スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2023 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

調理技術が高いと社会的つながりが2倍に 近所づきあいや社会参加などを介して絆が強まる

2023年08月23日

調理技術が高いと社会的つながりが2倍になるというデータが報告された。近所づきあいや社会参加、サポート授受など、さまざまな社会的つながりが増えるという。東京医科歯科大学国際健康推進医学分野の谷友香子氏らが、日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study;JAGES)のデータを解析した結果であり、論文が「International Journal of Environmental Research and Public Health」に掲載されるとともに、JAGESのサイトにプレスリリースが掲載された。

調理技術が高いと社会的つながりが2倍に 近所づきあいや社会参加などを介して絆が強まる

研究の概要:「食」を通じて人との「絆」が深まる可能性

社会的孤立がさまざまな健康リスクにつながることから、社会的つながりは重要。しかし、社会的つながりを醸成する要因はわかっていない。地域行事での食事提供やお裾分けなど、私たちの周りは「食」を通じた社会活動にあふれている。そのため、調理技術が社会的つながりの醸成に役立っている可能性がある。そこで、本研究では、日本人の高齢者男性9,551名、女性11,510名を対象として、調理技術と社会的つながりとの関係性を調べた。

その結果、調理技術が高いと、協力しあう近所づきあいの形成が男女とも約2倍、頻繁な友人との食事が女性で2倍、会う友人の数が女性で1.4人/月、男性で0.6人/月多い、社会参加数が男女とも0.2個多い、友人/近隣からのサポート授受が男女とも0.2~0.3個多い、という結果が得られ、調理技術が社会的つながりの形成につながる可能性が示された。

研究の背景:社会的つながりを醸成する因子は何?

ソーシャル・キャピタルなどの社会的なつながりが健康に重要であることが明らかとなってきた。しかし、社会的なつながりを醸成するためには何が重要なのかはわかっていない。

一方、人々は普段から社会的交流の一環として、お裾分けや食物の贈り合いをしている。また、地域の祭りや季節の行事などの社会活動は、多様な食事提供を伴い、食事準備能力は地域での活動に欠かせない。そのため、高い調理技術を持っていることは、近隣や友人との社会的つながりの形成に役立つことが考えられる。

そこで本研究では、日本人の高齢者を対象として、調理技術と社会的つながりとの関係性を調べた。

対象と方法:約2万人の高齢者を対象に研究

研究対象は、2016年に実施したJAGES調査に参加した、要介護認定を受けていない65歳以上の高齢男性9,551名、女性11,510名。調理技術は、7項目の質問の平均点を調理技術スコアとし、スコア4.0超を高調理技術群、2.1~4.0を中調理技術群、2.0以下を低調理技術群と定義した。

社会的つながりは、近所づきあい、友人との頻繁な食事、友人と会う頻度、会う友人の数、社会参加数(ボランティア、スポーツ関係のグループやクラブ、趣味関係のグループ、学習・教養サークル、特技や経験を他者に伝える活動)、社会的結束、友人/近隣からのサポート授受を評価した。

結果:調理技術が「高」の人は、社会とのつながりが多い

男女とも調理技術が高いと、強い社会的つながりを持っていた。

例えば、高い調理技術を持つ人は低レベルの調理技術を持つ人と比較して、協力しあう近所づきあいとなる可能性が約2倍高いという結果だった(図左:男性1.84倍〈95%CI;1.46~2.33〉、女性2.27倍〈同1.77~2.91〉)。また、調理技術が高いと、調理技術が低い人に比べてボランティアなどへの社会参加数が男女とも多いことがわかった(図右)。

加えて、社会的つながりは男性に比べて女性のほうが高く、この男女差の4分の1は調理技術が女性のほうが高いことによって説明されることがわかった。

(出典:谷友香子(東京医科歯科大学)調理技術が高いと社会的つながり2倍. JAGES Press Release No: 380-23-12)

結論と本研究の意義

以上より、高い調理技術を持つことは、近所づきあいや友人との関わり、さらに社会参加といった社会的つながりの形成を促し、高齢者の社会的孤立を防ぐ鍵となり得ることが示唆された。

高齢になると、退職、子どもの独立、配偶者や友人の死別などにより、社会的つながりが減少する可能性がある。社会的に孤立した高齢者は、死亡率、認知症、メンタルヘルス不良など、さまざまな健康リスクが高まることがわかっている。著者らは、「本研究によって高齢者の社会的つながりを促進し得る要因として調理技術が見いだされたことは、社会的意義が大きいと考えられる」と述べている。

プレスリリース

谷友香子氏(東京医科歯科大学)調理技術が高いと社会的つながり2倍.JAGES Press Release No: 380-23-12

文献情報

原題のタイトルは、「Associations of Cooking Skill with Social Relationships and Social Capital among Older Men and Women in Japan: Results from the JAGES」。〔Int J Environ Res Public Health. 2023 Mar 6;20(5):4633〕
原文はこちら(MDPI)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2024前期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