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第20回国際スポーツ栄養学会(ISSN)の発表演題ダイジェスト

今回は、国際スポーツ栄養学会(International Society of Sports Nutrition;ISSN)の第20回大会(2023年6月15日〜17日、米国フォート ローダーデール)の抄録集から、いくつかの研究発表をピックアップして紹介する。

第20回国際スポーツ栄養学会(ISSN)の発表演題ダイジェスト

プロ野球選手のポジションによる体組成の違い

原題:Body Composition Differences by Position in Professional Baseball Players

アマチュア野球選手の体組成については複数の報告があるが、プロ野球選手の体組成はほとんどわかっていないことから、米国プロ野球選手178人の体組成を評価。22.3±3.1歳、184.8±6.7cmで、ポジションは内野60人、外野23人、投手95人。

内野と外野の比較では、体重は有意差がないが体脂肪率は内野で高く(14.6±4.8 vs 11.6±4.2%、p=0.033)、除脂肪量は外野で高かった(73.9±7.5 vs 78.3±7.0kg、p=0.037)。内野と投手の比較では、体脂肪率は有意差がないが体重(86.7±9.7 vs 94.9±9.6)と除脂肪量(73.9±7.58 vs 80.3±7.00kg)は投手で高かった(いずれもp<0.001)。外野と投手の比較では、除脂肪量は有意差がないが体脂肪率(11.6±4.2 vs 15.1±4.9、p=0.005)と体重(88.9±10.4 vs 94.9±9.6、p=0.028)は投手で高かった。

NCAAディビジョンI男子サッカー選手の体組成と安静時代謝率へのスポーツ栄養教育介入効果

原題:The Effects of a Sports Nutrition Education Intervention on Body Composition and Resting Metabolic Rate in NCAA Division I Men’s Soccer Players

大学生アスリートはスポーツ栄養学の知識が乏しく、摂取量が不足傾向にあることが報告されている。そこで、NCAAディビジョンIの男子サッカー選手16人を対象に、8週間(隔週で4回)の対面式スポーツ栄養セッションにて、主要栄養素、微量栄養素、水分補給、サプリメントを中心とする教育介入を実施し、その影響を検討した。

介入後の1シーズン終了時点で、体重(介入前71.9±7.9 vs介入後73.0±9.2kg、p=0.003)と体脂肪率(8.4±2.5 vs 10.1 ± 2.6、p=0.001)が有意に増加し、安静時代謝量(resting metabolic rate;RMR)は有意に減少した(2,031 ± 224 vs 1,923 ± 231kcal/日、p=0.049)。

発表者らは、介入前の栄養素摂取量が不十分であったことが示されたとまとめている。なお、ネルソンの式によるRMRの推算値と空気置換プレチスモグラフィーでの測定値に有意な乖離(p<0.001)が認められ、推算値は低値となったことから、可能であれば機器を用いて測定することの必要性が強調されている。

スポーツ栄養教育がアスリートの知識、食習慣、パフォーマンスに及ぼす影響

原題:The Effects of a Nutrition Education Program on Athletes’ Nutritional Knowledge, Eating Habits, and Performance

200人のアスリートを介入群(151人、30.1±5.7歳)と対照群(47人、31.9±5.8歳)に分け、介入群には3回の栄養教育講義と個別相談を含む4カ月の栄養カウンセリングを実施し、10カ月後にも同様の手法による介入を繰り返した。

介入群の栄養知識スコアは31.1%有意に向上した(p<0.001)。両群ともに塩分摂取量が減少したが、介入群の減少幅のほうが大きかった(-24.6 vs -13%、p<0.001)。また介入群では食品の栄養成分表示を読む割合が34.9%増加するとともに、栄養カウンセリングのニーズも51.2%増加、かつ栄養情報を管理栄養士から得た割合が64.1%増加した(いずれもp<0.001)。

体脂肪率は介入群で率比5.4%低下した一方(p=0.009)、対照群では14.4%増加していた。パフォーマンス指標は介入群で有酸素性最大速度が2.6%、VO2maxが最大2mL/kg/分増加した(いずれもp<0.001)。

カフェイン入り/なしサプリの空腹感と血行動態に及ぼす急性効果の違い

原題:The acute effects of a commercially available caffeinated and caffeine-free thermogenic dietary supplement on hunger and hemodynamic variables

