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スポーツで使う視力と栄養素摂取量に有意な関連、炭水化物・ルテイン・ビタミンB2などに可能性

スポーツパフォーマンスに影響を及ぼす可能性のある視機能と、日常の摂取栄養素との間に、有意な関連がみつかった。炭水化物、ルテイン/ゼアキサンチン、ビタミンB2の摂取量が多い場合にスポーツに有利な視機能が高く、反対にタンパク質摂取量が多い場合は視機能が低いという。

スポーツで使う視力と栄養素摂取量に優位な関連 炭水化物・ルテイン・ビタミンB2などに可能性

競技成績に重要な視機能を栄養で高めることは可能か?

アスリートがパフォーマンスを高めるための戦略として、古くから筋骨格系と心血管系のトレーニングが行われてきている。しかし、競技成績には感覚・認知機能も関与していることを示唆する報告が増えており、いくつかの特定のスポーツでは視機能の重要性が指摘されている。

視機能は、感覚器としての眼と、眼から伝えられる情報を処理する視覚認知能力によって支えられており、その両者が良好なほど視機能が高く、スポーツパフォーマンスにとって有利と考えられる。一方、筋骨格系や心血管系のパフォーマンスの維持・向上に、栄養が重要であることは広く認識されており、スポーツ栄養学の研究が精力的に行われている。しかし、スポーツにおける視機能の重要性の認識は高まっているものの、それを栄養によって向上させることを意図した研究はまだ少ない。

他方、脳での情報処理にかかわる認知機能については、比較的多くの研究がなされるようになってきた。これまでに、単純糖質は認知機能を低下させる可能性があり、反対に繊維含有量の多い複合糖質は認知機能を高める可能性などが報告されている。またタンパク質に関しては、不足と過剰の双方が認知機能低下と関連があるとの報告がある。その他、ビタミンB群、ビタミンC、βカロテン、亜鉛、銅、コリン、ω3脂肪酸などに関する報告がみられる。また、ルテイン/ゼアキサンチンは、酸化ストレスと炎症の抑制や青色光のフィルタリング作用を介して網膜保護的に働き、視機能にプラスの影響を与えるとされている。

今回紹介する研究では、これらの知見に基づき、スポーツに必要とされる視機能と栄養素摂取量との関連を検討している。テキサス大学の研究者による報告。

約100人を15日にわたって追跡し、栄養と視機能の関連を解析

研究参加者は、テキサス大学内のメールシステムなどを通じて募集された、18~33歳の109人。除外条件として、BMI18未満、色覚異常、3Dディスプレーの視認が困難な人、ペースメーカー利用などが設定されていた。

研究期間は15日間で、そのうち10日、参加者は研究室を訪れ、視覚認知能力テストを受けるとともに、前日に摂取した飲食物の種類と量を報告。また、睡眠時間・質、血圧、心拍数、尿比色など認知機能と関連し得るパラメーターが測定された。

視覚認知能力テストの手法は、3Dディスプレー上に動き続ける複数の球体が表示され、その中の一つだけ色が異なるものをできるだけ速く認識して視線で追尾するというもの。制限時間内にこれが成功した場合は、球体の数が増えて動くスピードが速くなり、失敗した場合は動くスピードが遅くなる。

解析対象者の特徴

109人の参加者のうち、少なくとも9日以上のデータを把握できた98人(男性38人、女性60人)を解析対象とした。性別にみた場合、平均年齢は21~22歳で有意差はなく、睡眠時間はともに6.8時間、スタンフォード眠気尺度もともに2.3だった。BMIは男性が25.3、女性は22.5だった(p<0.001)。

体重あたりの摂取エネルギー量、炭水化物摂取量、および脂肪エネルギー比率は性別による有意差がなかったが、タンパク質摂取量は男性が1.5±0.6g/kg/日、女性は1.3±0.4g/kg/日で男性のほうが多かった(p=0.036)。微量栄養素関連では、亜鉛とコリンの摂取量が男性で有意に多く、その他の栄養素摂取量の差は有意水準未満だった。

