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食事・栄養でうつ病リスクを抑制できるか? 2018年以降5年間の研究報告のレビュー

今回は、栄養素の不足とうつ病リスクとの関係に焦点を当てたレビュー論文を紹介する。タンパク質、ビタミンB群、ビタミンD、マグネシウム、亜鉛、セレン、鉄、カルシウム、ω3脂肪酸などの栄養素の欠乏は、脳や神経系の機能に影響を及ぼし、うつ症状の出現に影響を与える可能性が考えられるという。ただ、それらのエビデンスの大半は横断研究から得られたものであり、この領域のさらなる研究の必要性が確認されたとのことだ。また著者らは、食事がうつ病のリスクに影響を与え得る、またはうつ病の治療に役立つ可能性のある、唯一の要因ではないことを忘れてはならないと記している。

食事・栄養でうつ病リスクを抑制できるか? 2018年以降5年間の研究報告のレビュー

最も一般的な精神疾患であるうつ病に対する栄養介入のエビデンス

うつ病有病率の上昇が、近年の公衆衛生上の懸念となっている。2019年の世界の精神障害の発生は8人に1人であり、また人口の44%は生涯に少なくとも1回の精神障害のエピソードを経験すると報告されている。その中でうつ病は、生物学的、遺伝的、社会的、心理的な因子など多くの要因が相互に作用し発症すると考えられている。

うつ病は、20~40歳の間に発症することが多く、性別は女性が男性の2倍であり、そのほかに婚姻状況(別居、離婚、死別。とくに男性において)や幼少期の逆境体験との関連も明らかにされている。それら以外に身体疾患もうつ病のリスク因子であり、心血管代謝性疾患や自己免疫疾患などの患者で罹患率が高いことが報告されている。

近年、食事がメンタルヘルスに影響を与えるとする考え方が台頭しており、それを示唆する複数の報告が存在する。エビデンスは限られているものの、うつ病という疾患がいまだその治療に改善の余地がある疾患であるため、食事という修正可能な因子でリスクを下げたり治療効果に影響を及ぼしたりできるのであれば、臨床応用の可能性を積極的に探る必要がある。

最新の45件の研究を抽出

今回紹介する論文の研究では、2018~23年の直近5年間で、PubMed、Science Direct、Web of Science、Scopus、Google Scholarという文献データベースに収載された論文を対象として、うつ病と栄養に関連する研究報告を検索した。検索キーワードには、栄養欠乏、うつ病、ビタミンB、ビタミンD、ω3などを用いた。

包括基準は、栄養素欠乏と主として大うつ病性障害(major depressive disorder;MDD)との関連を成人(18歳以上)対象に検討した介入研究、観察研究であり、英語で執筆され2018~23年に公開された論文。除外基準は、動物研究、レビュー、症例報告、社説、他の疾患(がんなど)に続発するうつ病との関連を評価した研究、減量・代謝改善手術とうつ病との関連を評価した研究、小児、高齢者、妊婦・授乳婦などの特定の集団のみを対象とした研究、特定の食事療法(地中海食など)の有効性または栄養補給のみに焦点を当てた研究、双極性障害のみに焦点を当てた研究、英語以外の言語で執筆された論文、2018年より前に発表された論文など。

検索によって抽出された研究報告は45件だった。

主要栄養素、水分の不足とうつ病リスク

主要栄養素の不足とうつ病リスクとの関連を調査した研究は少なかったが、タンパク質は脳内で神経伝達物質の前駆体として機能するアミノ酸の重要な供給源となるため、摂取される食事性タンパク質の種類と量は重要な可能性がある。セロトニンはトリプトファンから、ノルアドレナリンはチロシンまたはその前駆体であるフェニルアラニンから合成される。したがって、食事中のこれらのアミノ酸が欠乏すると、それらのレベルが低下する可能性がある。抑うつ行動を示す個人の脳内では、前述のアミノ酸濃度が有意に低下していることが報告されている。

次に脂質に関しては、飽和脂肪酸(saturated fatty acid;SFA)やトランス脂肪酸が豊富な食事はうつ病のリスクを高める可能性があり、一方、一価不飽和脂肪酸(monounsaturated fatty acid;MUFA)、多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acid;PUFA)が豊富な食事はうつ病のリスクを軽減する可能性がある。

