では7.4%であり、有意差が認められた(p=0.021)。

2割弱に稀発月経の既往、続発性無月経の既往は3割超

希発月経(1年の月経周期が9回未満)を経験したことのある割合は19.1%であり、続発性無月経(周期的な月経がみられていた状態から3カ月以上の無月経、または、月経周期が不規則な状態から6カ月以上の無月経)の経験は32.1%のアスリートにより報告された。さらに、5.4%のアスリートは本調査に回答した時点で、続発性無月経の状態にあった。

続発性無月経の既往があり、現在のトレーニング量が多いことは、怪我のリスク因子

過半数(57.1%)は過去1年以内に怪我をしていないと回答した。その一方、32.6%は少なくとも1回の怪我を報告し、さらに10.2%は受傷回数が2回以上だった。Lean sportsと非lean sportsでの比較で顕著な差はなかった。

次に、週あたりのトレーニング時間が21時間未満か以上か、および、続発性無月経の既往の有無によって、全体を4群に分類して比較。すると、続発性無月経の既往があり、かつトレーニング時間が21時間以上のアスリートは、過去1年以内に1回以上受傷していた割合が70.7%に上った。続発性無月経の既往があってもトレーニング時間が21時間未満の場合は、1回以上受傷していた割合が42.5%であり、有意に少なかった(p=0.004)。

一方、続発性無月経の既往のない2群での比較では、トレーニング時間の多寡による怪我のリスクは差がなかった(39.6 vs 38.8%、p=1.000)。まとめると、続発性無月経の既往があって、かつ現在のトレーニング量も多い場合に、怪我のリスクが上昇すると考えられた。

著者らは、「スイスのトップ女性アスリートのかなりの割合が避妊を行っておらず、この傾向はlean sportsアスリートでより顕著だった。また、初経の遅れや月経不順は、トレーニング量が多くBMIが21.7未満のアスリートによくみられた。これらの結果は、エリート女性アスリートに対する専門的な婦人科ケアの重要性を示している」と総括している。

文献情報

原題のタイトルは、「Contraception, female cycle disorders and injuries in Swiss female elite athletes—a cross sectional study」。〔Front Physiol. 2023 Jul 26:14:1232656〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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