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シフト勤務女性の日勤日の朝食欠食は、BMI上昇の独立したリスク因子の可能性

国内の看護師を対象とする調査から、シフト勤務をしていて朝食を欠食している人は日勤者に比べてエネルギー摂取量が少ないことや、日勤日の朝食の欠食はエネルギー摂取量にかかわりなくBMIと正相関することなどが明らかになった。東京大学大学院教育学研究科総合教育科学専攻身体教育学の東郷史治氏らの研究によるもので、「Public Health Nutrition」に論文が掲載された。

シフト勤務女性の日勤日の朝食欠食は、BMI上昇の独立したリスク因子の可能性

シフト勤務と朝食欠食、栄養素摂取量、BMIの関連を詳細に検討

シフトワーカーには肥満や代謝性疾患、心血管疾患、メンタルヘルス不調が多いことが知られているが、そのメカニズムは解明されていない。ただし、シフト勤務者は加糖飲料や菓子、アルコール飲料の摂取量が多いことが報告されており、肥満や代謝性疾患のリスクへの影響の一部はそれにより説明できる可能性がある。また、不規則な勤務時間の影響のために朝食を抜くこと、概日リズムの乱れが生じやすくなることなどの影響もありうる。

とはいえ、シフト勤務者の朝食欠食習慣、栄養素摂取量、およびそれらとBMIの関係は、これまで十分調査されていない。これを背景として東郷氏らは、シフト勤務を経験する者の多い看護師を対象として、以下の検討を行った。

約2,500人の女性看護師を対象に横断的に解析

この調査は2010年に、神奈川県で勤務している女性看護師を対象とする横断調査として実施された。20~59歳の看護師5,536人を無作為に抽出し、その65.9%から調査協力の同意を得た。男性、年齢が前記の範囲以外、勤務スケジュールやクロノタイプ(朝型や夜型か)などの解析に欠かせないデータに未回答、BMIが外れ値(35.3以上)の者などを除外し、最終的に2,450人を解析対象者とした。このうち、1,054人は日勤のみの看護師で、1,396人はシフト勤務のある看護師だった。

「日勤日に朝食はどのくらいの頻度で食べるか」という質問に対して、「ほぼ毎回食べる(8割以上)」、「時々食べる(2~8割)」、「ほとんど食べない(2割未満)」の三者択一で回答してもらい、後二者を「日勤日の朝食を欠食する」とした。夜勤入りと夜勤明けの日の朝食についても同様に判定し、三つの質問のいずれかが「時々食べる」または「ほとんど食べない」と回答した場合、「朝食欠食習慣のあるシフト勤務者」と判定した。なお、本研究では5~11時に摂取する食事を朝食と定義している。

栄養素や食物の摂取量は食物摂取頻度調査を用いて評価した。また、日本語版の「朝型夜型質問票(morningness-eveningness questionnaire;MEQ)を用いてクロノタイプを評価した。このほか、年齢、看護師歴、シフト勤務歴、婚姻状況、居住環境(独居か否か)、飲酒・喫煙習慣、睡眠時間、20歳時のBMIなどを質問した。

日勤日の朝食の欠食がBMIを高める可能性

日勤(day shift;DS)のみの看護師(DS群)は前述のように1,054人であり、シフト勤務者(rotating shift;RS)のうち朝食欠食習慣のない看護師(RS朝食摂取群)は458人、朝食欠食習慣のあるRSの看護師(RS朝食欠食群)は937人だった。

この3群の特徴を比較すると、いくつかの点で有意差が認められた。一部を抜粋すると、年齢はRS朝食摂取群が最も高く、次いでDS群であり、RS朝食欠食群は最も若年だった。BMIはDS群に比較しRSの2群は高値であり、RSの朝食欠食の有無では有意差がなかった。20歳時のBMIは、RS朝食欠食群がDS群より有意に高値だった。MEQスコアはRS朝食欠食群に比較して他の2群は高値(朝型の傾向)だった。身体活動量については群間に有意差がなかった。

食品群・栄養素摂取量の群間差

エネルギー摂取量は有意な群間差があり、RS朝食摂取群が1,949±448kcalで最も高く、次いでDS群が1,835±468kcalで、最も少なかったのはRS朝食欠食群の1,775±504kcalだった。炭水化物と脂質の摂取量には有意な差はなかったが、たんぱく質についてはRS朝食欠食群が他の2群に比較し有意に低値だった。

食品群別に見た場合、RS朝食欠食群では、ジャガイモ、果物、緑黄色野菜、魚介類などの摂取量が他の2群より少なく、反対に菓子類や加糖飲料の摂取量はRS朝食欠食群のほうが他の2群より有意に多かった。

エネルギー摂取量や菓子摂取量と関連する朝食欠食のタイミング

次に、シフト勤務者(RS群)での欠食による食品群・栄養素摂取量への影響を多変量線形回帰分析により検討。すると、日勤日の朝食欠食と夜勤明けの朝食欠食が、エネルギー摂取量の少ないこと、および、菓子類の摂取量が多いことと、独立した有意な関連が認められた。

それに対して、夜勤入りの日の朝食欠食は、エネルギー摂取量や菓子類の摂取量の多寡と有意な関連が認められなかった。

シフト勤務者の日勤日の朝食欠食はBMIと正相関

続いて、朝食欠食とBMIの関係を、交絡因子(年齢、20歳時のBMI、看護師歴、シフト勤務歴、夜勤の回数、婚姻状況、居住環境、飲酒・喫煙・身体活動量、睡眠時間、MEQスコア)を調整し検討。その結果、日勤日の朝食欠食がBMIと正の相関関係があることが明らかになった(β=0.06,p=0.018)。それに対して、夜勤入りや夜勤明けの日の朝食欠食には、BMIと有意な関連が認められなかった。

シフト勤務者が日勤日に朝食を食べることがBMI増加抑止につながるか?

まとめると、東郷氏らの研究では、RS朝食欠食群はDS群よりもエネルギー摂取量と食事の質が低く、BMIは高値であり、一方、RS朝食摂取群はDS群よりエネルギー摂取量とBMIが高いことが示された。また、RS群では、日勤日の朝食と夜勤明けの朝食を抜くことが、食事の質の低下と関連しており、かつ日勤日の朝食欠食は、エネルギー摂取量や食事の質とは独立してBMIと正相関することが示された。

著者らは本研究を、シフト勤務者の日勤日の朝食欠食が、一部の食品群や栄養素の摂取量およびBMIと有意な関連があることを示した初の研究と位置づけている。朝食を抜く習慣のあるシフト勤務者はエネルギー摂取量が少ないにもかかわらず、BMIは日勤者より高いことの背景として考えられるメカニズムの一つとして、午前中と比較して午後にインスリンの感受性が低下することが関与しているのではないかと記している。

以上より、シフト勤務者の肥満リスクを抑制するために、日勤日の朝食を欠かさないことが益する可能性が考えられる。ただし一方で、朝食摂取によりエネルギー摂取量自体は増える可能性がある点に注意が必要となる。論文の結論には、「これらの知見は、シフトワーカーの食習慣によって引き起こされる健康不良を予防するための、新たな介入戦略の開発に重要な意味を持つ」と記されている。

文献情報

原題のタイトルは、「Association of breakfast skipping with habitual dietary intake and BMI in female rotating shift workers」。〔Public Health Nutr. 2023 Apr 20;1-10〕
原文はこちら(Cambridge University Press)

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