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「失われた30年」で日本の食事の質が低下か? 世界185カ国、過去30年の食事の質を調査

1990年から2018年までの世界185カ国の食事の質の変化を検討した研究結果が報告された。この30年近くで世界の人々の食事の質はほとんど向上していないという。評価スコアの変化を国別に比較した場合、日本は-2.7ポイントであり、これは人口規模の大きい国の中では、タンザニア、ナイジェリアに続くワースト3位にあたる。

「失われた30年」で日本の食事の質が低下か? 世界185カ国、過去30年の食事の質を調査

AHEIで過去30年間の各国の食事の質を評価

この研究では、世界食事データベースプロジェクト(Global Dietary Database project)の2018年のデータを用いて、1990年から2018年までの185カ国の成人と小児の食事パターンを、年齢層別、性別、教育歴別、都市別に定量化し評価された。評価尺度は、検証済みスコアである代替健康食指数(alternate healthy eating index;AHEI)を用いた。また、高血圧予防のためのDASH食(dietary approaches to stop hypertension)のスコア、および地中海食スコアを二次的に利用した。なお、これらのスコアを得るための各国の基礎データは、食物摂取頻度調査票(food frequency questionnaire;FFQ)や24時間思い出し法などにより把握されていた。

早速、結果をみていこう。

2018年時点の世界の国々の食事

まずは、2018年のデータを横断的にみていく。

2018年のAHEIスコアの世界平均は40.3(95%UI;39.4~41.3)で、地域別ではラテンアメリカとカリブ海諸国が30.3と低く、南アジアが45.7と高かった。

スコアの構成要素の中で、より健康的と評価された食品で多かったのは、マメ科植物/ナッツ、全粒穀物、魚介類のω3脂肪酸などであり、反対に不健康と評価された食品で目立ったものは、加糖飲料、赤身/加工肉だった。ただし、これらの傾向は地域によって大きく異なり、南アジアでは健康的な食品の多くを全粒穀物で占めていたのに対して、ラテンアメリカとカリブ海諸国はマメ科植物/ナッツが多くを占めていた。

AHEIスコアの高い国、低い国

AHEIスコアが50以上の国は、10カ国のみだった。これらの国の人口を合計しても、世界人口の1%に満たない。

人口の多い上位25カ国の中で、AHEIスコアが高い国は、ベトナム、イラン、インドネシア、インド(54.5~48.2)であり、反対に低い国は、ブラジル、メキシコ、米国、エジプト(27.1~33.5)などだった。

サブグループでの比較

世界的にみて、2018年の平均AHEIスコアは、子ども(39.2〈38.2~40.3〉)と成人(40.8〈39.8~42.0〉)で有意差はなかった。ただし、中央/東ヨーロッパ、中央アジア、中東および北アフリカ地域では、成人の平均AHEIスコアのほうが子どもよりもかなり高かった。

性別での比較では男性よりも女性の方が一般的に高く、教育歴での比較では中東、北アフリカ、サハラ以南のアフリカを除いて、世界的に大半の地域で、教育歴の長いグループのほうが平均HEIスコアが高かった

30年弱で世界の人々の食事の質はわずかに好転

では次に、1990年から2018年までの変化をみてみよう。

1990年から2018年の30年弱の間に、全世界の平均AHEIスコアは+1.5(1.0~2.0)とわずかではあるが有意に上昇していた。地域別では、東南アジアや東アジア(+2.7)、中東および北アフリカ(+2.2)、ラテンアメリカとカリブ海諸国(+1.3)は上昇し、南アジアでは大きな変化は見られず(±0)、サハラ以南のアフリカでは低下傾向が見られた(-1.1)。

AHEIスコア上昇に寄与した食品は、非でんぷん質の野菜、豆類/ナッツ、果物などであり、これらは時間経過とともに(より現在に近づくにつれて)スコアが上昇していた。反対にスコアを低下するように働いていた食品として、赤身/加工肉、加糖飲料、ナトリウムの摂取量の増加が挙げられた。全粒穀物、多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acid;PUFA)、ω3脂肪酸の摂取量は、大きな変化がみられなかった。

AHEIスコアが上昇した国:米国は向上したものの依然低位

人口の多い上位25カ国の中で、1990年から2018年にかけてのAHEIスコアの上昇幅が大きかった国は、イラン(+12.0)、米国(+4.6)、ベトナム(+4.5)、中国(+4.3)だった。

これらの国のうち、ベトナム、イランは前記のとおり、2018年時点のAHEIスコア上位にもランク入りしており、両国の人々の食事の質が高いレベルでより向上したことがわかる。一方、米国は2018年時点ではAHEIスコアの下位にランク入りしており、人々の食事の質が向上はしたものの依然低い状態にあることがわかる。

AHEIスコアが低下した国:日本はワースト3位

人口の多い上位25カ国の中で、1990年から2018年にかけてのAHEIスコアの下げ幅が大きかった国は、タンザニア(-3.7)、ナイジェリア(-3.0)に続き、日本(-2.7)がワースト3位にランク入りした。続いて4位はフィリピン(-1.8)だった。

日本のAHEIスコアが低下した理由については本論文では述べられておらず、考察の手がかりはなく推測するしかないが、この時代に日本で生きてきた人の多くは、バブル崩壊後の「失われた30年」で、日本人の食事の質も低下してしまったと考えるのではないだろうか。

DSHスコア、地中海食スコアでの検討

2018年の世界平均DASHスコアは22.9(22.6~23.2)、地中海食スコアは4.1(3.9~4.2)だった。これらのスコアは南アジアで一貫して高く、ラテンアメリカとカリブ海諸国で低いという、AHEIスコアと同様の傾向を示した。

論文の結論は、「過去30年間で地域によって差異はあるが、食事の質はわずかな改善しかみられないことがわかった。これらの結果は、年齢、性別、教育、都市性などによって異なり、食事の質にかなりのばらつきがあることを浮き彫りにしている。栄養の安全保障と公平性を改善するための政策の必要性を示すものと言える」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Global dietary quality in 185 countries from 1990 to 2018 show wide differences by nation, age, education, and urbanicity」。〔Nature food. 2022 September 19;3:694–702〕
原文はこちら(Springer Nature)

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