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アスリートのプロバイオティクス摂取による免疫や炎症マーカーへの影響のメタ解析

高強度トレーニングに伴い筋組織の炎症や免疫能の低下が生じる。それに対して抗炎症または免疫賦活能を有するプロバイオティクスの摂取がどの程度有効なのかを、メタ解析により検討した結果が報告された。9件の研究から、TNF-α、IL-6、IFN-γ、唾液中IgAなど、計10種類のマーカーへの影響が検討されている。台湾の研究者らの報告。

アスリートのプロバイオティクス摂取による免疫や炎症マーカーへの影響のメタ解析

プロバイオティクスはアスリートの助けになるか?

一般に運動は免疫能を高め感染症リスクを下げる。しかし、アスリートでは過度なトレーニングや適切でない栄養素摂取、炎症部位から放出されるサイトカインの影響によると考えられる免疫能低下のため、上気道炎などの感染症のリスクが上昇することが知られている。このような状態に対して、炎症や免疫能を抑制するプロバイオティクスの摂取が提案され、エビデンスも徐々に蓄積されつつある。本論文の著者らは、現在までに報告された研究結果を対象とするシステマティックレビューとメタ解析によって、その有効性を探った。

システマティックレビューとメタアナリシスのガイドライン(PRISMA)に準拠し、2022年5月12日までに、PubMed、Cochrane Library、CEPS、Embaseに収載された論文を対象として検索。適格条件は、アスリートを対象にプロバイオティクスによる介入を行い、運動前後で炎症・免疫にかかわる血液等のマーカーを評価した無作為化並行群間比較試験。介入に用いたプロバイオティクスサプリメントの種類の数は問わなかった。除外基準は、研究対象にアスリートが含まれていない研究、無作為化並行群間比較試験以外の研究デザイン(例えば無作為化クロスオーバー試験)、介入期間が14日未満、疾患有病者を対象とする研究、プロバイオティクスと他の薬剤の組み合わせによる介入を行っている研究、摂取前後の変化が示されていない報告など。

メタ解析の結果、不均一性が高い(I2が50%超)場合は、全体の信頼区間と重複しない信頼区間をもつ研究を除外した感度分析を行った。また、解析対象研究が3件以上のマーカーについては、介入期間の長短(6週未満/以上)、および、介入終了から検体採取の時間(運動直後/翌日以降)で2群に分けてサブグループ解析を行った。

抽出した9件の研究の特徴

一次検索で、PubMedで92報、Cochrane Libraryで37報、Embaseで41報、CEPSで4報の論文がヒット。重複の削除と、タイトル・アブストラクトに基づくスクリーニングで15報に絞り込み全文精査の対象とし、最終的に9件の研究がメタ解析の対象とされた。

それらの9件は2011~21年の間に報告されていた。研究対象者数は13~97人の範囲で合計335人(プロバイオティクス介入が170人、プラセボ介入が165人)。年齢や体重に有意な群間差は報告されていなかった。

介入期間は28~90日で、5件は4週間、1件は8週間、3件は11~12週間。プロバイオティクス介入には、少なくとも1種類のビフィズス菌または乳酸菌のサプリメントが含まれていた。評価されていたマーカーは、TNF-αが7件、IL-6が5件、IL-8が4件、IL-10が5件、および、IFN-γ、唾液中IgA、IL-1β、IL-2、IL-4、CRPがそれぞれ2件。

コクランレビューのバイアスリスクツールに基づく評価で、9件中5件は低リスク、3件は中等度のリスクであり、1件はハイリスクと判定された。

TNF-α、IFN-γ、唾液中IgAに有意な影響が認められる

TNF-α:介入で有意に抑制

では結果について、まず7件の研究で評価されていた炎症性サイトカインのTNF-α(tumor necrosis factor-α.腫瘍壊死因子-α)についてみると、平均差-0.30(95%CI;-0.42~-0.17)、効果量(Z)=4.54(p<0.00001)、不均一性(I2)=81%という結果であり、有意な抑制作用が示された。不均一性(I2)が50%を超過していたため、1件の研究を除外して解析を行ったが、平均差-0.29(95%CI;-0.42~-0.16)、Z=4.47(p<0.00001)、I2=70%と、依然として有意な抑制作用が示された。

