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「体重が減少し、運動能力に差は生じない」1日1食生活を11日間行ったクロスオーバー試験

1日1食の生活にすると、摂取エネルギー量が同じであれば、1日3食に比べて体重が減少し、運動中の脂質酸化が増えて、運動パフォーマンスには差が生じないとする研究論文を紹介する。同一対象に2条件で介入する無作為化クロスオーバー試験の結果だ。

1日1食生活を11日間行ったクロスオーバー試験「体重は減るが身体能力に差は生じない」

断続的断食は是か非か?

現代人は1日3食の食生活を基本パターンとして生活している人が多い。食後はインスリン分泌が増加し、末梢でのグルコース取り込みが促進され、リポタンパクリパーゼが活性化され脂肪組織への外因性脂質の貯蔵が促進される。また、胆汁酸分泌、線維芽細胞増殖因子(FGF19)の上昇なども起こり、これらの変化は食後4~5時間経過してもなお続いている。このことから、1日3食を基本パターンとして生活している現代人は、24時間のうち大半を食後の状態で過ごしていることになる。

一方、進化論的な考え方からは、ヒトは元来、食事頻度が少ないことに対応するように進化してきたと想定される。それによって、代謝の柔軟性(炭水化物と脂質の酸化の割合の変化)を確保し、状況にあわせてエネルギー需要を満たすという対応を可能としてきた。それに対して、常に食事を摂取できる状況は、代謝の柔軟性の低下、肥満、2型糖尿病などのリスクを高める可能性がある。これを背景として、時間制限食などの断続的断食により代謝の柔軟性を維持しながら減量を図るという戦略が近年、試みられるようになった。

ただし、断続的断食のエビデンスはいまだ確立されたとは言えず、減量につながるという研究報告もあればそれを否定するものもあり、またインスリン感受性を亢進させるという報告もあれば反対に低下させるという報告もある。加えて、断続的断食によって筋力を含む運動パフォーマンスが低下する懸念もある。

摂取エネルギー量を固定したクロスオーバー試験

以上を背景として、この研究では健康な13名の被験者を対象に、1日3食で11日間、1日1食で11日間生活してもらい、その間の体重や血液検査値の変化、運動負荷中の炭水化物と脂質の酸化率、VO2max、ウインゲートテストパフォーマンスへの影響などを検討した。研究参加条件は、BMI20~30、体脂肪率12~30%、ある程度のトレーニングを行っていること。心血管疾患や代謝性疾患、摂食障害、精神疾患の罹患者、胆のう摘出後、喫煙者、および断続的断食の経験者は除外した。

13名のうち1名は日程が合わずに参加を辞退し、別の1名は研究とは無関係の健康上の問題のために脱落。2条件の介入を終了したのは11名(31.0±1.7歳、女性6名、BMI24.0±0.6)だった。

摂取エネルギー量は被験者の体組成にあわせて個別に設定し、両条件で同等とした。1日1食条件では17~19時の間に食事をすることとした。研究期間中、被験者は食事以外に、水、および砂糖や蜂蜜などを加えないコーヒーと紅茶は自由に摂取できた。2条件の試行の間には、2週間のウォッシュアウト期間が設定されていた。研究期間中、被験者には加速度計と連続血糖測定器をつけて生活してもらった。

1日1食条件のほうが体重、脂肪量の低下幅が有意に大きい

食事摂取状況は、5、8、11日目に評価され、摂取エネルギー量はいずれも条件間で有意差がないことが確認された(例えば11日目は、3食条件が2,391±211kcal/日、1食条件が2,342±233kcal/日、p>0.05)。なお、本研究では、栄養素の摂取割合については管理されていない。

11日間の介入で、体重と脂肪量の低下幅に有意差がみられた。具体的には、体重は3食条件では-0.5±0.3kg、1食条件では-1.4±0.3kg、脂肪量は同順に-0.1±0.2kg、-0.7±0.2kg。それに対して除脂肪体重の変化幅は有意差がなかった。

一方、LDL-Lは同順に2.4±0.2mg/dL、2.8±0.2mg/dLの変化で、1食条件のほうが有意に上昇幅が大きかった。その他の血清脂質値(中性脂肪、総コレステロール、HDL-C)、肝機能マーカー(AST、ALT)、および、安静時エネルギー消費量、呼吸商の変化に有意差は認められなかった。

血糖値に関しては、1日の平均血糖値では有意差はみられなかったが、介入後半に入ると、1日の午後の時間帯を中心に、1食条件の方が有意に低い値で推移する傾向が認められた。

各条件の介入終了後、12日目に行った混合食事試験(mixed meal tests;MMT)では、炭水化物49%、脂質35%、タンパク質16%の食事を摂取し240分後までの各種パレメーターの変化を計測したが、血糖値、インスリン、FGF19、総胆汁酸に有意差の生じたポイントはなかった。

運動パフォーマンスには有意差なし

運動パフォーマンス指標については、ウインゲートテスト、VO2max、大腿四頭筋と膝屈筋の最大等速性強度などの評価したいずれの指標にも有意差がなかった。介入期間中の身体活動量にも有意差がなかった。

介入10日目に行ったエルゴメーターによる脂質酸化テストでは、1食条件では3食条件に比べて脂質の酸化率が高値、炭水化物の酸化率が低値、呼吸商は低値で推移していた。ただし、心拍数、乳酸値、ボルグ係数には有意差がなかった。

1日1食でも体タンパク異化亢進や筋力低下はなく、体重管理に有利

著者らは、1日1食の条件と3食の条件で除脂肪体重の変化が同等であったことから、摂取エネルギー量が同等なら「1日1食でも体タンパクの異化は亢進しない可能性がある」と述べている。

結論として「夕方に1回だけ食事をとるというパターンによって体重が減り、体脂肪の酸化が亢進し、運動中の代謝の柔軟性に適応することが明らかになった。身体能力と混合食テストに対する食後の反応は影響を受けなかった。今後の研究では、代謝の柔軟性が低下している肥満、メタボリックシンドローム、2型糖尿病患者での時間制限食の影響を検討する必要がある」とまとめている。また、本研究では夕方のみ食事可としたが、既報研究では早朝のほうが1日の糖代謝へより有利な影響を及ぼす可能性が示されていることから、「早朝に1回のみ摂取可としたほうが、より大きな効果を得られるかもしれない」と付け加えている。

文献情報

原題のタイトルは、「Differential Effects of One Meal per Day in the Evening on Metabolic Health and Physical Performance in Lean Individuals」。〔Front Physiol. 2022 Jan 11;12:771944〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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