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ビタミンDサプリメントで癌死亡率が12%減の可能性も、日本人の98%がビタミンD不足の現実

日本人の98%がビタミンD不足に該当するというデータが報告された。東京慈恵会医科大学などの研究グループの研究結果であり、「The Journal of Nutrition」誌に論文が掲載された。一方、同大学も参加した国際共同研究のメタ解析からは、ビタミンDサプリメント摂取によって癌による死亡率が12%低下する可能性が示唆され、「Ageing Research Reviews」誌に論文が掲載された。

両研究の成果の要旨が先頃、同大学のサイトにプレスリリースとして掲載されている。それらを紹介する。

ビタミンDサプリメントで癌死亡率が12%減の可能性も、日本人の日本人の98%がビタミンD不足の現実

98%の日本人がビタミンD不足に該当。植物由来のビタミンDはほぼ検出されず

東京慈恵会医科大学や島津製作所などの研究グループは、新開発の液体クロマトグラフィー・質量分析法(LC-MS/MS)システムを使用して、2019年4月~2020年3月に東京都内で健康診断を受けた5,518人を対象とする調査を実施し、98%がビタミンD不足に該当していたことを明らかにした。

ビタミンDの不足は骨粗鬆症だけでなく、感染症や心血管疾患、神経筋疾患、自己免疫疾患発症にも関連すると言われており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化にも関与する可能性のある因子としても注目されている重要な栄養素。世界的にもビタミンD不足・充足状態に対する関心が高まる一方で、この栄養素は必要基準範囲が完全に確立されていないことが課題となっていた。

今回の研究では、新開発の完全自動化の液体クロマトグラフィー・質量分析法(LC-MS/MS)システムを使用し、日本で初めて血清中 25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)の基準濃度を計算した。算出した結果は、男性が7~30ng/mL、女性は5~27ng/mL、全体では6~29ng/mLであり、健常人の98%が日本代謝内分泌学会・日本整形外科学会が提唱するビタミンD基準濃度(30ng/mL)に達していないことが判明した(図)。 lまた、測定されたビタミンDのほとんどが、動物または日光由来のビタミンD3であり、シイタケなどの植物由来のビタミンD2はほぼ検出されなかった。そのほかに、年齢が低いほどビタミンD不足の割合が高いこともわかった。

この結果から、日本人の食生活の変化によって、現代社会ではとくに植物由来のビタミンDが摂取されなくなったことが推察される。今後の超高齢化社会へ向け、骨粗鬆症・骨折の予防につながるビタミンDの摂取はますます重要となっている。ビタミンDが不足している現状への早急な介入とともに、ビタミンD不足を引き起こすその他の原因についても解析が必要。

図 血清中のビタミンD量ごとの人数(健診センター受診者5,518人)

血清中のビタミンD量ごとの人数(健診センター受診者5,518人)

(出典:東京慈恵会医科大学)

プレスリリース

98%の日本人が「ビタミンD不足」に該当 国内初の基準値を公表、植物由来のビタミンDはほぼ検出されず(東京慈恵会医科大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Determination of a Serum 25-Hydroxyvitamin D Reference Ranges in Japanese Adults Using Fully Automated Liquid Chromatography–Tandem Mass Spectrometry」。〔J Nutr. 2023 Apr;153(4):1253-1264〕
原文はこちら(Elsevier)

ビタミンDサプリ摂取で癌死亡率が12%減少する~10万人規模の国際研究メタ解析

東京慈恵会医科大学や米国、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランドなどの医療機関が参加した国際共同研究により、二重盲検無作為化プラセボ比較試験(RCT)の研究参加者10万人のデータをメタ解析し、ビタミンDサプリメントの連日内服によって、癌種に関係なく癌死亡率が12%減少していたことが明らかにされた。メタ解析の対象とされたRCTには、同大学が主導した「アマテラス試験」も含まれている。

研究結果の主なポイントは、

  • ビタミンDサプリの連日内服により癌種に関係なく癌死亡率が12%減少した。
  • 70歳以上の場合は癌死亡率が17%減少し、高齢者で特に有効だった。
  • 癌の発症前から連日で内服していた場合は13%、発症後でも11%の癌死を予防した。
  • 連日の内服は有効だったが、月1回の大量内服は無効だった。

同大学分子疫学研究部の浦島充佳氏は、同大学発のプレスリリースの中で、「世界では毎年二千万人近くが癌を発症し、一千万人が癌で亡くなっている。近年では多くの癌治療薬も開発されつつあるが、年間一千万円以上の高額な医療費がかかる。一方、ビタミンDサプリメントは安価かつ容易に入手でき、1日2,000IU(国際単位)の連日内服であれば副作用は報告されていない。また、日光を浴びれば、無料で体内のビタミンD濃度を上げることも可能。癌死亡を12%減少できるとしたら、理論上は年間120万人の命を救える」と述べている。

ただし、「現段階ではビタミンDサプリメントの摂取が有意に癌死を抑制すると言い切ることはできない。その理由は、全体では有意な結果を得たものの、われわれの実施した『アマテラス試験』を含め、解析対象とした一つ一つの試験においては有意な結果を得られていないからだ」と付け加えている。同氏はこれを背景として、「ビタミンDサプリメント投与の有効性と安全性を、1件のみの臨床試験で明らかにするべく、2022年1月より、第2弾となる『アマテラス2試験』を開始した」と語っている。

プレスリリース

ビタミンDサプリメントを摂取すると癌の死亡率は12%減少する 国際共同研究による10万人のデータ解析で明らかに(東京慈恵会医科大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Efficacy of vitamin D3 supplementation on cancer mortality: Systematic review and individual patient data meta-analysis of randomised controlled trials」。〔Ageing Res Rev. 2023 Jun;87:101923〕
原文はこちら(Elsevier)

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