視覚認知能力テストの結果は、ベースライン時および研究終了時ともに男性のほうが優れていた。研究期間中に男性・女性ともにテスト成績が有意に向上し、その変化量には性別による有意差がなかった。

炭水化物の摂取量は視覚認知能力と正の関連、タンパク質は負の関連

では、栄養素摂取量と視覚認知能力テストの結果との関連をみていこう。

炭水化物エネルギー比率の多寡での比較

炭水化物エネルギー比率が40%未満の26人と、以上の71人に二分すると、ベースラインから研究期間を通じて、ほぼ一貫して後者のほうが視覚認知能力テストのスコアが高かった。反復測定分散分析の結果、統計学的有意差が認められた(p=0.038)。

タンパク質エネルギー比率の多寡での比較

タンパク質エネルギー比率が24%未満の78人と、26%以上の18人に二分すると、ベースラインから研究期間を通じ一貫して、前者のほうが視覚認知能力テストのスコアが高かった(p=0.009)。

ルテイン/ゼアキサンチン摂取量の多寡での比較

ルテイン/ゼアキサンチンの摂取量が、2,000μg/日未満の75人と、以上の24人に二分すると、ベースラインから研究期間を通じて、ほぼ一貫して後者のほうが視覚認知能力テストのスコアが高かった。平均スコア(p=0.004)、最高スコア(p=0.031)ともに有意差が認められた。

ビタミンB2摂取量の多寡での比較

ビタミンB2の摂取量が、1.8mg/日未満の76人と、以上の23人に二分すると、ベースラインから研究期間を通じて、ほぼ一貫して後者のほうが視覚認知能力テストのスコアが高かった。平均スコア(p=0.017)、最高スコア(p=0.029)ともに有意差が認められた。

成績上位者と下位者での栄養素摂取量の比較

次に、視覚認知能力テストのスコア上位者(男性と女性各7人)と、下位者(同各8人)の栄養素摂取量を比較。すると、成績上位群は炭水化物エネルギー比率が高く(49.6±6.0 vs 43.0±10.5%、p=0.047)、反対にタンパク質摂取量は少なかった(1.53±0.39 vs 1.99±0.71g/kg/日、p=0.048)。

年齢、性別、タンパク質・ビタミンB2摂取量は独立した関連因子

多変量線形回帰モデルによる検討から、視覚認知能力テストのスコアに独立した関連のある因子として、年齢、性別、タンパク質摂取量、ビタミンB摂取量が抽出された。

年齢については、最高スコア(β=-2.177、p=0.033)と負の関連があり、高齢であるほど視覚認知能力の最高スコアが低かった。ただし、平均スコアについては、高齢であるほど低値であるものの、独立した関連は示されなかった(β=-1.652、p=0.103)。

性別については男性より女性において、平均スコア(β=-4.073、p<0.001)および最高スコア(β=-4.062、p<0.001)ともに低値だった。

タンパク質エネルギー比率については、平均スコア(β=-3.457、p=0.001)および最高スコア(β=-3.600、p=0.001)ともに負の関連があり、タンパク質エネルギー比率が高いほど視覚認知能力が低かった。反対にビタミンB2摂取量については、平均スコア(β=2.451、p=0.017)および最高スコア(β=2.728、p=0.008)ともに正の関連があり、ビタミンB2摂取量が多いほど視覚認知能力が高かった。

まとめると、炭水化物、ルテイン/ゼアキサンチン、ビタミンB2の摂取量は視覚認知能力のスコアと正の関連があり、タンパク質摂取量および女性の性別は負の関連があった。

文献情報

原題のタイトルは、「The impact of nutrition on visual cognitive performance in the nutrition, vision, and cognition in sport study」。〔Front Nutr. 2023 Jun 23;10:1208890〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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