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動物性タンパク質の摂取量は骨密度と正相関する一方で、植物性タンパク質の摂取量は逆相関

タンパク質の摂取量と全身および脊椎の骨密度との関連を検討した結果が報告された。総タンパク質摂取量や動物性タンパク質の摂取量はそれらの骨密度と正の相関が認められ、反対に植物性タンパク質の摂取量は骨密度と逆相関しているという。欧州で行われた4件の高齢者対象研究のデータを統合して解析した結果であり、著者らは「植物性食品ベースの食事が骨密度に及ぼす影響について、さらなる研究が必要とされる」と述べている。

動物性タンパク質の摂取量は骨密度と正相関する一方で、植物性タンパク質の摂取量は逆相関

高齢者対象の4件の研究を統合して横断的かつ縦断的に解析

積極的なタンパク質の摂取は、アナボリック(同化)ホルモンのアップレギュレーションや、腸管からのカルシウム吸収の促進などを介して、骨量維持に働く可能性があるが、疫学研究の結果に一貫性がない。その理由の一つとして、タンパク質源の違い、具体的には動物性タンパク質と植物性タンパク質のいずれを主に摂取するかによる違いが、骨密度との関連に異なる影響を与えている可能性が想定される。本論文の研究では、その点に留意した解析が行われた。

研究参加者の特徴

この研究では、欧州で実施された4件の高齢者対象研究のデータを統合し、横断的かつ縦断的な解析が実施された。

研究の合計参加者数は1,570人で、年齢は中央値71歳(四分位範囲68~75)、女性が56%であり、BMIは26.1(同13.8~28.9)だった。骨粗鬆症と診断されている人が12.3%で、1.8%が過去12カ月以内の大腿骨頚部骨折の既往があり、同期間にその他の骨折の既往のある人が4.3%、転倒経験を有する人が12.3%含まれていた。

栄養素摂取状況は、エネルギー量が1,852kca/日(1,578~2,168)、カルシウムは901mg/日(702~1,153)、ビタミンDは3.2μg/日(2.0~4.8)であり、血清25(OH)Dレベルは61.0nmol/L(45.2~78.0)だった。栄養状態簡易評価票(mini nutritional assessment;NMA)により、1.0%が低栄養状態、14.0%が低栄養リスクのある状態と判定された。

総タンパク摂取量は74.5g/日(64.1~87.0)、体重あたりでは1.03g/kg/日(0.88~1.22)、植物性タンパク質は26.5g/日(21.5~32.2)、動物性タンパク質は45.7g/日(36.1~55.3)だった。

骨密度は全身で1.10g/cm2(1.01~1.20)、脊椎では1.04g/cm2(0.92~1.18)だった。

タンパク質源によって骨密度との関係が、正にも有意、負にも有意

この研究では、未調整のモデル1、年齢、性別、身体活動量、喫煙習慣、アルコール摂取量で調整したモデル2、さらに摂取エネルギー量、カルシウム摂取量、ビタミンD摂取量で調整したモデル3という、3通りのモデルで解析が行われている。また、骨密度は全身および脊椎の骨密度との関連を解析し、以上について性別での解析も加えられている。

本稿では、全身の骨密度との関連について、性別を区別せず、モデル3で解析された結果のみを紹介する。

横断的解析の全体的な結果

総タンパク質摂取量については、摂取量が多いほど骨密度が高いという有意な正の相関が認められた(β=0.0011、p<0.001)。また、動物性タンパク質摂取量についても、摂取量が多いほど骨密度が高いという有意な正の相関が認められた(β=0.0017、p<0.001)。

反対に、植物性タンパク質摂取量については、摂取量が多いほど骨密度が低いという有意な負の相関が認められた(β=-0.0019、p=0.013)。

カルシウムやビタミンDが十分な群でのサブ解析

次に、カルシウムを十分摂取し、ビタミンD欠乏でない群でのサブグループ解析が行われた。カットオフ値は、カルシウム摂取量については欧州の集団基準摂取量(population reference intakes;PRI)である950mg/日、ビタミンDについては血清25(OH)Dレベル50nmol/L以上とした。

その結果、総タンパク質摂取量と全身の骨密度との間に、全体解析の結果よりも強固な関連が認められた(β=0.0016、p=0.001)。動物性タンパク質摂取量と全身の骨密度との関連は、全体解析とほぼ同程度でありやはり有意だった(β=0.0015、p<0.001)。

一方、植物性タンパク質摂取量については、全体解析で認められていた、摂取量が多いほど骨密度が低いという負の相関の有意性が消失した(β=-0.0007、p=0.45)。

縦断的解析の結果

縦断的解析が可能なデータを有していたのは340人だった。介入は、タンパク質摂取量の付加のみ、またはタンパク質摂取量の付加に加えて抵抗運動を加えて行われており、介入期間は12週間、または24週間だった。

タンパク質の摂取量を増やすのみの介入では、骨密度の変化量は対照群と有意差がなかった。それに対して抵抗運動も加えた介入では24週間で全身の骨密度が0.006g/cm2上昇し、この変化量は対照群より有意に大きかった。

以上を基に論文の結論では、「総タンパク質摂取量と動物性タンパク質摂取量が多いことと、骨密度の高さとの有意な関連が明らかになった。対照的に、植物性タンパク質の摂取量は逆の相関が示された。植物性食品ベースの食事が骨の健康に与える影響について、さらなる研究が必要とされる」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Protein intake and bone mineral density: Cross-sectional relationship and longitudinal effects in older adults」。〔J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2022 Nov 8〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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