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牛乳に歯周病予防の効果? 韓国国民健康栄養調査のデータ解析で、男性では有意な関連

牛乳の摂取と歯周病リスクとの間に、有意な関連があるとする研究結果が報告された。韓国の国民健康栄養調査のデータを解析したもので、交絡因子を調整後も、男性では牛乳の摂取量と重度歯周病の有病率とが逆相関するという。

牛乳に歯周病予防の効果? 韓国国民健康栄養調査のデータ解析で、男性では有意な関連

牛乳は歯や歯肉にもよい?

牛乳を含む乳製品が身体的な健康に対してさまざまなプラスの作用を有していることが知られている。さらに、口腔内の健康に対する牛乳摂取の影響も既に研究報告がある。例えば、毎日牛乳を飲まない集団のう蝕発生のオッズ比は1.69で有意であこと、牛乳やヨーグルトを習慣的に摂取していると口腔内の細菌が減少しエナメル質表面の状態が良好であることなどが示されている。また、週に4日以上牛乳を飲む人は、う蝕のオッズ比が有意に低いというデータもある。ただ、う蝕とともに歯を失うことになる主要な原因である歯周病については、牛乳摂取との関連が明らかでない。

韓国の国民健康栄養調査(KNHANES)のデータを用いた解析

今回紹介する論文の研究は、韓国の国民健康栄養調査(Korea National Health and Nutrition Examination Survey;KNHANES)の2016~2018データを分析するという手法で実施された。解析対象はデータ欠落のない1万8,034人(男性7,835人、女性1万199人)。KNHANESの調査項目は、日本の国民健康栄養調査と歯科疾患実態調査をあわせたような構成で、う蝕や歯周病についても調査されている。

歯周病については残存歯数が2本以上ある場合に調査された。重症度の評価指標(community periodontal index;CPI)のスコアが0は正常、1は歯肉出血、2は歯石あり、3は中等度の歯周炎または深さ3.5〜5.5mmの歯周ポケット、4は重度の歯周炎または深さ5.5mm以上の歯周ポケットと判定され、この研究では4以上の場合を「重度の歯周病」と定義している。

また、オーラルケア関連では、歯みがきの頻度、デンタルフロス、マウスウォッシュ、電動歯ブラシ、歯間ブラシの利用状況、自己申告による口腔内の健康状態、および定期歯科健診を受けているか否かなども調査されている。

男性の1割強、女性の6%弱に重度歯周病

では結論だが、論文ではまず、重度の歯周病のある人ない人を、男性・女性それぞれで比較している。男性では10.7%、女性では5.7%が、重度歯周病ありだった。

男性も女性も、年齢、腹囲長、収縮期血圧、空腹時血糖値、糖尿病・高血圧・メタボリックシンドロームの有病率はすべて、重度の歯周病のある群のほうが有意に高値だった。反対に、習慣的な運動の頻度は、男性・女性ともに重度の歯周病がない群のほうが有意に高かった(週当たりの運動の頻度が男性は、重度歯周病なし群3.2±0.0 vs あり群3.0部±0.1〈p=0.0009〉,女性は同順に2.9±0.0 vs 2.7±0.1〈p=0.0003〉)。

交絡因子調整後も牛乳摂取量の多い男性には重度歯周病が少ない

牛乳の摂取頻度と重度歯周病との関係

牛乳の摂取頻度は、男性は全体の81.3%が週に4回以下の低頻度、18.6%が週に5回以上の高頻度と二分された。低頻度群では72.3%が重度歯周病なし、9.3%が重度歯周病あり、率比は0.13。これに対して高頻度群では同順に17.3%、1.3%、率比0.08であり、高頻度群では重度歯周病が有意に少なかった(p=0.0014)。

一方、女性では全体の76.6%が週に4回以下の低頻度、23.2%が週に5回以上の高頻度と二分された。低頻度群では72.2%が重度歯周病なし、4.6%が重度歯周病あり、率比は0.06。これに対して高頻度群では同順に22.1%、1.1%、率比0.05であり、牛乳摂取頻度による群間差が非有意だった(p=0.078)。

結果に影響を及ぼし得る交絡因子(年齢、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、教育歴、収入、居住地域、糖尿病・高血圧・メタボリックシンドロームの既往、白血球数、歯磨きの頻度)を調整した多変量ロジスティック解析では、男性・女性ともに牛乳摂取頻度は重度歯周病との独立した関連が認められなかった。

牛乳の摂取量と重度歯周病との関係

続いて、牛乳摂取量との関連が検討された。

牛乳の摂取量は、男性は全体の29.2%が月に1カップ以下と少量、70.9%が週に5回以上の多量と二分された。低量群では24.3%が重度歯周病なし、4.9%が重度歯周病あり、率比は0.20。これに対して多量群では同順に65.1%、5.8%、率比0.09であり、多量群では重度歯周病が有意に少なかった(p<0.0001)。

また女性では全体の32.0%が月に1カップ以下と少量、68.0%が週に5回以上の多量と二分された。低量群では29.6%が重度歯周病なし、2.4%が重度歯周病あり、率比は0.08。これに対して多量群では同順に64.7%、3.3%、率比0.05であり、多量群では重度歯周病が有意に少なかった(p=0.0003)。

結果に影響を及ぼし得る前記の交絡因子を調整した多変量ロジスティック解析では、男性は牛乳摂取量が多いことが重度歯周病の有病率が低いことと独立した関連が認められた(OR0.705〈95%CI;0.538~0.924〉、p=0.011)。女性は交絡因子の調整により、関連が非有意となった。

男性はリスク指標になり得る

このほかに、摂取している牛乳が全乳か低脂肪乳かに二分した検討も行われたが、結果は上記の全体解析と同様だった。

著者らは、「牛乳の摂取量が、男性の重度歯周病の潜在的なリスク指標であることが明らかになった」と結論づけている。また、既報文献からの考察として、牛乳が歯周病リスクを抑制するメカニズムを、抗炎症作用が口腔の線維芽細胞や上皮細胞に対して保護的に働くこと、牛乳には粘膜恒常性に寄与するトランスフォーミング増殖因子(transforming growth factor beta;TGF-β)が豊富に含まれていること、カゼイン、カルシウム、ラクトースがアルカリフォスファターゼを誘導しリポ多糖の脱リン酸化による解毒にかかわることなどが考えられると述べられている。

なお、研究の限界点としては、横断研究であるため因果関係は不明なこと、牛乳摂取量をカップ数で評価していて正確性に欠けることなどか挙げられるとしている。

文献情報

原題のタイトルは、「Evaluation of the Association between Amount and Type of Milk Consumption and Periodontitis: Data from the Korea National Health and Nutrition Examination Survey (2016–2018)」。〔Nutrients. 2023 Feb 11;15(4):914〕
原文はこちら(MDPI)

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