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アスリートの「植物性サプリ」の理解度を競技レベル別に比較、「植物製剤」と混同しているケースも発覚

アスリートの「植物性サプリメント」に対する認識や情報源を調査した結果がアイルランドから報告された。エリートアスリートに比べると、アマチュアアスリートは信頼性の低い情報源に依存しており、栄養補助食品である植物性サプリと「植物製剤」を区別せずに利用することなどによって生じる、潜在的なリスクにさらされているのではないかという。

アスリートの「植物性サプリ」の認識や情報源を競技レベル別に比較 「植物製剤」との混同も

植物性栄養補助食品、西洋ハーブ、植物製剤とは

「植物性の栄養補助食品(botanical food supplement;BFS)」と聞くと、自然食品であって体によいサプリメントがイメージされやすいが、欧米では「植物製剤(botanical preparations)」との違いがそれほど明確に認識されることなく、「植物性栄養補助食品(BFS)」という言葉が使われたり、単に「ハーブ」として、まとめて語られる傾向があるという。

植物製剤としては、例えば日本では漢方薬として流通している医薬品のようなものも該当するようだ。当然のことながら、医薬品であればサプリよりも有効性が高いことが多く、その反面、副作用や他の薬剤との相互作用が生じたり、処方薬も含めてのポリファーマシーとなるリスクが高くなる。さらに、アスリートの場合は「意図しないドーピング違反」、いわゆる“うっかりドーピング”を犯してしまう危険性が上昇する。

これまでに、アスリートのサプリ利用状況を調査した研究は少なからず行われてきているが、今回紹介する論文の著者によると、このような点に留意をしたうえで行った調査の報告は少ないという。これを背景として、この研究ではアスリートの「栄養補助食品(food supplement;FS)」と「植物性栄養補助食品(BFS)」の利用状況、およびそれらの利用に際しての情報源などが調査された。

なお、論文のイントロダクションによると、欧州6カ国で行われた調査から、人口の18%がBFSを利用しており、50歳以上で高学歴の女性に利用者が多いという。また、欧州連合(EU)および英国においては、植物製剤を除くBFSは医薬品のような規制を受けずに流通しているとのことだ。

サプリ利用状況の一部に、エリート/アマチュアの違いが存在

この調査は、2021年12月~2022年5月にかけて、アイルランド島に居住するアスリートを対象にオンライン調査として実施された。回答のための適格基準は、18歳以上でエリートまたはアマチュアと自認するアスリートであり、ソーシャルメディアや研究者の人脈を通じて回答を呼びかけた。質問項目は31項目あり、回答所要時間は選択肢により10~20分の範囲だった。

6割が何らかのサプリを利用

有効回答者数は217人であり、そのうち55人(25.3%)が主に国際試合で戦っているエリートレベルのアスリートであり、他の162人は国内、地域レベルで競技を行っているアマチュアアスリートだった。行っている競技は、陸上/トライアスロンの23.0%、ゲーリックゲームズ(アイルランド島の伝統スポーツ)の29.0%などが多かった。

6割(59.4%)にあたる129人が、何らかのサプリを利用していた。エリートにおけるサプリ利用率は60.0%、アマチュアは59.3%だった。このサプリ利用率は、性別や年齢層による有意な差がなかった。

BFS利用者は大半がアマチュアアスリート

利用されている栄養補助食品(FS)を利用率が高いものから挙げると、プロテイン(エリートは約22%、アマチュアは約18%)、ビタミンD(同順に約14%、約16%)、クレアチン(14%、12%)、ビタミンC(12%、14%)、ω3脂肪酸(8%、9%)、コラーゲン(6%、2%)、鉄(4%、4%)、アミノ酸(4%、2%)、プロバイオティクス(2%、1%)などだった。

栄養補助食品(FS)の利用率
エリートアマチュア
プロテイン約22%約18%
ビタミンD約14%約16%
クレアチン14%12%
ビタミンC12%14%
ω3脂肪酸8%9%
コラーゲン6%2%
4%4%
アミノ酸4%2%
プロバイオティクス2%1%

続いて、植物性栄養補助食品(BFS)に着目すると、全体の16%(アマチュア32人、エリート2人)によって利用されていた。利用率が高いものから挙げると、ターメリック/クルクミン(14%)、アシュワガンダ(10%)、ビート根抽出物(8%)などが多く、このほかに、イワベンケイ、カンナビジオールが各6%、および、リンゴ酢、ブラックマカ、バレリアン、エキナセア、植物性プロテインが各4%だった。

植物性栄養補助食品(BFS)の利用率
ターメリック/クルクミン14%
アシュワガンダ10%
ビート根抽出物8%
イワベンケイ6%
カンナビジオール6%
リンゴ酢4%
ブラックマカ4%
バレリアン4%
エキナセア4%
植物性プロテイン4%

植物性栄養補助食品(BFS)に関する情報源

植物性栄養補助食品(BFS)に関する情報源は、管理栄養士/栄養士が最も多く(エリート75%、アマチュア69%)、次いでスポーツの同僚(同順に44%、51%)、インターネット(38%、43%)だった。また、アマチュアアスリートは、コーチや友人、家族との回答がエリートアスリートより多かった。

なお、BFSを利用する前に誰かに相談する場合は、誰に相談するかという質問の回答も、管理栄養士/栄養士がトップだった(60%、51%)。

BFS利用に関連する潜在的リスクの認識

植物性栄養補助食品(BFS)の利用に関連する潜在的なリスクについて、エリートアスリートからは、「ドーピング検査で陽性反応が現れる可能性」が69%と最も多く挙げられた。一方、アマチュアアスリートでドーピングの懸念を挙げたのは41%であり、最も多かったのは「他の薬剤/サプリメントとの相互作用・副作用」だった(47%)。

アマチュアアスリートの46%が有害事象を報告した。それに対してエリートアスリートでのその割合は27%だった。一方、「BFSの使用に伴うリスクがあるとは思わない」との回答は、エリートが18%、アマチュアが17%であり、同等だった。

このほか、「BFSは規制されていないため、有効成分の含有量やドーピング物質の存在が不明」という懸念がエリートアスリートから、「BFSの利用により食事を抜くという良くない習慣が生じかねない」という懸念がアマチュアアスリートから挙げられた。

アスリートと一般対象への栄養教育が求められる

以上の結果をもとに、論文の結論には以下のように述べられている。

「アイルランド島のアスリートにおける植物性栄養補助食品(BFS)の利用は比較的少ないと言えるが、一般消費者が自分の健康を管理するために“自然な”健康食品を求める傾向の高まりとともに、今後はその使用量がより増加する可能性はある。本研究から、アマチュアアスリートはエリートアスリートと比較して、信頼性の低い情報源から情報を入手する可能性が高いことが示された。ドーピング検査の対象となり得るアマチュア選手では、潜在的な意図しないドーピングのリスクに悪影響を及ぼすのではないか。ドーピング違反を含むリスクを最小限に抑えつつ、競技アスリートがサプリメントから最大のメリットを得られるようにするために、広範な対象への栄養教育介入が有用と考えられる」。

文献情報

原題のタイトルは、「Athletes Perceived Level of Risk Associated with Botanical Food Supplement Use and Their Sources of Information」。〔Int J Environ Res Public Health. 2023 Jun 28;20(13):6244〕
原文はこちら(MDPI)

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