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タンパク質は3食均等が理想だが夕食に偏りがち NCAAサッカー選手の調査結果

タンパク質の摂取量を気にしているアスリートは少なくないが、摂取量の24時間での分布まで配慮しているアスリートは多くないことを示すデータが報告された。NCAAディビジョン1のサッカー選手を対象とする調査で、夕食のタンパク質量は推奨値を満たしている選手が多いものの、朝食でのその割合は1割程度、昼食でも約半数だったという。

タンパク質は3食均等が理想だが夕食に偏りがち NCAAサッカー選手の調査結果

タンパク質を3食均等に摂取したほうが、筋タンパク質合成にとって有利

アスリートの体組成とパフォーマンスの最適化のためのタンパク質摂取量については現在、1.2~2.0g/kg/日の範囲とするというコンセンサスが形成されている。さらにサッカー選手については、2006年に国際サッカー連盟(FIFA)のコンセンサスレポートに、普遍的とは言えないものの1.2~1.6g/kg/日という数値が示され、欧州サッカー連盟(UEFA)から委託された専門家グループは1.6~2.2g/kg/日という数値を示している。

このような1日あたりの摂取量の確保に加えて、筋タンパク質合成(muscle protein synthesis;MPS)の最大化には、1日複数回の食事にわたって均等にタンパク質を摂取することが重視されている。とくに、MPS応答の強力なドライバーと考えられているアミノ酸であるロイシンが重要な可能性があり、1日あたりロイシン2gに相当するタンパク質より少ない摂取量ではMPS反応が弱まると考えられる。ただし、より多く摂取した場合にMPSがさらに増大することはなく、過剰なアミノ酸はエネルギー源となる。UEFAの専門家グループは、1日3〜4回の食事全体で~2.5gのロイシンを含むタンパク質を、1回の食事機会に~0.4g/kg摂取し、かつ睡眠前に0.4~0.5g/kgのタンパク質の摂取を推奨している。

一方、これまでのところ、アスリートのタンパク質摂取量に関連する多くの研究は、1日あたりの摂取量に着目しており、24時間での分布まではあまり検討されていない。これを背景として今回紹介する論文の著者らは、大学サッカー選手のタンパク質摂取量の時間的分布を性別に検討した。

NCAAディビジョン1のサッカー選手も理想的と言えない摂取パターン

解析対象は、全米大学体育協会(NCAA)のディビジョン1に所属している36人のサッカー選手(男性13人、女性23人)。男性・女性ともに年齢の平均は19歳、BMIは22台だった。タンパク質摂取量や摂取エネルギー量は、3日間(平日2日、休日1日)の食事記録から推計した。

昼食と夕食の体重換算摂取量は女性が有意に少ない

その結果、1日の摂取エネルギー量は、男性が2,714±529kcal、女性は1,907±447kcal、タンパク質は同順に2.08±0.51g/kg、1.38±0.35g/kgだった。朝・昼・夕食の3食に分けると以下のとおりであり、朝食の体重換算タンパク質摂取量は性別による有意差はなかったが、昼食と夕食はいずれも女性のほうが有意に少なかった。

朝食は男性が0.33±0.23g/kg、女性は0.26±0.11g/kg。昼食は同順に0.60±0.39g/kg、0.38±0.16g/kg。夕食は0.71±0.26g/kg、0.49±0.16g/kg。

食事によるタンパク質摂取が8割で、その多くは夕食

次に、前記のUEFAの推奨の毎食0.4g/kgという値を満たしている割合を検討。すると、夕食は推奨量を満たしている選手が比較的多かったが、朝食は男女合計で1割強、女性では1割足らず、昼食は男性で半数強、女性は半数弱だった。詳細は以下のとおり。

朝食にタンパク質0.4g/kg以上摂取している割合は男性15.4%、女性8.7%、全体で11.1%、昼食では同順に53.8%、43.5%、47.2%。夕食は84.6%、73.9%、77.8%。なお、食事によってタンパク質摂取量1日1.6g/kgを満たしている割合は、男性77.0%、女性35.0%、全体で50.0%だった。

スナック(補食・間食)も加えてタンパク質摂取量の分布をみると、男性も女性も約8割強を食事から摂取し、約2割をスナックから得ていた。詳細は以下のとおり。

男性は朝食が16.0%、昼食が27.9%、夕食が35.5%、スナックが20.6%、女性は同順に19.2%、28.0%、35.4%、17.4%。全体では18.0%、28.0%、35.4%、18.6%。

女性選手が摂取しているタンパク質にはロイシンが少ない

続いて、全米医学アカデミーのアミノ酸スコアリングパターンに示されている、タンパク質1gあたりロイシン55mg以上という値に基づき、摂取しているタンパク質の質を検討。すると、男性が摂取しているタンパク質にはこの目安に対して82.82±30.46%と、比較的高い割合のロイシンが含まれていた。一方、女性が摂取しているタンパク質は52.2±20.86%であり、有意にロイシン含有量が少なかった(p=0.005)。

とくに朝食時にはプロテインサプリを摂ることも考慮すべきか

著者によると、アスリートの食事ごとのタンパク質摂取量が推奨を満たしているか否かを検討した研究は過去にほとんどないという。本研究から明らかになったこととしては、「男性アスリートは、食事性タンパク質の摂取量、時間的分布パターン、品質に関して、女性アスリートに比較し、わずかに有利な習慣のようだ。それにもかかわらず、男性アスリートも女性アスリートも、UEFAの委託を受けた専門家委員会によるサッカー特有の栄養ガイドラインから著しく逸脱したタンパク質摂取パターンを示した。注目すべき点は、学生アスリートの高い割合が朝食でMPSに必要な閾値を満たしておらず、続く昼食と夕食でも満たしていない割合が高いということである」と述べている。

加えて、「重要なことに、これらの結果は、かなりの学生アスリートが筋骨格系の回復と適応が最適ではなく、パフォーマンスを損なうリスクにさらされている可能性があることを浮き彫りにしている」とまとめ、「食品第一のアプローチが好まれるものの、一部のアスリートには、とくに朝食時にプロテインサプリメントが推奨される場合がある」と提言している。

文献情報

原題のタイトルは、「Protein Intake in NCAA Division 1 Soccer Players: Assessment of Daily Amounts, Distribution Patterns, and Leucine Levels as a Quality Indicator」。〔Sports (Basel). 2023 Feb 14;11(2):45〕
原文はこちら(MDPI)

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