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世界のパワーリフティング選手の食事摂取状況を調査 約300人のネットアンケート結果報告

世界各国のパワーリフティング選手の食事摂取状況をネットアンケートによって調査した結果が報告された。主要栄養素の摂取量を自分で判断した上で柔軟にアレンジする「IIFYM」と呼ばれる食事アプローチが比較的多くとられていること、ハードなトレーニングを行う日には摂取量を増やす一方、休息日に摂取量を減らすことはあまりなされていないことなどが明らかになった。

世界のパワーリフティング選手の食事摂取状況を調査 約300人のネットアンケート結果報告

パワーリフティングは三つの種目のほかに、体重、年齢などで細分化されている

パワーリフティングには、バックスクワット、ベンチプレス、デッドリフトという三つの種目があり、それぞれ性別、年齢、体重階級があって、そのほかに補助の有無、団体ごとのドーピング検査の有無などによって細分化される。ただし、どのカテゴリーであっても筋力の増大、あるいは競技会前の減量のために、栄養戦略が重要とされる。

パワーリフティング選手の栄養に関して、炭水化物4~7g/kg/日、タンパク質1.6~2.2g/kgという推奨(DOI: 10.1080/02640414.2011.574722)がみられるが、上述のようにパワーリフティングにはさまざまなカテゴリーがあり、さらに競技会参加を見据えたピリオダイゼーション(期分け)に基づくアレンジも重要とされる。今回紹介する論文の研究は、実際のパワーリフティング選手の食事摂取状況を詳細に調査し、ガイドラインの推奨との関連性を検討したもの。

ネットアンケート調査に世界各国の選手が回答

この調査は2020年11月~202年12月にかけて、インタネットアンケートとして実施された。アンケートは合計81項目の質問で構成されていて、回答選択肢次第で30~40問の質問となる。ソーシャルメディアを通じて世界各国のパワーリフティング選手に回答協力を呼びかけた。研究参加の適格条件として、18歳以上であること、薬物使用を禁止している公認競技会への出場経験があることなどが規定されていた。

385人がアンケートの回答を開始し、そのうち305人(79.8%)が回答を終了し解析対象とされた。内訳は、性別については男性が78.7%、居住地は米国が37.7%、カナダ9.5%、英国7.2%、ニュージーランド6.2%、その他39.3%。年齢については、半数近く(48.9%)は年齢制限のないカテゴリーで競技し、続いてジュニアが38.7%、サブジュニア6.2%、マスター6.2%だった。

日々の食事スタイルとピリオダイゼーション

3人に2人は日々の食事を計画的に摂取、ただし大半は参考情報なしで判断

全体として、参加者の66.6%(203人)が日常的に何らかの食事計画を遵守していると回答した。そのうち78.3%は、主要栄養素の摂取量を自分で判断した上で柔軟にアレンジする「IIFYM(If It Fits Your Macros)/flexible」というアプローチをとっていた。2番目に多い食事スタイルは高炭水化物食と高エネルギー食で、ともに21.2%ずつだった。

男性は女性よりも高エネルギー食後にトレーニングの質や筋肉の増大/回復が良いとする回答が有意に多かった。なお、何らかの食事計画を遵守していると回答した203人の食事・栄養に関する情報ソースは、79.9%と5人に4人は「特定のソースはない」と回答していた。

競技の準備段階に特別な食事スタイルとする選手は約4割

次に、ピリオダイゼーションとの観点から、競技会参加の準備段階に何らかの特別な食事スタイルとするか否かを質問すると、41.6%が「はい」と回答した。一方、競技期間中に何らかの特別な食事スタイルとする選手は35.7%、オフシーズンでは22.0%であり、より少なかった。ピリオダイゼーションに際して利用する食事・栄養に関する情報ソースは、準備期、競技期間、オフシーズンのいずれも、95%以上が「特定のソースはない」と回答していた。

ハードトレーニングと休息日の食事のアレンジと、そのための情報ソース

ハードトレーニングを行う日は7割超の選手が摂取量を増やす

次に、「ハードなトレーニングの日には、意図的により多くの食事やカロリーを摂取するか?」という質問に対しては、219人(71.8%)が「はい」と回答し、これは前述した、日常的に何らかの食事スタイルを遵守している割合(66.6%)を上回っていた。

また、この質問に「はい」と回答した219人のうち、食事・栄養に関する情報ソースが「特定のソースはない」と回答したのは27.9%と3割弱にとどまり、ここまでに紹介した質問の回答で8~9割以上が「特定のソースはない」と回答していたのと大きな違いが認められた。参考にしている情報源として最も多いものは「(メディアなどを)読んだ/見た」であり46.1%を占め、次いでコーチが33.3%、スポーツ栄養士が21.4%だった。

なお、情報源としてコーチを選択した選手は、男性より女性のほうが有意に多かった。また、前記のほかに栄養士という回答も6.8%存在しており、そのように答えた選手は競技成績がより高い選手に多かった(IPF〈国際パワーリフティング連盟〉のポイント80点以上/未満で有意差あり)。

一方、ハードトレーニングを行う日には摂取エネルギー量を増やす選手が約7割であったのに対して、休息日に摂取エネルギー量を減らす選手は4割未満(39.0%)にとどまり、過半数はふだんと同じように食事を摂っていると考えられた。

文献情報

原題のタイトルは、「The general nutrition practices of competitive powerlifters vary by competitive calibre and sex, weight, and age class」。〔Eur J Nutr. 2023 Aug 16〕
原文はこちら(Springer Nature)

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