介入期間の長短、介入終了から検体採取の期間の長短で層別化したサブグループ解析では、それらの条件にかかわりなく結果は一貫していた。

IL-6およびIL-8:有意な影響なし

次に、評価されていた研究数が6件と、TNF-αに次いで多かった炎症性サイトカインのIL-6(interleukin-6.インターロイキン-6)についてみると、平均差0.19(95%CI;-0.25~0.63)、Z=0.86(p=0.39)、I2=0%であり、介入による有意な影響は示されなかった。続いて4件の報告のあった炎症や免疫にかかわるサイトカインであるIL-8についても、平均差-0.57(95%CI;-1.33~0.19)、Z=1.48(p=0.14)、I2=76%であり、介入による有意な影響は示されなかった。

IL-6とIL-8についてはメタ解析対象研究数が3件以上であるため、TNF-αと同様に、介入期間の長短、および介入終了から検体採取までの期間の長短で層別化した解析が実施された。しかし、有意な影響の見られるサブグループは示されなかった。

IL-10:介入で有意に低下

5件の研究で検討されていた抗炎症性サイトカインであるIL-10は、平均差-0.13(95%CI;-0.19~-0.06)、Z=3.79(p<0.0001)、I2=20%と、有意な抑制作用が示された。介入期間の長短、介入終了から検体採取までの期間の長短で層別化したサブグループ解析からも、それらの条件にかかわりなく一貫した結果が示された。

IFN-γおよび唾液中IgA:介入で有意に上昇

免疫能にかかわるIFN-γ(interferon-γ.インターフェロン-γ)は、平均差14.33(95%CI;13.76~14.89)、Z=49.75(p<0.00001)、I2=97%と、介入による有意な上昇が示された。同じく免疫能にかかわるIgA(immunoglobulin A.免疫グロブリンA)の唾液中の値も、平均差3.57(95%CI;0.66~6.48)、Z=2.41(p<0.02)、I2=0%と、やはり有意な上昇が認められた。

なお、解析対象研究数が2件のため、サブグループ解析などは行われていない。

その他、IL-1β、IL-2、IL-4、CRPに関しては、介入による有意な影響は確認されなかった。

異質性とバイアスリスクのため解釈は限定的?

著者らは本研究により、プロバイオティクス介入によってIFN-γと唾液中IgAの有意な上昇、およびIL-10の有意な抑制が確認されたことに注目。前二者の上昇は粘膜免疫を含め免疫能の活性化を示しており、アスリートを感染症から守るように働く可能性があるとしている。また後者のIL-10の抑制に関しては、IL-10が抗炎症性サイトカインであって、炎症が生じた組織から放出されることから、プロバイオティクスが炎症を抑制した結果としてIL-10が低下したのではないかと考察している。同様に、TNF-αの有意な低下も、プロバイオティクスの抗炎症作用によってもたらされたものと考えられると述べている。

一方、メタ解析の対象とした研究は全体的に異質性が高く、バイアスリスクも認められたことから、結果の信頼性が制限されることを限界点として挙げている。

論文の結論には、「メタ解析の結果は、プロバイオティクスが抗炎症作用をもたらすことを裏付けている。今後の研究では、より大きなサンプルで、より多くの競技アスリート、より多くの種類のプロバイオティクスの効果を比較することが望まれる」と記されている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of Probiotic Supplementation on Immune and Inflammatory Markers in Athletes: A Meta-Analysis of Randomized Clinical Trials」。〔Medicina (Kaunas). 2022 Aug 31;58(9):1188〕
原文はこちら(MDPI)

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