カフェインは体脂肪減少目的でも使用されるサプリだが、カフェインによる中枢神経系刺激作用を回避するために、カフェイン抜きのサプリも流通している。25人の男女(23±4歳、BMI26±5)を対象に、プラセボを含む3条件の盲検化されたクロスオーバー試験が実施された。ひと晩の絶食と運動禁止後に、カフェイン入り脂肪減少サプリ、カフェインなし脂肪減少サプリ、またはプラセボを各200mgのいずれかを摂取してもらい、180分後まで血圧や心拍数、空腹感などを評価。

カフェイン入り条件では他の2条件に比較して、摂取120分後と180分後に収縮期血圧が有意に高く、拡張期血圧は60分後の時点で有意に高かった。カフェイン抜き条件ではすべての時点でプラセボと血圧の有意差がなかった。一方、心拍数は180分時点でプラセボ条件よりカフェイン抜き条件のほうが低値だった。カフェイン入り条件は他の2条件と有意差がなかった。

空腹感については、60分時点でカフェイン抜き条件において、他の2条件より有意に抑制されていた、その他の条件間ではすべての時点で有意差がなかった。この結果から発表者らは、「ノンカフェインのサプリメントは中枢神経系を刺激せず、空腹感を軽減することで減量補助として機能する可能性がある」と述べている。

男性では終末糖化産物(AGE)と心肺機能との間に負の相関が存在

原題:The Correlation Between Advanced Glycation End Products and Cardiorespiratory Fitness

終末糖化産物(advanced glycation end-products;AGE)は体内でリポタンパクに結合する糖であり、超加工食品の摂取などによって増加する。このAGEのレベルと心肺機能(cardiorespiratory fitness;CRF)によって、心血管疾患(cardiovascular disease;CVD)のリスクを評価できるとされている。ただし、AGEとCRFとの関連はあまり検討されていない。

18歳以上の白人一般成人40人を対象に、皮膚での非侵襲測定器で測定したAGEレベルとクーパーテストで評価したCRFの関連を検討。全体解析では両者間に有意な関連は示されなかった(r=-0.224、p=0.164)。ただし性別に解析した場合、男性では有意な相関が認められた(r=-0.457、p=0.043)。女性では非有意となった理由について発表者らは、女性は最大有酸素運動が行われなかった可能性があると考察している。また、今後はAGEレベルに関与する食習慣の検討が必要であることも付け加えている。

ISSNの推奨とNCAAディビジョンII女子バレーボール選手の食生活の比較

原題:Diets of Female DII Collegiate Volleyball Players as Viewed Through the Lens of ISSN Position Stands

米国内の異なる二つの大学に所属する、18歳以上で現役のNCAAビジョンIIの女子バレーボール選手16人の食生活と、国際スポーツ栄養学会(ISSN)のポジションスタンドとが比較された。食生活の把握には、米国農務省(USDA)のアプリを用いて5日間評価した。

摂取エネルギー量は1,922.18±792.7kcal、脂質は77.58±33.12g、炭水化物218.42±117.26g、タンパク質68.24g±26.01g。これをISSN推奨と比べると、脂質は推奨値83.33g(2,500kcalの30%)をわずかに下回り、炭水化物は5~12g/kgという推奨範囲内、タンパク質は0.8g/kg/体重を下回る。

このほか、100%のアスリートが、エナジードリンクやカフェイン入り飲料を1日に複数回摂取し、50%がビタミンを補給していることもわかった。

血中多価不飽和脂肪酸レベルに対する、EPA、DHA、EPA+DHA摂取の影響

原題:The Differential Effects of EPA, DHA, or EPA + DHA Supplementation on Whole Blood Polyunsaturated Fatty Acids

魚油サプリの摂取は血液中のω3脂肪酸レベルを高めるが、摂取するω3脂肪酸の種類によって、全血中のそれらの濃度に異なる影響が生じるのかは不明。23人の男性を無作為に、各4g/日のEPA群8人、DHA群7人、EPA+DHA群8に分け、7週間介入して全血での濃度の変化を検討した。

