世界アンチ・ドーピング機構(WADA)が2023年の禁止物質・禁止方法リストを発効
世界アンチ・ドーピング機構(World Anti-Doping Agency;WADA)は、2023年禁止物質および禁止方法のリストが1月1日に発効したことを広報し、周知徹底を求めている。2023年のリストは、2022年9月23日にWADA執行委員会によって承認され、同年9月29日に公開されている。
2023年の主な変更点
2023年の主要な変更点は、WADAサイト内に「主な変更点のまとめと解説(Summary of Major Modifications and Explanatory Notes)」として掲載されている。
Summary of Major Modifications and Explanatory Notes
また、主要ポイントは当サイトでも掲載済み。
世界アンチドーピング機構WADAが最新の禁止物質リストを公開
2024年のトラマドールに関する主な変更
昨年9月23日の執行委員会では、2024年1月1日から麻薬性トラマドールを禁止という、アスリートへの影響が大きいと考えられる変更を決定しており、WADAではこの点も改めてアナウンスしている。トラマドールを禁止対象とすることに対する理解が得られ、アスリートやサポートスタッフ、医療関係者の周知に万全を期すため、1年間という予告期間が設けられていた。
WADAによると、トラマドールの乱用は、用量依存的な身体依存、中毒、および一般集団における過剰摂取のリスクが懸念されており、多くの国で規制薬物となっている。また、WADAが資金提供した調査研究でも、トラマドールがスポーツのパフォーマンスを向上させる可能性が確認されているとのことだ。トラマドールはWADAの監視プログラムの対象となっており、そのプログラムを通じて収集されたデータによると、トラマドールは現在、スポーツ領域で重要な薬物として使用されているという。
WADAがドーピング対象と判断するプロセス
WADAは毎年、リストの年次改訂プロセスを主導しており、1月の会議から始まり、10月1日までに発行されるリストで1年の改訂プロセスを終了する。禁止対象とする物質または方法をリストに追加するには、次の三つの基準のうち少なくとも二つを満たしていると判断される必要がある。
- スポーツのパフォーマンスを向上させる、または向上させる可能性がある
- アスリートの健康を害する、または潜在的な健康上のリスクが認められる
- スポーツ精神に反する
通常、リストは発効の3カ月前に公開されるため、アスリートやサポートスタッフ、その他の利害関係者は変更内容を事前に知ることができる。
アスリートは、自分の体内から禁止物質が発見された場合や、禁止されている方法が使用されたことが判明した場合に責任を負う。アスリートのサポートスタッフも、共謀と判断された場合には、ドーピング防止規則違反の責任を負う。
物質または方法のステータスについて疑義がある場合は、各国のアンチ・ドーピング機構に連絡し、助言を求めることが重要。リストにある禁止物質または禁止方法を使用する正当な医学的理由があるアスリートは、国際基準で概説されている基準を満たしているかどうかを判断するために治療使用特例(therapeutic use exemption;TUE)を申請する。
教育ソース
WADAは、コード実行支援プログラム(Code Implementation Support Program;CISP)の一環として、多くの教育リソースを提供しているか、または提供を予定している。これらは、以下の学習プラットフォーム(ADEL)で利用可能。
Anti-Doping Education and Learning Platform(ADEL)
ADELには、2024年から禁止されるトラマドールに関するアスリートおよびサポートスタッフ対象のファクトシートも収載され、さらにウェビナーなどの追加の教育活動を行う予定とのことだ。
関連情報
世界アンチ・ドーピング機構(World Anti-Doping Agency;WADA)