摂取する炭水化物のグリセミックインデックスが低いことは、うつ病のリスクの軽減につながる一方、血糖負荷の高い食事はうつ病リスクとなる可能性がある。また、メタ解析によると食物繊維摂取量が5g増加するごとに、うつ病のリスクが5%低下する。

水分摂取量とうつ病リスクとの関係については、水が脳質量の75%を占めていることから、脱水が神経系の機能に影響を与える可能性が報告されており、1%以上の脱水で、怒り、混乱、憂鬱、疲労が増加するという。

多価不飽和脂肪酸(PUFA)

多価不飽和脂肪酸(PUFA)は人体で合成されず食事またはサプリメントによって供給される。それらは抗炎症効果があり、神経内分泌経路を調節し主要な神経伝達物質を活性化するため、うつ病の予防に寄与する可能性がある。PUFA摂取量が少ないことは、自殺企図や大うつ病性障害(MDD)エピソードのリスクと関連していることが報告されている。ただし、研究結果の一貫性が十分ではなく決定的でない。

ビタミンの不足とうつ病リスク

ビタミンB群

ビタミンB群のなかでとくに神経機能に必須とされる、B1、B6、B9、B12の欠乏がうつ病と関連しているとの報告がみられる。またビタミンB群は、気分障害のリスク上昇に関連している高システイン血症に対する保護効果もある。うつ病のエピソードの経験のあるベジタリアンは、それらビタミンB群を補給することによるメリットを得られる可能性がある。

ビタミンD

ビタミンDが精神疾患を含む、さまざまな疾患の病態生理におけるその役割を示唆する研究が増加している。ビタミンD欠乏症でうつ病リスクが8~14%増加するとする報告もある。ビタミンDは、セロトニンレベルを最適なレベルに維持し、脳内のドパミンとノルアドレナリンのレベルを調節することにより、うつ病の予防に資すると考えられる。

うつ病のリスクに対して報告されている栄養素の影響のまとめ

論文では上記のほかに、ミネラルの不足とうつ病リスクについても、エビデンスとメカニズムの考察が述べられている。結論部分には、「利用可能な研究報告の大半が横断的研究に基づいていた」とし、因果関係については不明点が多く、「より信頼できる結論を引き出すために、前向きコホート研究や症例対照研究などのさらなる研究が推奨される」と付記されている。

論文の末尾に、栄養素とうつ病リスクとの関連が表形式でまとめられており、最後にその抜粋を紹介する。

タンパク質

タンパク質の総摂取量が十分であることだけでなく、とくに牛乳や乳製品に由来するタンパク質の摂取量が多いと、うつ病の症状に対する感受性が低下する可能性がある。その他の動物源からのタンパク質摂取には利点は示されていない。

食事からのトリプトファンの摂取量を増やすことのうつ病リスク軽減に対するメリットが示されている。他の主要栄養素と比較して、タンパク質の摂取量の多い食事は、慢性疾患を有していない成人のうつ病のリスクに有益な効果をもたらす可能性がある。

脂質

報告されている研究のすべてが決定的というわけではないが、脂質摂取量とうつ病の症状の発現との間に関連性は観察されていない。

炭水化物

添加糖類や低品質の炭水化物への摂取量が多いこと、食物繊維の摂取量が少ないことは、うつ病のリスクが高いことと相関していると報告されている。

水分

食事による水分摂取がうつ病のリスクに直接影響することは証明されていない。ただし、脱水は疲労やうつ病などを悪化させる可能性がある。したがって、脱水による悪影響を避けるために、水分補給を考慮する価値がある。

多価不飽和脂肪酸

検索されたすべての報告は、多様な背景をもつ対象において、うつ病の症状の発症を防ぐためのω3脂肪酸摂取量を増やすことによる有益な効果を示していた。

ビタミン、ミネラル

ビタミンB1、B6、B9、B12の摂取量、または血清レベルが低いと、うつ病症状の有病率が高くなることが報告されている。また、うつ病患者の血清ビタミンDレベルは有意に低く、うつ病患者の約80%は適切な量のビタミンDを摂取していないというデータがある。

ミネラルについては、マグネシウム、亜鉛、セレン、銅、マンガンの欠乏がうつ病リスクの上昇と関連している可能性がある。銅と鉄は過剰と欠乏の双方が、うつ病リスクに影響を与える可能性がある。

文献情報

原題のタイトルは、「Dietary Nutrient Deficiencies and Risk of Depression (Review Article 2018–2023)」。〔Nutrients. 2023 May 23;15(11):2433〕
原文はこちら(MDPI)

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