介入前後の変化をみると、オメガ3指数(OM3I)とEPA濃度は全群で上昇していた(p<0.001)。また、DHA群とEPA+DHA群ではDHA濃度が有意に上昇し(ともにp<0.001)、EPA群では有意な変化がなかった(p=0.640)。EPA群(p<0.001)とEPA+DHA群(p=0.022)ではDPA濃度が上昇した。アラキドン酸は、EPA群(p=0.022)とDHA群(p=0.005)で低下した。

次に介入後の値を比較すると、EPA濃度はDHA群よりEPA群が高く(p=0.001)、DHA濃度はDHA群とEPA+DHA群がEPA群より高かった(ともにp<0.001)。ドコサペンタエン酸オメガ-3(DPA)濃度は、DHA群やEPA+DHA群に比べてEPA群のほうが高かった(両者に対してp<0.001)。OM3I、α-リノレン酸、アラキドン酸、リノール酸については有意な群間差が観察されなかった。

発表者らは、「7週間の介入で全血値に異なる反応が認められた。特定のω3脂肪酸を摂取することにより、個々のプレコンディショニング(例えば、フットボールやラグビーなどの頭部に衝撃を受けやすいアスリート)の目的にそった介入が可能ではないか」と述べている。

徐放性カフェインカプセルの開発

原題:Development of a Sustained Release Caffeine: Optimizing Encapsulation Level for Slow Release

カフェインは、世界で最も広く入手可能かつ実際に消費されている刺激物質であり、身体的・精神的パフォーマンスの双方を向上させる。その一方、動悸、不安、頭痛、睡眠の質の低下などのマイナスの副作用もある。カフェインを除法化することで、これらの副作用を抑制しメリットを長時間発揮させられる可能性がある。

カプセル化基材を使用して、コーティングレベルが低、中、高という3段階のカフェイン含有カプセルを作成し、カプセル化されていないカフェインを対照として比較検討した。37±0.5℃の条件で溶解開始から8時間後まで、放出されるカフェイン量の推移を測定。対照と比較して、すべてのカプセル化されたカフェインで放出が有意に延長された。

コーティングレベルが高いほど放出が遅延することもわかった。具体的には、30分後時点で低コーティングは74.0±1.67%のカフェインが放出され、中コーティングでは50.7±2.05%、高コーティングでは30.7±1.67%だった。なお、カプセル化されていないカフェインは98.3±1.67%だった。

低コーティングは2時間後に97.1±1.67%が放出されたが、中および高コーティングは8時間時点で同順に90.6±2.05%、83.7±1.67%だった。発表者らは本研究により除法化は可能であることが確認されたことから、今後はこれがパフォーマンスにも影響を及ぼし得るかが焦点となると述べている。

重量挙げ選手のタンパク質必要量や自分の摂取量の認識、および実際の摂取量の性差

原題:Sex Differences in Perceived Protein Needs, Perceived Protein Intake, and Actual Protein Intake in Collegiate Olympic Weightlifters

オリンピックスタイルの大学重量挙げ選手を対象として、自分に必要なタンパク質摂取量と、自分のタンパク質摂取量の認識、および実際の摂取量に性差があるか検討された。対象は、男性8人(19.8±0.7歳、172.1±5.0cm、83.1±17.1kg、体脂肪率20.3±5.1%)、女性12人(20.5±1.9歳、163.9±5.1cm、75.7±13.9kg、32.4±5.7%)。

男性選手では、180±48g/日のタンパク質が自分に必要と認識されており、自分の摂取量は200±61g/日と考えられていて、両者に有意差はなかった(p=0.672)。また実際の摂取量は212±58g/日で、必要と考えている量との比較でも有意差がなかった(p=0.313)。

一方、女性選手は自分のタンパク質の必要量を135±43g/日と認識しているにもかかわらず、自分が摂取している量は106±46g/日だと考え、有意に少なかった(p=0.004)。実際の摂取量は107±56g/日であって、本人が摂取していると考えている量と一致していた(p=0.380)。

男性は全員、実際のタンパク質相対摂取量(2.47±0.9g/kg/日)がISSNの推奨以上であり、かつ女性(1.47±0.9g/kg/日)より有意に多かった(p=0.007)。12人の女性選手のうち5人が推奨の最小閾値である1.4g/kg/日未満だった。

