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食事・栄養指導に反発するアスリートへの介入方法と介入の有効性を考察 系統的レビュー

アスリートの食習慣に対して強い影響力のある介入方法は何か、および、実際に食習慣に影響を及ぼしている因子は何かを、システマティックレビューに基づいて考察した論文を紹介する。広く行われていた介入方法は栄養教育であること、食習慣に影響を与える因子として、知識や体組成、空腹感・食欲などが特定されたという。

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アスリートはなぜ食事・栄養素摂取に関する推奨に従わないのか?

アスリートにとって適切な食習慣が、体組成、パフォーマンス、回復などに対する有利な影響力をもっていることは広く知られている。例えば炭水化物は持久力に、タンパク質は筋量や筋力と強い関連があり、それらを適量かつ最適なタイミングで摂取することが、競技成績の向上や怪我のリスク抑制、健康の維持、選手生命の短縮抑止などにつながる。そのため競技連盟や学術団体などが、アスリートの食事・栄養素摂取に関する種々の推奨事項を策定してきている。

ところが、それらの推奨事項がアスリートによってあまり遵守されていない実態が報告されることが少なくない。ただ、なぜアスリートに対する推奨の遵守率が高くないのかという理由も、十分明らかになっているとは言えない。

このような状況を背景として、この論文の著者らは、アスリートの食習慣の変更のためにどのような介入が行われているのか、アスリートの食習慣は何によって規定されているのかを、これまでの研究報告を対象とするシステマティックレビューに基づいて明らかにすることを試みた。

文献検索の手法

PRISMAガイドラインに即して、MEDLINE、CINAHL、SPORTDiscus、Web of Scienceという文献データベースを用い、2022年5月18日に文献検索を実施。検索キーワードは、食事/摂取量、摂食行動、栄養知識、スポーツ、空腹感」食欲、体組成、体重管理、ボディーイメージ、体重、修正可能因子、アスリートなどとした。

包括基準は、研究対象が競技会に参加しているアスリート、または1週間に最低2~5時間はトレーニングを行っているレクリエーションアスリート、および現役の軍人であり、英語でジャーナルに掲載された論文。未成年(18歳未満)を対象とする研究は、発育に必要とされる栄養素などの成人とは異なる考慮すべき事項があるため、対象から除外した。また、退役後の軍人を対象とする研究も除外した。

一次検索で1万6,954報がヒットし、重複削除後の1万3,636報を2人の研究者がタイトルと要約に基づき独立してスクリーニングを実施。採否の試験の不一致は3人目の研究者の判断によって解決した。残った163報を全文精査の対象として、最終的に24報、24件の研究報告を適格と判断した。

特定された研究報告の特徴

24件の研究は9カ国で実施されていた。その内訳は、米国10件、英国3件、日本、オーストラリア、マレーシアが各2件で、その他はギリシャ、イラン、フランス、ブラジルなどが各1件。

研究参加者数は合計844人で、男性53.8%であり、11件は男性のみ、6件は女性のみを対象としていた(他に性別の情報が示されていない報告が2報)。平均年齢は18.69±0.88~30±7.6歳の範囲に分布していた。

アスリートが行っている競技/カテゴリーは、持久系アスリートが2件、大学アスリート10件、筋力トレーニング5件、団体競技2件などであり、脊髄損傷や下肢切断などのパラアスリート対象研究1件も含まれていた。競技やカテゴリーに関する情報が欠落している報告が3報存在した。

介入の効果を栄養知識の変化で確認し、かつ実際に食習慣変化の確認が必要

特定された研究報告で行われていた介入方法として、最も多く用いられていたのは栄養教育であり10件、次いで主要栄養素摂取量の調整介入(macronutrient adjustment intervention)が7件、身体活動が5件、認知理論に基づく介入が2件であり、その他には減量、全身冷却療法などが行われていた。

一方、介入効果の評価項目としては、栄養知識が12件、空腹感・食欲が8件、体組成4件、主要栄養素摂取量の対総摂取エネルギー比2件、自己効力感2件であり、その他にボディーイメージ、ストレス・不安などで評価されていた。

介入の有効性

栄養教育介入を用いた10件の研究のうち8件で、食事摂取量に対するプラスの影響が確認され、総摂取エネルギー量に占める脂質の割合が有意に低下し、推奨値に近づいていた。また、野菜や果物の摂取量の増加、菓子類の減少も報告されていた。

アスリートの栄養に関する知識は、すべての研究で介入後に有意に上昇していた。一部の研究では、身体組成にも有意な変化があることが報告されており、体脂肪量/率の低下、除脂肪体重の増加が認められた。中腕の周径長の有意な増加を報告した研究もそんざいしたが、この評価項目については一貫性が十分でなかった。

栄養教育介入はまたボディーイメージのスコアにも有意なプラスの影響を与えたことが報告されていた。ただし、介入を行わない対照群との比較という研究デザインでのエビデンスは限られていた。

食習慣に影響を及ぼす因子

アスリートの食習慣に対して実際的に最も強い影響を与えていると考えられる因子は、栄養に関する知識、空腹感と食欲、および体組成という3因子だった。

全体として、アスリートの食習慣に対する介入としては栄養教育を中心として複数の手法が試みられていて、その約半数は食事摂取量の改善につながったことが報告されていた。換言すると、理論的には食習慣に影響を与え得るとの根拠に基づき提案されている介入を行っても、約半数は食習慣に有意な変化が生じていなかった。

著者らは、本研究でレビューの対象とした論文は1992年以降に発表されたもので、一部はやや古い研究だったことから、経時的な変化を勘案した研究が必要かもしれないとしている。また、今後の栄養介入に関する研究は、栄養知識の向上を通じて、実際に食事摂取量に変化が現れることに焦点を当てる必要があると述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「A systematic review of interventions targeting modifiable factors that impact dietary intake in athletes」。〔Br J Nutr. 2023 Aug 10:1-19〕
原文はこちら(Cambridge University Press)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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