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男性不妊を栄養で改善できるか? 食事と精子のエネルギー代謝、生殖能力のオーバービュー

2023年05月26日

食事と男性の生殖能力について現在までの知見をまとめたレビュー論文を紹介する。イタリアの研究者によるもので、「男性不妊が増加しており、それに対する食事によるアプローチを開発する必要性が高まっている」と述べられている。要旨を抜粋して紹介する。

男性不妊を栄養で改善できるか? 食事と精子のエネルギー代謝、生殖能力のオーバービュー

洋食と地中海食、菜食の精子の質への影響

摂取エネルギーは、過少である場合も過多である場合も精子の質に影響を及ぼす可能性がある。それは各栄養素も同様の可能性があり、また、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸については、過剰摂取による悪影響が示唆されている。ただし、栄養素が精子の質や精子のエネルギー代謝に及ぼす生物学的メカニズムはほとんど明らかになっていない。

この数十年で世界的に食生活の洋式化が進んだとされるが、西洋式の食事の特徴は、工業的に加工された食品、動物性タンパク質、単純糖質、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸が多く、食物繊維や不飽和脂肪酸が少ないと言われることが多い。このような食事はアテローム性動脈硬化や神経変性、不妊症のリスクと関連している。

一方、健康的とされる食事スタイルの一つである地中海食は動脈硬化性疾患のリスクを抑制するだけでなく、精子の質に関してもメリットがあることが報告されている。同様にベジタリアン食についても男性の生殖能力に対して保護的に働く可能性が注目されている。

男性不妊のリスク因子としての洋食

現在の西洋の食習慣は、一般的に糖と脂肪が多く、その結果バランスのとれていない過剰なエネルギー量摂取につながりやすい。過去数十年にわたり、欧米型と言われる食事は肥満の有病率の増加を招いている。

肥満は、視床下部-下垂体-性腺軸を混乱させ、性腺機能低下症を引き起こすことが示されている。主として男性ホルモンのテストステロンのレベルの低下と精子の減少として影響が現れる。また、脂肪組織の増加はインスリン抵抗性を介して酸化ストレスの増大を招き、生殖経路と精子機能を変化させる。インスリン抵抗性の代償としての高インスリン血症や非代償となった場合の高血糖は、ともに精子のグルコース取り込みと代謝の低下に関与していることが示唆されている。さらに、肥満に伴う高レプチン血症も、男性の生殖機能および精子の質に悪影響を及ぼす可能性が報告されている。

また、脂肪組織が過剰になると、テストステロンをエストラジオールに変換する酵素であるアロマターゼの活性が高まる。結果としてテストステロンレベルが低下して、精子の産生が低下する。加えて、脂肪組織の増加に併存することの多い脂質異常症も、精子の質に影響を与える可能性が指摘されている。

男性不妊に対する保護因子としての地中海食と菜食主義

地中海食が男性の生殖能力に対して保護的に働くであろうとされる理由の一つは、脂肪酸とトランス脂肪酸が少ないこと、およびω3脂肪酸、抗酸化分子、ビタミンなどが豊富なためである。ビタミンとカロテノイドの摂取が精子数の増加に関連していることが示されており、また果物、野菜の摂取量が多いほど、精子の運動性と濃度が高いという報告がある。

果物、野菜などから分離される食事性天然化合物は、ミトコンドリアの代謝、生合成、および酸化還元状態を調節するが、これらの作用が男性の生殖能力に対する有益な効果を説明する上で重要と考えられる。

地中海食のもう一つの特徴は、主な脂肪源としてオリーブオイルを多く摂取することにある。動物モデルでは、オリーブオイルの摂取が精子の質を有意に向上させることが示されている。

他方、菜食主義については、それが種々の慢性疾患のリスク因子を抑制することが知られている。ただし、精子の質の保護作用については、議論の余地がある。

菜食主義は抗酸化能という点で有利であり、この点は精子のDNA損傷を減らすと考えられる一方で、菜食主義が精子の濃度と運動性の低下と関連しているとする報告がある。また菜食主義の男性不妊への影響はほとんど評価されていない。

精子の質に対する栄養素の影響

脂質(脂肪酸とコレステロール)

飽和脂肪酸の摂取量が精子数と精子濃度と負の相関があり、反対にω3不飽和脂肪酸の摂取量は精子の質と正の相関があることが報告されている。一方、コレステロールに関しては、高コレステロール血症が精子の形態と機能を変化させることが示されている。ただし、コレステロールは精子の膜構造とテストステロン合成に不可欠な脂質であり、精子の運動性、受精能獲得などにおいて重要な役割を果たしている。

炭水化物

精子の質に対する炭水化物の役割は、まだほとんど解明されていない。砂糖の摂取に伴い観察される精子の運動性の低下は、インスリン抵抗性の亢進によるものである可能性があり、これは精子によるグルコース利用が低下していることを意味しているとの報告がある。精子のグルコース取り込みと代謝の低下は、精子の運動性を維持するために必要なATPの減少を来すかもしれない。

これとは別に、血糖値の上昇がテストステロン値の低下と酸化ストレスの増加につながることも明らかにされている。

タンパク質

タンパク質は精子細胞のエネルギー基質ではない。しかし、タンパク質摂取量が少ないことと、精巣や精嚢の重量の有意な減少、テストステロン低下と関連があり、男性不妊の潜在的なリスク因子であると考えられている。

タンパク質の種類も重要と考えられる。動物性および植物性タンパク質の食事の影響を、サルで検討した研究がある。その研究では、植物性タンパク質の豊富な食事を与えられたサルと比較すると、動物性タンパク質の豊富な食事を与えられたサルは、精子の数と運動性が低く、精子の異常が増加したという。

論文中ではこのほかに、「精子の質に対する抗酸化物質の影響」として、ポリフェノール、ケルセチン、レスベラトロール、リコピン、アスタキサンチン、抗酸化ビタミン(ビタミンE、ビタミンC)といった栄養素の可能性の考察などが加えられている。

結論には、「食事は、男性の生殖能力の重要な変更可能な因子である可能性がある。よって、男性の生殖能力を維持するため、または男性不妊を予防するために、毎日の栄養の重要性を強調する必要があるだろう。とくに、植物性食品と魚を主体とした健康的な食事パターンの遵守が、精子の質の指標と正の相関がある」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Diet and Male Fertility: The Impact of Nutrients and Antioxidants on Sperm Energetic Metabolism」。〔Int J Mol Sci. 2022 Feb 25;23(5):2542〕
原文はこちら(MDPI)

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