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筋トレ+たんぱく質摂取による筋力向上効果は、1.5g/kg/日が上限 筋トレなしでは効果なし

筋力トレーニングを行ないながらたんぱく質の摂取量を増やすと筋力が向上し、その効果は1.5g/kg/日で頭打ちになるとするデータが報告された。また、たんぱく質摂取量を増やしても筋トレを行わない場合は、筋力に対する有意な効果を得られないことも示された。早稲田大学スポーツ科学学術院の宮地元彦氏らが行った、システマティックレビューとメタ解析の結果であり、「Sports Medicine-Open」に論文が掲載された。

筋トレ+たんぱく質摂取による筋力向上効果は、1.5g/kg/日が上限 筋トレなしでは効果なし

筋トレなしでもたんぱく質摂取で筋力アップ可能? 摂取量との用量反応関係は?

たんぱく質の摂取量と筋力との関係については、これまでに横断的な解析結果が複数報告されており、摂取量の多さが筋力の強さと関連のあることが示されている。ただし、たんぱく質摂取量と筋力の増加幅との用量反応関連は明らかでなく、とくに筋力トレーニングを並行して行うか否かを考慮した研究は少ない。宮地氏らはこれらの点を、システマティックレビューとメタ解析によって検討した。

ステマティックレビューとメタアナリシスのガイドライン(PRISMA)に準拠しPubMedと医中誌を用いて、2022年3月23日までに英語または日本語で公開された無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)の報告を検索した。PubMedで1,449件、医中誌で585件がヒットし、そのほかにハンドサーチで10件を加えて計2,044件を、2人の研究者が独立して、タイトルとアブストラクトに基づきスクリーニング。386件に絞り込んだ後、全文精査を行い、最終的に82件を採択、必要なデータを抽出した。このうち13件は総たんぱく質摂取量の詳細が不明であるため、用量反応関係については69件のデータを対象とするスプライン解析で検討した。

抽出された研究の特徴

82件の研究のうち59件は筋トレを並行した介入(RT)効果を検討し、24件は総たんぱく質摂取量増加のみの介入(non-RT)効果を検討していた。総参加者数は3,940人で、平均年齢は55.6歳(RT介入は45.5歳、non-RT介入は72.1歳)、男性53%、BMI26.1(RT26.6、non-RT25.4)、摂取エネルギー量2,035kcal/日(2,141kcal/日、1,752kcal/日)。

たんぱく質の総摂取量は、介入群が平均1.49g/kg/日(範囲0.79~3.80g/kg/日)、対照群は平均1.09g/kg/日(0.69~2.00g/kg/日)であり、群間差の平均は0.38g/kg/日(0.04~2.06g/kg/日)だった。たんぱく質の追加摂取の方法は、78件では通常の食事に高たんぱく食品・飲料を追加してRCTが実施され、他の4件は食事内容を変更したRCTを行っていた。

介入期間は平均22.0週(3週~2年)だった。なお、4件(4.7%)の報告はバイアスリスクが高いと判断され、解析対象から除外された。

筋トレなしでは、筋力の変化幅が対照群と有意差なし

メタ解析の結果、介入群は対照群に比べ、筋力の増加幅が有意に大きいことが明らかになった(平均差〈MD〉1.40%〈95%CI;0.55~2.24〉)。ただし、筋トレ(RT)の有無で層別化すると、RT介入試験ではMD2.01%(1.09~2.93)であり、より群間差が大きくなった一方、non-RT介入試験ではMD0.13%(-1.53~1.79)であり、群間差が非有意だった。つまり、筋トレを並行せずに総たんぱく質摂取量を増やしたとしても、筋力は向上していなかった。

年齢や性別、たんぱく質摂取量、介入期間でのサブグループ解析

年齢を60歳未満と以上とに分けると、全体解析では、60歳未満は介入効果が有意であり(MD2.25%〈0.95~3.54〉)、60歳以上は非有意だった(MD0.64%〈-0.47~1.75〉)。ただし、RT介入を行ったRCTのみを対象とする解析では、60歳以上も有意な筋力向上が認められた(MD1.38%〈0.36~2.36〉)。

