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サッカーの審判員も栄養摂取、体組成、運動能力が有意に関連 栄養介入の必要性が示される

サッカーの審判の栄養素摂取量と体組成、運動パフォーマンスとの間に、有意な関連があるとする研究結果が報告された。また、審判の中で栄養に関する教育を受けた経験があるのは3割にとどまること、ふだん利用している栄養に関する情報源はテレビとインターネットが7割を占めることなども明らかになった。著者らは、サッカーの審判員に対しても、栄養士による介入が必要だと述べている。

サッカーの審判員も栄養摂取、体組成、運動能力が有意に関連 栄養介入の必要性が示される

サッカー審判は選手より高齢ながら、選手と同等の運動が求められる

サッカーの審判員には高いレベルの運動パフォーマンスが要求される。報告によると、サッカー審判員の試合中の走行距離は1万~1万3,000mに達する。よって審判員は、アスリートとみなされることが多い。また審判員は審判としての知識に加えて、コミュニケーションスキルと適切な感情コントロールのスキルかが求められる。

アスリートと同様に、審判のパフォーマンスは身体トレーニング、食行動、体組成などによって規定され、また食行動や食事の質は体組成に影響を与える。審判としてのパフォーマンスを維持し向上させるために高品質の食事を摂取し、最適な体組成を保つことが推奨される。しかし、サッカー審判員の食行動を調査した研究は多くない。数は少ないながらも、審判員の炭水化物や微量栄養素の摂取量が推奨レベルを下回っていることが報告されている。ただ、体組成や運動パフォーマンスとを関連づけた報告はみられない。

審判はアスリートと変わらない運動量が要求され、かつ、年齢は平均15歳程度高齢であるため、審判の栄養関連の知識の評価や教育介入も重要と考えられる。

サッカー審判員の食生活と栄養素摂取量、体組成

この研究の参加者は、トルコのサッカー連盟に登録されているアンカラ在住の審判員250人から、無作為に抽出された男性審判員120人。何らかの特別な食事療法を行っている人や試合参加が少ない人は除外されている。アンケートにより栄養素摂取量を把握するとともに、体組成の測定、および、スプリントテスト(5、10、30m)と12分間のクーパーテストにて、運動パフォーマンスを評価した。

食習慣や栄養の情報源:栄養士の関与は2割足らず

研究参加者は、69人(57.5%)が都市対抗レベルの試合、51人(42.5%)はより上位での試合(class soccer)で審判を務めていた。平均年齢は26.1±4.51歳で、経験年数は都市レベルが4.51±3.73年、クラスレベルが7.00±3.42年であり、後者のほうが有意に長かった。

教育過程で栄養教育を履修した審査員は、30.0%(都市レベル26.1%、クラスレベル35.3%)であった。ふだんの栄養に関する情報源は、テレビとインターネットが68.3%と7割近くを占め、次いで栄養士が19.2%と2割弱、その他は友人や医師だった。

食事を欠食する習慣のある割合は、59.2%(同順に71.0、43.1%)であり、昼食のスキップが最多で31.7%、朝食が21.7%、夕食が5.8%だった。

栄養素摂取量:多くの栄養素が推奨摂取量未満

栄養素摂取量については審判レベルによる有意差はなかった。ただし、平均値が推奨摂取量(recommended dietary allowance;RDA)に満たない栄養素が多く認められた。主な栄養素の摂取量は以下のとおり。

摂取エネルギー量は2,244.34±734.19kcalであり、推奨摂取量(RDA)に対して94.06±27.50%であって、RDAの3分の2未満(<67%)を摂取不足と定義すると、29.2%がこれに該当した。

炭水化物は3.51±1.38g/kg、タンパク質は1.23±0.49g/kg、脂質は1.27±0.57g/kgであり、食物繊維は25.22±9.68gで不足者が28.3%。不足者の割合の高い栄養素として、カルシウムの831.80±347.24mg(不足者34.2%)、ビタミンAの1,503.57±3,162.13μg(同30.0%)などが挙げられた。

体組成:体脂肪率は審判のレベルにより有意差

BMIは平均22.77±1.94で審判のレベルによる有意差はなかった。また、ウエストやヒップの周囲長、その比にも有意差はなかった。ただし、体脂肪率は都市レベル審判が14.1±4.28%、クラスレベルは12.3±4.41%、全体では13.4±4.39であって、レベルによる有意差が認められた。

審判の体組成が運動パフォーマンスに相関

12分間のクーパーテストの走行距離は、都市レベルの審判が2,861±195.18m、クラスレベルの審判は3,002.6±144.32mであり、後者のほうが有意に優れていた(p<0.001)。一方、スプリントテストについては、5、10、30mのいずれも、審判のレベルによる有意差は認められなかった。

体脂肪率、ウエスト周囲長は全パフォーマンス指標と有意に相関

体組成関連のパラメーターとパフォーマンステストの結果に、以下のような有意な相関が認められた(すべてp<0.01)。

BMIは、スプリントテストの10m(r=0.29)、30m(r=0.26)の記録と正相関した(BMI高値であるほど記録が不良)。5mのスプリントテストやクーパーテストの記録とBMIの関連は非有意だった。

体脂肪率は、スプリントテストの5m(r=0.38)、10m(r=0.38)、30m(r=0.48)の記録と正相関し、クーパーテストの記録(r=-0.35)とは逆相関した(体脂肪率が高値であるほど記録が不良)。

ウエスト周囲長は、スプリントテストの5m(r=0.33)、10m(r=0.40)、30m(r=0.33)の記録と正相関し、クーパーテストの記録(r=-0.31)とは逆相関した。

サッカーの審判の栄養にも栄養士が関与すべき

論文の結論は、「すべてのニーズを単独で満たす奇跡の食品は存在しない。サッカー審判員の食事に対する理想的なアプローチは、食品の選択肢の多様性と、最適な体組成に必要なバランスのとれた食事を提供することである。そのバランスは、要求される身体活動(トレーニングや試合など)を考慮して達成する必要がある。審判員の栄養に関する推奨事項は、性別、年齢、身体的特徴、体組成、特別なニーズ、トレーニング強度、試合頻度を考慮して、栄養士が個別にアレンジして作成されるべき」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effect of body composition on the athletic performance of soccer referees」。〔J Nutr Sci. 2023 Jun 27;12:e66〕
原文はこちら(Cambridge University Press)

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