右手の薬指が長い大学女子サッカー選手はVO2maxが高い

原題:Examining Limb Asymmetry and Digit Ratios in Collegiate Female Soccer Players

両側の非対称性はサッカー選手の筋肉損傷につながる可能性がある。一方、人差し指(2D)と薬指(4D)の長さの比率(2D:4D)が低い(薬指が相対的に長い)ことは、出生前テストステロン曝露による潜在的なスポーツ能力の高さを示しているといわれ、少年サッカー選手では、2D:4D比がVO2maxを予測するとの報告もある。これらの知見を背景に、大学女子サッカー選手30人の利き手と利き手でない手の双方の2D:4D比、VO2max、皮下脂肪、四肢と体幹の周囲長、骨の直径などとの関連が検討された。

右手の2D:4DとVO2maxの間に有意な負の相関が観察された(rs=-0.426、p=0.021)。右手の2D:4Dとその他の評価指標、および左手の2D:4Dと各評価指標との関連は非有意だった。結論は、「大学女子サッカー選手には左右非対称性は観察されなかった。興味深いことに、右手の2D:4DとVO2maxとの間に相関が見い出され、これは出生前性ホルモン曝露と運動能力との潜在的な関係を示している」とまとめられている。

クレアチン摂取で消防士の一部の能力が向上する

原題:Creatine Supplementation Improves Forcible Entry Performance in Career Firefighters.

クレアチン摂取により身体パフォーマンスと作業能力が向上することが知られておりアスリートに多用されているが、消火活動に携わる消防士の能力のサポートにも有用な可能性が、二重盲検比較試験の結果として報告された。

研究対象は29人の消防士(34.4±8.2歳、1.82±0.07m、88.8±12.3kg、体脂肪率17.5±5.9%)。2群に分けて全員にホエイプロテインと炭水化物サプリ各25gを摂取してもらったうえで、1群にはクレアチン5g、他の1群にはそのプラセボを支給し、ベースラインとその18~24日後に消火活動に関するパフォーマンステスト(ホースラインの前進、救助活動、強制侵入など)を行った。介入期間中の消火活動の勤務は通常どおりに継続した。

解析の結果、両群ともに有意な時間効果が認められ、かつ指標によって異なる有意な群間差が認められた。救助に要する時間はプラセボ群のほうが有意に優れていた(p=0.017)。それに対して強制侵入はクレアチン群のほうが有意に優れていた(p=0.01)。発表者らは、「消防士のふだんの食事にタンパク質と炭水化物を追加するという3週間の介入で、職業上のパフォーマンスが向上するようだ。さらにクレアチンの上乗せによって、ハイパワーを必要とする強制侵入に要する時間が有意に短縮された」とまとめている。

10週間のジロイシン摂取で下半身の筋力が向上

原題:Effects of 10 Weeks of Dileucine Supplementation on Athletic Performance

アミノ酸、とくに必須アミノ酸の摂取が筋タンパク質合成速度の変化に影響を与えることが知られており、なかでもロイシンの重要性が明らかになっている。また、ロイシンと似た構造ながら側鎖の配置が異なり代謝も異なるジロイシンは、循環ロイシンレベルを増加させ筋タンパク質合成の最大化をサポートすることが、動物実験で示されている。この作用がヒトにも当てはまるかが検討された。

レジスタンストレーニングを行っている32人の男性(28.4±6.0歳、BMI25.7±3.9、体脂肪率19.0±5.7%)を、ジロイシン群、ロイシン群、プラセボ群(難消化性デンプン)の3群に群分けし、各2gを10週間摂取してもらった。介入期間中、70~85%1RMの強度で6~10回のレジスタンストレーニングを3~4セット、週4日継続するよう指示した。

3群ともに有意な時間効果が認められた。さらに、ジロイシン群ではプラセボ群に比較して下半身の最大筋力が有意に向上し、またロイシン群に比較してレッグプレスの回数が増加する傾向にあった。ロイシン群はプラセボ群と有意差がなかった。

文献情報

原題のタイトルは、「Proceedings of the Twentieth International Society of Sports Nutrition (ISSN) Conference and Expo」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2023 Aug;20(sup2):2235311〕
原文はこちら(Informa UK)

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