性別で分けると、全体解析では、男性は介入効果が有意であり(MD1.64%〈0.37~2.91〉)、女性は非有意だった(MD1.38%〈-0.28~3.04〉)。ただし、RT介入を行ったRCTのみを対象とする解析では、女性も有意な筋力向上が認められた(MD1.54%〈0.46~2.62〉)。

ベースラインの総たんぱく質摂取量1g/kg/日未満と以上とに二分すると、RT介入を行ったRCTでは総たんぱく質摂取量の多寡にかかわらず有意な筋力向上が認められ、non-RT介入のRCTでは総たんぱく質摂取量の多寡にかかわらず筋力向上が非有意だった。また、追加たんぱく質摂取量を0.5g/kg/日未満と以上とで二分した解析の結果も同様に、RT介入を行ったRCTでは追加たんぱく質摂取量の多寡にかかわらず有意な筋力向上が認められ、non-RT介入のRCTでは追加たんぱく質摂取量の多寡にかかわらず筋力向上が非有意だった。

介入期間3カ月未満と以上とに二分すると、全体解析では、3カ月未満のRCTで筋力向上が有意であり(MD1.90%〈0.91~2.91〉)、3カ月以上のRCTでは非有意だった(MD-0.05%〈-1.52~1.43〉)。RT介入を行ったRCTのみを対象とする解析でも結果は同様で、3カ月未満のRCTでのみ筋力向上が有意だった(MD2.27%〈1.23~3.30〉)。Non-RT介入のRCTでは介入期間にかかわらず非有意だった。

なお、研究間の異質性を表すI2統計量は、全体解析では32%、RT介入では16%、non-RT介入では49%であり、全体解析とnon-RT介入の解析は統計的に有意な不均一性が認められた。

総たんぱく質摂取量1.5g/kg/日で筋力向上は頭打ち

スプラインモデルによる用量反応解析からは、RT介入では総たんぱく質摂取量が多いほど筋力がより大きく向上するという関連が示された。具体的には、総たんぱく質摂取量が0.1g/kg/日増加するごとに、筋力が0.72%(95%CI;0.40~1.04)増加していた。ただし、この関係は総たんぱく質摂取量が約1.5g/kg/日でピークに達し、それ以上の上乗せ効果は認められなかった。

一方、non-RT介入では、総たんぱく質摂取量が1.3g/kg/日まで、ごくわずか筋力が向上する傾向がみられた。

筋力向上には、筋トレを並行し1.5g/kg/日までのたんぱく質摂取が有効な可能性

以上一連の結果をもとに著者らは、本研究から明らかになったポイントを以下の3点にまとめている。

  • (1)筋力トレーニングを並行して行いたんぱく質摂取量を増やすと、年齢、性別、ベースラインのたんぱく質摂取量、追加のたんぱく質摂取量にかかわりなく、筋力が向上する。
  • (2)筋力トレーニングを並行して行いたんぱく質摂取量を増やすと、総たんぱく質摂取量が最大1.5g/kg/日までは0.1g/kg/日あたり0.72%の割合で筋力が向上するが、たんぱく質摂取量がそれ以上増えても、さらなる筋力向上は生じない。
  • (3)筋力トレーニングを並行して行わない場合、たんぱく質摂取量を増やしても筋力は向上しない。

なお、本結果の解釈に際しての注意点として、「データの不均一性が高いため、条件の違いを考慮する必要がある」と付記されている。

文献情報

原題のタイトルは、「Synergistic Effect of Increased Total Protein Intake and Strength Training on Muscle Strength: A Dose-Response Meta-analysis of Randomized Controlled Trials」。〔Sports Med Open. 2022 Sep 4;8(1):110〕
原文はこちら(Springer Nature)

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