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鍛錬している相撲選手でも体重相当の骨塩量や骨密度の獲得は容易でない

50人以上の大学相撲選手の身体の部位別骨塩量・骨密度を、詳細に検討したデータが報告された。日々鍛錬して大きな体格を有する大学相撲選手でさえも、体重に相応する骨塩量や骨密度を得ることは簡単ではないことが明らかになったという。桜美林大学健康福祉学群の緑川泰史氏、早稲田大学スポーツ科学学術院の鳥居俊氏、中京大学教養教育研究院の太田めぐみ氏、駿河台大学スポーツ科学部の坂本静男氏らのグループの研究によるもので、「Scientific Reports」に論文が掲載されるとともに、早稲田大学のサイトにプレスリリースが掲載された。

鍛錬している相撲選手でも体重相当の骨塩量や骨密度の獲得は容易でない

これまでの研究でわかっていたこと(科学史的・歴史的な背景など)

相撲の勝敗は、体重の重さですべてか決まるわけではないものの、身体が大きいことが勝ち星をあげる一つの要因にはなっている。そのため、相撲では体重を増やすこと、つまり、身体を構成する器官・組織の増量が必要になる。

同研究グループではこれまでにも、平均体重109.1kgの大学相撲選手は、運動トレーニングの習慣がない男子大学生(平均体重62.0kg)と比較して、脂肪組織(25.7kg)や骨格筋量(12.4kg)だけでなく、スポーツ科学領域ではあまり着目されてこなかった肝臓(1.00kg)や腎臓(0.16kg)も重いことを報告している(DOI: 10.1249/mss.0b013e31802f58f6)。しかし、身体を構成する要素で比較的大きな割合を占める骨(本研究においては骨塩量※1や骨密度※2)に関する相撲選手の報告は限られていた。

※1 骨塩量:骨に含まれるカルシウムやリンといったミネラルの量。
※2 骨密度:単位面積あたりの骨塩量。

今回の研究で新たに明らかになったこと

そこで研究グループでは、二重エネルギーX線吸収(dual-energy X-ray absorptiometry;DXA)法※3を用いて、大学相撲選手の骨の特徴を探った。

※3 二重エネルギーX線吸収(dual-energy X-ray absorptiometry;DXA)法:全身および部位別の骨塩量や骨密度を正確に測定できる国際的にも認められている方法。

その結果、重量級グループ(115kg以上)は中量級グループ(85kg以上115kg未満)と比較して、全身および腕部・脚部の骨塩量が高いことがわかった。ただし、体重あたりに換算したそれぞれの部位の骨塩量は、重量級グループで低値となった。

一方、骨密度については、重量級グループで全身と脚部の値が高かったものの、腕部は中量級グループと差がみられなかった(表1)。

表1 大学相撲選手の骨塩量と骨密度
中量級
n=23
重量級
n=31
体重(kg)98.1 ± 7.4130.4 ± 10.2 **
骨塩量(kg)
全身3.17 ± 0.293.49 ± 0.32 **
腕部0.54 ± 0.060.59 ± 0.06 **
脚部1.16 ± 0.111.28 ± 0.13 **
骨塩量/体重(%)
全身3.25 ± 0.382.69 ± 0.31**
腕部0.55 ± 0.070.46 ± 0.06 **
脚部1.19 ± 0.140.98 ± 0.12 **
骨密度(g/cm2
全身1.28 ± 0.081.33 ± 0.09 *
腕部0.99 ± 0.071.03 ± 0.07
脚部1.34 ± 0.091.41 ± 0.11 *
*は中量級と重量級のグループ間に統計学的に差があることを示す。
**は*と比較して、より差がクリアであることを示す。
(出典:早稲田大学)

また、両グループをあわせた全体で解析を行ったところ、体重と全身・脚部の骨密度の間に弱いながら有意な正の相関関係が認められた。

先行研究(DOI: 10.1038/sj.ejcn.1601206)で検討された平均体重65.6kgの20代日本人男性と比較して、本研究の大学相撲選手の平均体重は中量級グループで約50%、重量級グループで約100%重いものの、全身の平均骨密度は両グループともに15%前後高い値にとどまっていた。このことから、日々鍛錬している相撲選手のような大型スポーツ選手でさえも、体重に相応する骨密度を有することは簡単ではないことが推測される。また、腕部よりも荷重負荷がかかりやすい、脚部の骨密度が高まりやすいと考えられた。

研究の波及効果や社会的影響、今後の課題

本研究は、一般人と大きく体格が異なる相撲選手の荷重部位と非荷重部位を含めた骨塩量と骨密度について、50名を超える対象者で示した資料的価値が高い報告。本研究の結果から、体重が増えて体格が大きくなっても、骨は比例して多くなるわけではないことがわかる。柔道選手を対象とした先行研究(関東整災誌24, 440-442,1993)でも、体重が100kgを超えると全身骨塩量の増加が鈍るというデータが示されている。この既報研究および本研究は、ヒトという動物の骨塩量や骨密度の上限値を探る基礎データになる可能性がある。

なお、アメリカンフットボール選手を対象とした比較的最近の研究(DOI: 10.1519/JSC.0000000000001888)では、本研究の重量級相撲選手と体重がほぼ同様の130kg台にもかかわらず、全身の平均骨密度が1.50g/cm2を超えることが報告されており、研究グループでは「測定するDXA機器の種類によって値に差が生じる場合もあるが、その他、どのような要因がデータに影響しているのか検討が必要」と述べている。

プレスリリース

「相撲選手」の骨塩量・骨密度データ 国際的にも限られている「相撲選手」の骨塩量・骨密度データを提示(早稲田大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Characteristics of total body and appendicular bone mineral content and density in Japanese collegiate Sumo wrestlers」。〔Sci Rep. 2022 Jul 12;12(1):11796〕
原文はこちら(Springer Nature)

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