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ビタミンDサプリメントの必要性を、屋内競技・屋外競技の違いだけで判断すべきでない

これまでに報告されてきたスポーツアスリートのビタミンDレベルに関する研究結果を対象とするメタ解析の結果、屋外競技では屋内競技よりもわずかにそのレベルが高いものの、実際の規定因子としては季節などの影響のほうが強いことが明らかになった。著者らは、「行っているスポーツが屋内競技か屋外競技かという違いのみを根拠として、ビタミンDサプリメントの必要性を判断すべきではない」と結論づけている。

ビタミンDサプリの必要性を、屋内競技・屋外競技の違いだけで判断すべきでない

屋内競技のアスリートはビタミンDが必要か?

ビタミンDは食品に含まれている栄養素が体内に取り込まれる経路とは別に、皮膚が紫外線に曝露されることで産生される経路があり、紫外線曝露の少ない人ではビタミンDレベルが低いことを示す多くの研究報告が存在する。ビタミンDは古くから骨代謝に必要なビタミンとして知られてきており、さらに近年は免疫、循環器疾患、糖尿病、がんのリスクやスポーツパフォーマンスとの関連も明らかになってきている。

それらの研究はおしなべてビタミンDレベルの低いことの悪影響を示唆するものだが、もちろんのこと高ければ高いほどよいということではなく、高すぎる場合には嘔気/嘔吐、食欲不振、便秘、脱力感、体重減少、腎障害、およびカルシウム濃度の上昇を介した不整脈などのリスクが生じ得る。このため、現在のエビデンスからは、ビタミンDレベルが低すぎる場合やビタミンDの需要が高いと考えられる状態においてのみ、薬剤またはサプリメントからの摂取を推奨することが妥当な態度と考えられる。

スポーツアスリートはトレーニングに長時間を費やすことが多い。そのトレーニング時間が日中である場合には、屋外でトレーニングするか屋内で行うかによってビタミンDレベルに差が生じる可能性がある。そこで本論文の著者らは、システマティックレビューとメタ解析によって、アスリートのビタミンDレベルに関与する因子としての参加競技の違いの影響を検討した。参加競技の違い以外には、紫外線曝露量に影響を及ぼし得る、人種(肌の色)、季節、緯度などが考慮されている。

システマティックレビューの手法について

システマティックレビューは2023年1月に実施された。用いた文献データベースは、PubMed、Embase、Scopus、ScienceDirect、ProQuest、Cochrane Central Register of Controlled Trialsなどで、それらに2012~22年に収載された、英語またはドイツ語で執筆されている論文を対象とした。横断研究や観察研究のすべてを適格とし、また介入研究の場合、介入前のビタミンDレベルが記載されているものは適格とした。一方、症例報告、ケースシリーズ、レビュー、メタ解析、書籍、学会発表、患者対象研究で治療開始前または発症前のデータが記載されていないもの、ヒト以外での動物研究、in vitro研究、全文が公開されていない論文は除外した。

合計747報の報告がヒットし、重複削除、タイトルとアブストラクトに基づくスクリーニング後の100報を全文精査の対象とし、最終的に33件の研究報告をメタ解析の対象とした。なお、この工程はPRISMAに準拠し、2名の研究者が独立して採否を判定。意見の相違は議論によって解決した。

アジア人の屋内競技アスリートはビタミンDが相対的に低い

33件のうち21件は横断研究、10件はコホート研究、1件は無作為化比較試験、他の1件は対照群のない前後比較研究だった。

総サンプル数5,150人の平均ビタミンDレベルは29.32ng/mL(95%CI;27.49~31.14)であり、異質性の指標のI2統計量は100%と極めて不均一性が高かった。

屋外競技アスリートのビタミDレベルのほうが高い傾向だが、群間差はわずかに非有意

屋外競技と屋内競技とで二分すると、屋外競技アスリートのビタミンDレベルは31.4ng/mL(同28.56~34.24)、屋内競技アスリートは27.67ng/mL(25.38~29.97)であり、平均差は3.73ng/mLで屋外競技アスリートのほうが高い傾向がみられた。ただし、統計的にはわずかに非有意だった(p=0.052)。

これに続いて論文では、人種、研究実施季節ごとに比較した結果を示している。

アジア人では屋外/屋内の差が有意

人種別にみた場合、アジア人を対象とした研究では、屋外群が34.91ng/mL(30.60~39.22)、屋内群が25.06(25.89~29.08)であり、有意差が認められた(p<0.001)。つまり、アジア人アスリートの場合、屋内競技では屋外競技に比べて、ビタミンDレベルの低い選手が多い可能性が高い。

それに対してアフリカ系アメリカ人を対象とした研究では、屋外群が29.59ng/mL(26.98~32.19)、屋内群が26.31ng/mL(23.14~24.19)であり、屋外群のほうが高い傾向にあるものの群間差は非有意だった。同様に白人対象研究も、同順に32.38ng/mL(27.19~37.58)、27.65ng/mL(25.53~31.77)であって、屋外群のほうが高い傾向にあるものの群間差は非有意だった。

続いて、研究が実施された季節別に比較した結果をみると、春夏秋冬すべての季節において、屋外競技アスリートのビタミンDレベルのほうが、屋内競技アスリートよりも高い傾向にあったが、いずれも群間差は非有意だった。

屋外競技のアスリートにもビタミンD低値が少なくない

ビタミンDレベルと、屋内競技か屋外競技か、人種、季節、緯度などの関連の強さを比較した場合、最も強い影響を及ぼしている因子は季節であることが明らかになった。季節のビタミンDレベルに対する影響の強さは、行っている競技が屋内競技か屋外競技かという違いによる影響の強さの約2倍だった。なお、四季の中で冬と春が、屋内競技と屋外競技によるビタミンDレベルの違いが最も大きかった。

ビタミンDの至適レベルは50~100ng/mLとされることが多い。本研究によって、アスリートが行っている競技の種類や季節にかかわらず、大半のアスリートがこの範囲を下回っていることも明らかになった。

これらを根拠として論文の結論には、「アスリートが屋外でトレーニングを行っているからビタミンDレベルが高いというわけではなく、サプリメントの必要性は屋外/屋内の違いだけで判断されるべきではない」と記されている。

文献情報

原題のタイトルは、「Difference in Levels of Vitamin D between Indoor and Outdoor Athletes: A Systematic Review and Meta-Analysis」。〔Int J Mol Sci. 2023 Apr 20;24(8):7584〕
原文はこちら(MDPI)

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