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腱のトラブルを栄養で予防・改善できる? システマティックレビューの結果から言えること

腱のトラブル(腱障害)に対する栄養介入の効果をシステマティックレビューで検討した結果が報告された。コラーゲン由来ペプチドなどで有望な結果を報告した研究が見つかったものの、全体的に質の高い研究報告が少ないという。

腱のトラブルを栄養で予防・改善できる? システマティックレビューの結果から言えること

腱障害に対する栄養戦略には、どのくらいのエビデンスがあるのか?

腱障害はアスリートだけでなく一般の人の間での罹患率も高い。腱障害は、痛みや不快感、可動域の制限などを引き起こし、スポーツパフォーマンスやQOLの低下につながる。確立した腱障害の予防戦略はこれまで示されていない。また治療に関しては、数々の選択肢が示されている。数々の選択肢が示されているということは、優れた治療法が存在しないことを意味している。腱障害が発生すると一般にその治療プロセスには長い時間を要することが多い。

栄養も、腱障害の予防や治療戦略の一つのオプションとして示されている。ただ、腱障害の予防・治療における栄養戦略の有用性を体系的に検討した報告は少ないことから、本論文の著者はシステマティックレビューにより、エビデンスの抽出を試みた。

文献検索の手法について

文献検索は、2020年6月に、PubMed、EMBASE、Web of Science、SPORT Discusを用いて行われた。適格基準は、18歳以上の成人を対象に栄養介入を行い、腱障害関連アウトカムへの影響を検討した研究であり、英語、オランダ語、ドイツ語のいずれかで全文が公開されている論文。無作為化/非無作為化試験、症例対照研究、横断研究、観察研究などを適格として、レビュー、レター、エディトリアルなどは除外した。2名の研究者が独立してスクリーニングと全文精査を行い、採否の意見の不一致は議論によって解決した。

一次検索で8,613報がヒットし、これにハンドサーチで5報を追加後、重複を削除し残った6,538報を、論文のタイトルと要約に基づきスクリーニング。89報が全文精査され、最終的に19件の研究の報告が適格と判断された。

抽出された栄養介入研究の特徴

栄養介入の手法は、習慣的な食事摂取との関連を調査したもの4件と、サプリメントなどの摂取を追加したもの14件に大別され、他の1件は習慣的な食事摂取とサプリによる介入効果を同時に検討していた。

習慣的な食事摂取との関連を検討した研究は、前向きコホート研究、横断研究、症例対照研究などのデザインで行われており、研究参加者数は50~8万106人の範囲だった。サプリ介入の効果を検討した研究の参加者数は、1~100人だった。研究参加者の年齢は広範囲にわたっていたが、主として中年(40~60歳)またはそれ以上の高齢者が多く、また、習慣的に運動をしていない成人での研究が多かった。アスリートまたは身体活動量の多い人を対象とした3件の研究の参加者は他の研究よりも若年だった。多くの研究は男性と女性を含んでいたが、一部は男性のみで行われていた。

評価した部位は、回旋筋腱板が9件、アキレス腱7件、膝蓋腱4件などだった。臨床転帰(介入効果)は視覚的アナログスケール(VAS)などによる痛みの評価が15件で行われていた。

サプリ介入の介入期間は1~18カ月の範囲だった。また、栄養介入単独ではなく、トレーニング、エクササイズ、対外衝撃波治療、理学療法、鍼治療などと並行して行われた研究が多かった。

エビデンスレベルの高い研究は少ないが、一部のサプリが有望か

抽出された研究報告は、研究デザイン、並行して行われた介入、評価指標、バイアスリスクなどの差異が大きいことからメタ解析を行えず、定性的な分析が行われた。このうち、習慣的な食事の影響については、バイアスリスクが高いために、確かな結論を導き出すことはできないと判断された。

アルコール

アルコール摂取の影響は、4件の研究で行われていた。

アルコール摂取と慢性回旋筋腱板炎との間に関連性はみられなかった。適度なアルコール摂取(週に男性は7~13杯、女性は4~6杯)は、アキレス腱障害のわずかなリスク増加と関連していたが、膝蓋腱障害とは関連がなかった。過剰なアルコール摂取(前記の数値以上)は、腱板断裂の発生と重症度の重大な危険因子だった。対照的に、回旋腱板修復後のアルコール摂取と肩の痛みの軽減、機能改善との間に正の関連が報告されていた。

全体的に一貫性を欠いていたが、アルコールが毒性作用によってコラーゲン合成を阻害する可能性が考えられた。

コラーゲン

腱は主にコラーゲンで構成されており、細胞外マトリックスを維持するためにコラーゲンが必要であることを背景として、ゼラチンや加水分解コラーゲンを含むコラーゲン由来ペプチドでの介入が多く行われていた。これらのサプリメントの多くは、腱障害の臨床的または構造的転帰を改善する可能性が報告されていた。ただし、コラーゲンの最適な摂取量、摂取タイミング、期間、および種類についての結論は導き出すことができなかった。さらに、研究の多くは他の介入と並行して行うデザインだったため、コラーゲン摂取単独のメリットは依然として不明。

その他のサプリ介入

アミノ酸のロイシンは、コラーゲン合成刺激作用が報告されている。健康な若い男性を対象とした1件の研究では、筋力トレーニングに加えて、高ロイシン(トレーニング日に19.5gのアミノ酸、うちロイシンが2.77g)によって、腱肥大が増強されると報告していた。この小規模な単一の研究から得られた知見は決定的なものではないが、臨床的に重要な意味を持つ可能性がある。

その他、メチルスルホニルメタン、アルギニン、ブロメライン、クルクミン、およびボスウェリアによる臨床的改善が報告されていた。

文献情報

原題のタイトルは、「The impact of nutrition on tendon health and tendinopathy: a systematic review」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2022 Aug 3;19(1):474-504〕
原文はこちら(Informa UK)

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